主要登場人物+追加登場人物紹介(第三章終幕時点)その①

○『竜斬り』ビトー

 19歳。くすんだ灰色の髪、瞳。

 『竜斬剣』の武士もののふ。その強さは各国の切り札ともいえる称号騎士をも凌駕する。しかしあくまでもリコの為に強くなっただけで、戦う事はあまり好きではない(稽古や試合などの剣術は嫌いではない)。

 幼い頃、疫病で両親を喪い、自分も死にかけた。その頃の体験が、ビトーの心の奥に灰色の感情として燻り続けている。そこから溢れ出す殺意は、大司教サリオルさえ恐怖に陥れた。

 現在の目的は、『竜の喚巫女の魔法』をリコにかけた白髪の老魔人を見つけ出す事と、その魔法に使用されたアイテム『喚巫女の鈴』を破壊する事。


○『竜の喚巫女』リコ・スグリィ

 22歳。長い黒髪、深く黒い瞳。

 幼い頃、病で死にかけたビトーを救った恩人。

 ビトー達がロトリロ王国に行っている間、ケネットの山小屋で機織りし、自分の竜避けの服と、ビトーの服を作っていた。

 ビトーの帰りを心待ちにしている。



◆『刀の里』…ムーンパロ国の一番高い山にある、獣人の里。


◯『ピューマの獣人の武士』フェイラローザ

 18歳。ショートカットの黒髪、アイスブルーの瞳。褐色の肌。黒い猫耳と尾。

 通称フェイ。獣人の武士で、ビトーと共に竜斬剣を学んだ妹弟子にあたる。

 ビトーについて行き、ロトリロでの戦いに加わり活躍するが、『魔力刃』を使えない為、対魔人戦で苦戦を強いられ、自分とビトーとの力の差を思い知った。


◯『ユキヒョウの獣人の武士』フキ

 38歳。瞳は小さめの黒。いつも頭に巻いている白いターバンの下には、丸みのある白い耳が隠れている。白に黒ぶちの尾もあるが普段は出していない。

 獣人の武士で、幼いビトーを竜から助けた恩人。

 ケネットの護衛として、山小屋に常駐している。



◆ノルクベスト王国


◯『金眼』マルティン・デルゴー

 27歳。金色の瞳と、乾いた銀髪、浅黒い肌の痩身の男。

 人間と獣人双方の血を引く蛇麟族の生き残りで、人間にはない様々な能力を持っている。

 得意技の『スピンナイフ』は風の法術を手の平に集めて掌底を放つ技で魔人の『魔装』にも有効であった為、切り札として活躍したが、サリオルの強すぎる魔装は破れなかった。

 『乱天饗孵らんてんきょうふ』で幻覚を見た際、亡き母を侮辱されたと感じ、魔人への怒りを強くした。


◯『元・竜の喚巫女』ケネット

 72歳。長い白髪と茶色い瞳。山奥の小屋に住んでいる、機織りの名人。

 若い頃、考古学者で魔人のヴォルカと恋に落ちる。瀕死の重傷を負った時、ヴォルカが『竜の喚巫女の魔法』をかけ、一命を取り留める。

 その後ヴォルカとの子を妊娠するが、胎児が成長すると胎内で接触する度に竜が召喚されるようになり、妻と子を守るためにヴォルカが『喚巫女の鈴』を破壊し命を捨て、ケネットは普通の人間に戻る。だが、残念ながら子どもは死産となる。

 ヴォルカは生まれる前の子に『リコ』と名付けていたが、現代のリコとの関係は不明。


◯『旅の音楽家』ト・ケーン

 30前後くらい。長い金髪と緑色の瞳。

 ビトーの戦い方を見て惚れ込み、音楽のインスピレーションを得る為に旅に同行する。

 音楽仲間達との情報のネットワークがあり、各国の出来事をある程度把握している。

 王都リューベには同行せず、ペロザ砦で作曲しながら待っていた。



◆ロトリロ王国


◯『凛雨の騎士』フラン・ロッティナ

 24歳。肩を少し越えた辺りで切り揃えられたストレートの金髪、濃い青の瞳。

 ロトリロ王国の『称号騎士』の一人。細身剣エル・フルーレと、水の法術を駆使して戦う。内乱鎮圧後、女王直下の『薔薇の騎士団カヴァリエリ・デラ・ローザ』の団長に任命される。

