第147話 動き出す狂気の宴

 パワーレベリングの依頼があった翌日、いつものように修行やら書類仕事をしていると、あっという間に時間が経った。

 時刻は午後3時、依頼主であるDメディア・ジャパンの社長さんが到着したようだ。


 俺はディスプレイを閉じ、執務室から応接室に向かった。 




 応接室に入ると、社長さんと思われる男性とその娘さんが待っていた。


「お待たせしてすみません。代表の天霧英人です」


 挨拶をすると、社長さんと娘さんはソファから立ち上がる。

 

「初めまして、Dメディア・ジャパン社長の鎌瀬と申します。お会いできて光栄です」


 ん? 鎌瀬……どこかで聞いたような。


 俺は聞き覚えのある名前に一瞬考えるも、どこで聞いたかは思い出せなかった。


「鎌瀬 桜です。よろしくお願いします」


 娘さんはしっかりしているようで、丁寧に挨拶をしてくれた。


「今回の依頼の確認ですが――」


 俺達は早速、今回のパワーレベリングの依頼についてすり合わせを行った。



「最近物騒な噂が耳に入ってきているからね。ちょうど娘もステータスが発現したので、これを機に少しレベルを上げておこうかと思いまして」


 どうやら鎌瀬さんは、最近発生している変死体や行方不明者の噂を聞いているようだ。

 

 ジンが警戒しているけど、分身がやられることも増えてきたらしい。


 そう言った物騒な噂が入ってくる中で、ちょうど娘の桜ちゃんがステータスを手に入れたから、今回はインタビューではなくパワーレベリングをしてもらう事に決めたそうだ。


 身の安全を考えて、できるだけ早くレベルを上げてしまおうって話だ。


「なるほどです。A級ダンジョンですし、レベルはすぐに上がると思います。早速ですがダンジョンのほうに向かいましょうか」


「よろしく頼むよ」

「よろしくお願いします」


 こうして俺は、鎌瀬さん親子を連れてA級ダンジョンへと向かった。




 ***

 Side:ネメア


「ネメア様、本日が宴の頃合いかと思われます。満月の光が良く届いております故、下々の者達も存分に活動できるかと……」


 はぁ……やっとみたいね。


「それで? 下準備は順調かしら?」


「はい。ネメア様のお望み通り、前菜には勇者を提供できるように致しました」


 なんてよくできた子達なのかしら……地球の勇者はどんなやつなのかしらねぇ、楽しみだわ〜。


「そしてルアンの件ですが私が調べた所、どうやら件のコアの少年によってよって討たれているようです」


 あら〜? 変ね……アイツ生きてるはずなんだけど。


 血を与えた者は、少なからずアタシと繋がっている。

 ルアンとの血の繋がりをまだ感じているって事は、アイツはまだ生きているはずなんだけど。


 血の繋がりと言っても、アイツとの繋がりは弱いから、居場所まではわからないけれどね。

 

 まあいいわ……アイツなんて、いてもいなくても変わらないわ。


 それよりも、我が子達がソワソワしちゃってるわね。


 アタシは玉座から立ち上がる

 

「じゃあアンタ達〜、宴を始めましょう。存分に腹を満たしてきなさい!」


「「「ヒャッハー!」」」


「血だ血だー!」


「喰らい尽くすぜー!」


「「「フォー!」」」


 あら随分はしゃいじゃって……


 我が子達は翼を広げ、地上を目指して続々と飛び立っていった。


「フフフ……楽しみねぇ。あなたはどんな声で鳴くのかしら……フフフ」

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