掌編小説・『良い夫婦』

夢美瑠瑠

掌編小説・『良い夫婦』

                                                            



掌編小説・『よい夫婦』



 蜜夫と月子は新婚夫婦で、翼夫と理子は中年の夫婦だった。

 それぞれのカップルは、互いに物足りなさを感じていた。ほぼ毎日セックスをしていたが、蜜夫は早漏で、月子は豊かな性感を持て余していた。  

 翼夫は、ED気味で、理子も慢性的に欲求不満だった。

 出会い系のサイトを通じて、いわゆるスワッピングをしようということになって、

 ホテルの一室で二組のカップルは落ち合った。蜜夫は聡明そうな理子の美貌に、一目で虜になって、気もそぞろだった。翼夫も、肉感的な月子の若々しさに、新鮮な欲望を覚えて、少し問題の部分が反応しそうになっていた。

 月子は翼夫の中年の様々な星霜を経た末の完成された貫禄に父親に覚えるような親近感を持って、視線が交錯すると少し顔を赤らめたりしていた。

 理子は蜜夫の若い男らしい性急で初々しい欲望の視線に、女の部分が生理的な敏感な反応を示してしまって、やっぱり顔を赤らめていた。


 小説的な描写の羅列に飽きてきたので四人はパートナーを交換して、さっさと情事に赴くことにした。


 二つの部屋に分かれて、裸体を露わにして、新しい肉体との遭遇にときめきを覚えて、そうしてお決まり通りに抱擁して接吻した。


 翼夫は医者だったので、未知の女性の裸体には慣れていたが、それでも月子の豊満でプリプリした脂ののった肉体に触れることで、血沸き肉躍るような、「回春」の感覚が蘇って、乳房を吸いながら久々に力強く高まっていく自分自身を頼もしくし意識していた。


 蜜夫は理子の端整な美貌が、性的な昂奮で乱れていく感じに欲望をそそられて、ベッドに押し倒して、激しく熟れた女体を貪る感じになった。


 しばらく、ふたつの即席のカップルは新鮮な愛戯に夢中になっていた。


・・・ ・・・


 そうして、ホテルからの帰途、月子はイカされてしまった自分を恥じて、「あんなオジン、加齢臭で吐きそうになったわ」と、眉を顰めて言った。


 理子も、「あんな若僧、ろくに動かないうちに出ちゃって、全然物足りなかったわ」と、強がりを言った。


 しかし、来週に再び逢瀬をする約束を、ふたつの「良い夫婦」たちは、しっかり取り付けていたのだった。


<終>

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掌編小説・『良い夫婦』 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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