 叔父の『蓮湖の騎士ブルーノ・コンティス』の仇である魔人オルジャソルを討ち取った際、魔人の魔装を斬る為に、法術と剣を合わせた技を編み出した。

 ビトーに対する好意を自覚したが、リコと争うつもりはなく、二人の幸せを願っている。


◯『兎の獣人』ルカ・ジャントーニ 

 16歳。クセのある茶色の髪と、青みがかかった黒い瞳。

 幼い頃からフランの実家で育てられた兎の獣人。両親は亡くしているが、兄は生死不明。長い耳は、普段は三角帽子の中に隠している。

 ロトリロの内乱により捕虜となり、両足に二度と走れない程の重傷を負ったが、女王アレッサンドラの法術とリリアンの助力により完治。

 内乱鎮圧後、『薔薇の騎士団』に選ばれ、晴れて騎士となった。


◯『ロトリロ王国女王』アレッサンドラ・デル・リューベ

 13歳。黒に近い暗青色の長い髪と、瑠璃色の瞳。

 四年前に病死した父王の後を継いで戴冠し、それ以来女王として正しくあろうと、日々己を律して過ごしている。四年の間に成長し、お飾りの幼い王ではなく、国民に慕われる君主となった。

 ロトリロの国王は、王であると同時に水の精霊ロマを信仰する大神官でもある。大神官はその魔力をもって他の神官達と共に、水の精霊像の水瓶から王都リューベを、そしてそこから繋がる川で国中を潤す水を作り出している。そのため戴冠以来、王都から離れた事は無かった。

 枢機卿フィリポの反乱により水の精霊像に幽閉されるが、ビトーに連れ出され、彼女の運命が大きく動き出す。それ以来、ビトーにのみ年相応の表情を見せる事もある。

 亡き母はメノテウス公王の娘であり、公王は祖父にあたる。


◯『焔波えんぱの騎士』ポーリ・ナンシーニェ

 27歳。ロトリロ第三騎士団の団長で、ナンシーニェ侯爵家の末弟。

 貴族らしからぬ血気盛んな性格だが、騎士団内では身分問わず実力で重用するので、慕う部下は多い。

 元々称号騎士クラスの強さは持っていたが、ロトリロでは水の法術が重視されており、それが苦手なポーリは称号騎士に成れていなかった。

 だが内乱鎮圧後、その功績と実力を認められ、『焔波の騎士』の称号を得る。

 現在は再編した騎士団の一つ『波の騎士団カヴァリエリ・デラ・オンデ』の団長。


◯『鳴滝メイロウの騎士』ジェリンピオ・キートゥ

 29歳。ロトリロ第三騎士団の団員で、称号騎士。国境近くの村出身。

 生まれつき体格がよく、狩りと野山で鍛え、平民の出ながら称号騎士となった。

 水の法術に優れ、水弾系や氷系を好んでよく使う。

 姉弟同然に育った幼馴染レヴィがいたが、『竜の喚巫女』の魔法を掛けられ、耐性の無かった彼女は高熱を出して亡くなってしまった。それが魔人の仕業であることを知り、これまで以上の闘志を燃やしている。

