第10話 一つ目の大事な事…社会信用ポイント


 少し今日の「登山」と先ほどの講義学習で疲れたかもしれないと、再びベッドでただゴロゴロしていると、ふと、「ステータスオープン」と再び画面のメニューを開いて総ポイントがどれだけ溜まったかを見た。


「貴方の社会信用ポイントは682点です」、今のレベル11の学習を終えればさらに100ポイント加算される。目標に近づいている。


 この世で大事な物は3つある。一つは社会信用ポイント。これがなければ事実上何もできない。5歳までは誰でも仮ポイントとして100ポイント持っているとみなされ、お金があればだが、鉄道や乗り合いバスも乗れるし、お菓子など少額な買い物の売買契約はできる。


 ノーストウキョウなどのように原則的にはホワイト以上のランクを持っていないとセキュリティのため入れない土地以外には、隣のシンジュクゲットーやゴタンダゲットーなどへ自由に移動できる。


 とはいっても、この地域、「アジアブロック群島C4」、昔は「ホンシュウ」や…あと同じ意味かは分からないが、「ニホン」とも聞いたりするが、文字通り島々によってできているので、船かトンネルを通らないと大陸には行けない。大陸に行くのも、本人のセキュリティランクに引っ掛からないところなら自由で、船にしろジェットにしろ高速鉄道にしろ乗合バスにしろ、交通機関は無料なので、好きな所に行ける。ただ、成人前に他の地域に行くのは無謀だと思うが。

 


 その後、6歳になったら個人端末でできる事以外は、どれくらいの社会信用ポイントを持っているかで、様々な契約など含めて行動の制限の度合いが決まる。


 俺の場合は孤児院での素行評価や、義務教育の学習で溜まったポイントで、孤児院を出る時には200ポイント以上溜まっていたので問題なく孤児院から出れた。


 義務教育は俺の場合はメアリー、バディAIが教師となって講義を受け、それぞれの学習到達レベルをクリアしていけばポイントが溜まっていく。実際子供の内はそれくらいしかポイントを貯める方法はない。何か「通報」できるネタでもあれば別だが。


 現在は俺のセキュリティランクは、下から2番目のレッドランクだが、3000ポイント貯めればオレンジランクに上がる事ができる。




 そういう意味で、ポイントを確保するのは死活問題だ。ポイントを稼ぐ方法は様々で、さっきのように義務教育での成績や学歴、ボランティア活動、寄付、統一機構への任意の拠出金、表彰に値する事、何かしらの賞をとったり資格をとったり契約を遵守したという実績、例えば毎月の保険料の支払いの実績など、色々ある。


 逆にマイナスになるのは、犯罪は当然として、非行行為、不道徳な行為、反社会的行為、そして一番多い理由は様々な「債務不履行」などで、もしもそういう事をした人間がいたら、それらの行為の「通報」をすればさっき触れたようにかなりのポイントが稼げる。多分、今日、強制執行官に確保された男は、誰かに「通報」されたのだろう。どうやってバレたのか分からないが。




 万が一ポイントが0を下回りマイナス3000ポイント以下になると、ブラックランクとして、屋台で串焼きを買うのすらも含め、あらゆる契約行為ができない上に、1人1票の対象外で、高速鉄道どころか乗り合いバスに乗る事すらできない。つまり、「人権」がない。


 あらゆる契約ができないため、当然総合保障保険のガードマンには守ってもらえないし、殺されたとして殺人罪の対象外の「物」と同じ立場だ。


 「物」なので「器物損壊罪」で、もしも強制執行官がその場に居合わせればそう相手は罰されるが、多くは居合わせない事が多い。ただ、一応は守ってもらえるだけ、「無契約者」よりはマシかもしれない。


 とはいえ、ブラックランクは、どうも少数はいるらしい「無契約者」達とともに、主にかつての地下街や地下鉄、戦後廃棄された地下シェルター、もしくはゲットーを脱出して僻地などに集落を作って、自給自足や闇取引をしながら生活している者もいるらしい。


そこまで墜ちた場合を考えただけでも恐ろしい。


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