第11話 知られざるユートピュアの過去


 見た目が既にキラキラしているのに、更に瞳をキラッキラッとさせて、まだかまだかとこちらの顔を窺うので、観念した。



「え~~と、何か質問有るならどうぞ(汗)」



「はい、実はもし本人にお会いできる機会が有るのなら、ずっとずっと聴きたかったことが有るんです」



「聴きたいこと……とは何ですか?」



「ちょうどお見せした箇所なのですが……これって本当なんですか? 私も挑戦してるのですが、屋敷の書庫をようやく読み終えたくらいで……」



「書庫にはどれ位の本が有るんですか?」



「これくらいです」



彼女は”ニコッ”と微笑むと手の平を開いて、"5" の数字を表した。多分五千冊くらいだろうか……



「五千冊もお読みになられたんですか?」




「いえ…………五万冊です……」



(五万冊も! 思わず声がでそうになった)



「そっ、そうですか……数を間違えてすいません。でも、それだけ読まれるのも凄いことだと思います」



「いいえ、ユートピュア様と比べたら、まだ全然ですわ!」



「そ、そんなことは有りませんよ。あれは誇張に過ぎませんし」



(本物のユートピュアさんゴメンなさい)



「誇張…………です……か?」



「ええ、だってこの方は私に直接インタビューされた訳じゃないですし」



「ああ、確かにあの事件が起きてから、100年くらい後に発売された本ですからね」



「あの事件?」



「はい、貴女が氷の塔から身を投げて、この世を去られたと綴られたあの歴史的な事件です」



ちょっと待て!!



 色々と一気に情報が入って来て、頭が追い付かないんですけど?

 

 ユートピュアさんが亡くなられてから100年後に発売って……じゃあ、一体彼女がこの世を去ってからどれくらい年数が経過しているんだ。



 それに本当に死んでたの? 僕と思われている彼女って(汗)



「あのぉ~~記憶が曖昧で憶えて居ないので教えて頂きたいのですが……つまり私は自殺をしていた……ということですか?」



「はい、歴史的な史実では。でも……」



「でも、何故貴女の目の前に、死んだ筈の私が居るのか? とかでしょうか?」



「いえ、それも有るのですが……史実によると、急に体が白い光に包まれた後、一瞬にして消えたと言い伝えられていて、実は貴女の遺体が見つかって居ないんです。でも今回お会い出来たことで、その謎も解けました」



「謎が解けた? というと?」



「ユートピュア様は、実は生きていたってことですよ、だから遺体は見つかる筈はありませんわ、フフッ」



 そう言うと彼女はニコニコと満足気に答えた。僕はなんて答えて良いのか分からず、苦笑いする他なかった。



 しかし、今も生きてるって……



 ユートピュアさん(僕)って人間じゃないの?



 年齢に関しては疑問に思わないのだろうか? 先程の話しからでも、間違いなく死んだとされてからもう優に100年以上は経っている。



 僕がいた世界ではお婆さん、いや普通に妖怪の類か何かだろう。そのところどう思ってるのか聞くことにした。



「あの、私が生きてる事に対して、何も思う所は無いんでしょうか?」



「えっ、何がですか?」



「何がって、例えば年齢とか……特に見た目とかです、未だに若く見えるのって不思議じゃ有りませんか?」



「全然、不思議じゃ有りませんよ、だってユートピュアさんってのかたじゃないですか」



 嘘っ! 彼女(僕)ってエルフ族なの?

 でもちょっと待って、耳は確か尖ってはなかったはず………



 え~~と、カトリーナさんの家にお邪魔した時のことを思いだしてみる。

 


 あの時鏡で見た自分の顔の特徴として一番印象に残ったのは、左右の瞳の大きさが違うだけで、耳は至って普通だった。


 

 僕の顔の何処にエルフの要素が有るのだろうか?



 そう自分につい考えていると、突然誰かが扉をノックした。



「どなた?」



「ローゼンマリア様、お清めの用意が出来ました」



「そう、分かったわ、ありがとう。下がっていいわ」



 お清め? 



 これから何かの儀式を行うのだろうか?



 この世界の何かの宗教だろうか?


 

 良くは分からないけど、漫画とか小説で読んだ様な信仰があって、何々神の加護を受けるためにお祈りをするのだろうか?


 

 彼女が部屋から出るなら、丁度いいからさっきの本を借りてゲストルームで読むことにしよう。



 ヨシッ、そうしよう!



「あの、ローゼンマリアさん」



「はい、どうしました?」



「これから儀式か何かですよね?」



「はい、もうそろそろ準備をして行こうと思ってます」



「じゃあ、お邪魔になるので、私はそろそろ」



「お邪魔? いいえ、なりませんよ。良かったら一緒にどうですか?」



 どうしたものだろう……?



 突然儀式に誘われてしまった。ゲストルームでのんびり本を読もうと思ったけど、この世界の文化について触れる絶好の機会かもしれない。



 本は儀式に参加した後でも読める事を考えると、これから彼女が行おうとしている事は、そんなに頻繁に催される物では無いかもしれないし。



 心の天秤にかけた結果、ワクワクする方を選ぶ事にした。



「じゃあ、お邪魔で無ければ、是非!参加させて下さい」



「もちろんです。お邪魔な訳ないじゃないですか! むしろ楽しみですっ、フフッ」



 化粧台に移動し、身体に取り付けた首飾りなどの装身具を一通り外すと、彼女は席を立ち、『それじゃあ行きましょう』と行って僕の手を取ろうとしたので、慌てて指環を外そうとしたが、上手く外すことが出来なかった。


 

 仕方なく彼女の手を取り、そのまま部屋を出る事にした。



 一体これから何処に行くのだろう? 



 僕はキョロキョロと、廊下に飾られている数々の絵を眺めながら、子どものように手を引かれ、清めの儀式の場に向かうこととなった。

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