 現在は再編した騎士団の一つ『滝の騎士団カヴァリエリ・デラ・カスカート』の団長。


◯『氷霧ひょうむの騎士』ルイジール・フォウルマ

 36歳。ロトリロ第一騎士団団長。前任のブルーノが騎士団長の頃は、副団長を勤めていた。

 フランの上官で、彼女が騎士団に入る前から妹のように可愛がっていた。

 水の法術の中でも、特に氷系が得意。団長の中でも年長者でもあることから、ロトリロの騎士団全体のリーダー的存在。

 現在は再編した騎士団の一つ『霧の騎士団カヴァリエリ・デラ・二ービア』の団長。


◯バーロ・ナンシーニェ

 60歳。前ナンシーニェ侯爵で、ポーリの父親。長男フラッツに家督を譲った後、王都に移り住み靴職人として暮らしているが、陰ながらアレッサンドラを見守っていた。

 妻に先立たれ二十年。子供たちも一人立ちし、二度目の青春を謳歌していたが、フラッツに二股を咎められ、故郷アルマンド市に強制送還中。


◯『アルマンド市代官』フラッツ・ナンシーニェ

 35歳。現・ナンシーニェ侯爵。ナンシーニェ家は武によって身を立てた家であり、彼自身も己を鍛える事に余念がない。侯爵家を継ぐ為に騎士にはならなかったが、並の騎士には負けない強さを誇る。鍛え抜かれた筋肉により、ポーリより体が一回り大きい。


◯『宰相』トニオカ・パッチーニ

 53歳。ロトリロ王国宰相で、行政のトップで女王を支える右腕。

 フィリポの王宮侵攻時に囚えられ、他の文官達と共に、幽閉される。

 その後反乱が鎮圧されると開放され、再び宰相として辣腕を振るう。

 アレッサンドラの君主としての資質を高く評価しているが、まだ少女である彼女の責任が重すぎる事には心を痛めている。


◯『枢機卿』フィリポ・ジラルディ

 42歳。カーサミラ市の代官。枢機卿は、傍系の王族から選ばれる位で、『大神官が水瓶を正しく使っているか』を監視する役割であるが、今では名誉職の意味合いが強い。

 元は中央貴族であったが、宰相トニオカに野望を危険視され、カーサミラ市の代官に追いやられた。

 ジラルディ侯爵家の当主だが、母親が先々代王の妹であるため王族の血を引く。王位継承権もあるが、序列は低い。

 近衛士団長コディーロ(を操っていたトゥーラン)に唆される形で、反乱を起こす。

 王位に就くという野望はあったが、魔人の存在には気付いておらず、利用されていた。


◯『第二騎士団長』マリオン・パルマレモ

 32歳。パルマレモ子爵家の次男で、功名心が強い。

 騎士としての実力はあるが、他の称号騎士や団長には見劣りする。金とコネの力で騎士団長にはなったが、称号騎士にはなれず、女性でありながら若くして称号騎士となり、貴族としても爵位の高い家の出であるフランに対し、歪んだ劣等感を持っていた。

 マルティンとフランに拘束されたが、口封じとしてオルジャソルに殺される。

 その後、亡骸をトゥーランに利用されるが、生前より強かったのは皮肉であった。



◆剣都ソーディン


◯『聖戦十二階段第一段・豪閃』ロルフ・ティカーン

 60歳。白髪混じりの黒髪、短い顎髭。

 現・十二階段の最古参で、在位期間歴代一位。

 十二階段のまとめ役で、『ルール遵守派』の長。


◯『第二段・鳳閃』ウィルシード・シュクルット

 20歳。肩まで伸びた白金の髪、金色の瞳。セイジの親友。

 二年前に史上最年少で十二階段入りした天才剣士。剣王ラウテの仲間、東星シュクルットの子孫。

 イルディリム皇国の皇女ラフィーナ・ファン・レンストラと、恋人(ごっこのような)関係。


◯『第三段・瞬閃』ゼップ・ヴァルター

 63歳。白髪と白髭の老剣士。十二階段最年長ではあるが、入ったのはロルフの後。

 ノルクベストの事件の裏を怪しみ、独自調査をする為と自由に動けるようになる為に十二階段を引退しようとしたが、皆に反対され断念。

 バスティアンとは旧知の仲であり、彼に調査を依頼した。


◯『第四段・聖天』ヴェアン・フリッツ

 32歳。背の中ほどまでの長髪をオールバックにしている。

 聖戦剣の名門フリッツ家の出で、口は悪いが誇り高い。

 聖閃気で空を蹴って移動でき、空中戦が得意。

 ノルクベストで魔人の残党狩りをしていた時にティエーネと遭遇し、敗北。

 

◯『第五段・聖痕』メルストス・カールシュテン

 29歳。十二階段一の大男。その体躯通りに、怪力を活かした戦い方が得意。

 大雑把な性格で、戦闘好き。隠密には向かないタイプ。

 『ルール改定派』と目されている。


◯『第六段・聖憐』サミィ・マーティアス

 51歳。鎧を着る時は、長い髪を後ろで縛っている。

 ベテランの女性剣士で、姉御のような存在。

 ゼップとは仲が良い。十二階段が派閥で割れることを心配している。


◯『第七段』セイジ・サーグナー

 19歳。茶色い髪と焦茶の瞳。ゼップの直弟子。

 ノルクベストでの活躍を認められ、師匠の推薦で十二階段入り。

 『奥義・聖戦十字翔』を使える。


◯『第八段・聖裂』トニ・バラクスラ

 26歳。短めのアッシュブロンド。

 高い判断力と実力を兼ね備えた、聖戦剣若手のリーダー格。

 ウィルシードやセイジとも仲が良い。『ルール改定派』と目されている。

 行方不明となったヴェアンを捜索するため、ノルクベスト滞在中。


◯『第九段・聖釘』ホアストン・フルディ

 57歳。スキンヘッド。ロルフ、ゼップに次ぐ古株。

 剣都ソーディンの経営面での統括もしており、先細りになりつつある剣士の派遣の状況を憂いて、『ルール改定』を推している。

 

◯『第十段・聖颯』ロッター・ベル

 37歳。左の額から頬にかけて、大きな古傷の痕がある。短い黒髪、浅黒い肌。

 聖戦剣最強論議では必ず名前の挙がる、歴戦の勇士。口数は少ないが、慕う者は多い。

 任務でソーディンを離れている事が多い。中立派。


◯『第十一段・聖舞』ミレク・ジュリアン

 23歳。女性剣士。ピンクブロンドのショートカット。

 ウィルシードより年上だが、十二階段入りしたのは彼女が後である。

 行方不明となったヴェアンを捜索するため、ノルクベスト滞在中。


◯『第十二段・聖盾』レマンス・ベルンハルト

 35歳。前髪が目の上で切り揃えられている。茶髪。

 剣都ソーディンの防衛責任者で、他の十二階段に比べ外に出る事は少ない。

 気のいい性格で、ゼップに上手く使われる事が多いが、本人はそれほど気にしていない。

 『ルール遵守派』で、更にはソーディンの食料自給率をもっと上げたいと思っている。



◆『エンツォ』


◯ミハエル・カリーヌ

 22歳。くすんだ灰色の髪、コバルトブルーの瞳。三兄妹の長兄。

 現当主シルファン・エンツォの後継者候補の一人と見られている。

 ノルクベスト支部長の座を弟に譲り、自らはトゥルコワン法国へと向かった。


◯トビーレルル・イーレルト

 26歳。銀髪のボブカット。愛称はトビィ。

 ミハエルの秘書。非常に有能で、権力や血筋に媚びないところをミハエルに気に入られている。

 仕事上のパートナーのみならず、閨の相手でもある。


◯『エンツォ総裁』シルファン・エンツォ

 73歳。財閥『エンツォ』の当主。ミハエルの大伯父。

 溺愛していた亡き妹カリーヌに似ているミハエルに、目をかけている。

 歴代当主の中でもその辣腕ぶりは有名だが、本人はカリーヌやミハエルの才覚には及ばないと思っている。


◯ポルトゥワ・エンツォ

 30歳。きっちり横分けにした黒髪。かなりの高身長。

 シルファンの孫で、『エンツォ』プレミラ支部長。

 血筋でも年齢でも下のミハエルが、財閥内で自分と同じような立場にいることが気に入らない。

 本人は当主後継者候補の一人と思っているが、実はシルファンの中では候補から外れている。

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