SS 第一話 天霧大吾 南極へ

 SIDE:天霧大吾


 


「で? 俺に何のようだ?」


 わざわざ用のない新宿支部まで来てやったんだ、しょうもない話なら容赦しねえ。


「今日呼んだのは、少々英雄殿に攻略してほしいダンジョンがあってだな。南極に攻略不能と呼ばれているダンジョンがあるのは知っているかね?」


 なんだ? そんな面白そうなダンジョンは聞いたことねえな。


「詳しく聞かせろ」


 俺は身を乗り出して話を聞いた。

 



 それからこの小森っていういかにも胡散臭そうな支部長が言うには、どうやら南極にダンジョンがあるらしい。


 そこを俺に攻略して、ダンジョン・コアってやつを探して来いって話だ。


 そのダンジョンコアっつうやつには興味ねえし、指図されんのは癪だが……面白そうじゃねえか。


 手応えのあるやつが出てきてくれれば、少しは楽しめそうか。


「で? いつ行くんだ? 南極」


 俺は二つ返事で南極行きを決めた。




 そして当日、準備を済ませた俺が出かけようとすると、英人も俺についてくるとか言いやがる。

 やれやれ……最近は家を出る時は毎回これだ。


「父さん! おれもいきたい!」


「あん? まだダメだな。ステータスも出てねえだろう」


 まだ早えっての。


 まあ、俺と同じくらい戦えるようになったら連れてってやるか……


「えー。待ちきれないよ〜」


 南極のダンジョンから帰ったら、そろそろ英人のやつを鍛えてやるか……


「帰ってきたら鍛えてやるから、今回は大人しく待っとけよ」


「本当 ! ? 修行つけてくれるの ! ?」


 英人は毎日俺の鍛錬を横で見てやがるが、直接教えてやったことはなかったからな。

 その辺の探索者が腰を抜かすくらい、馬鹿みてえに鍛えてやるぜ。

 それで俺を超えてくれりゃあ文句はねえ。


 少し楽しみになってきたなあ。


「おにい! すずも! すずもいっちょにやる!」


「わたしもやるわ! だから、大きくなったら3人でパーティーくみましょうよ!」


 ふむ……天道のやつの娘とすずも一緒に鍛えてやるか?


 天道のとこのレイナは毎日のように遊びにきてやがるからな、英人と鈴とレイナの三人でパーティー組ませてやるのもいいかもな。


「そうだぜ、レイナの言う通りおめえら三人でパーティー組んだらどうだ?」


 俺にはついてこれる奴がいないせいでずっとソロだったからなぁ。

 

 仲間ってやつはいるに越したことはねえ。


「えー、俺は父さんと組むからいいよ!」

「えいと! わたしとパーティー組むんだから! 約束よ!」

「わーい! ぱーてー!」


 騒がしいガキどもだな。

 元気が有り余ってるのも今のうちだぜ?

 

「戻ったら三人とも鍛えてやるからな! 覚悟しとけよ!」


 



 そうして家を出た俺は今、南極の上空にいる。


 魔導飛行機っつう、魔石を動力源にした飛行機で南極上空を飛行している。


 飛行機の窓から、おそらくあれがダンジョンだろう、バカみてえにデカい岩の塊が見える。


 今から40年前の2000年に、ダンジョンが地球に現れた時からあるらしい。

 こんな面白そうな場所があるなら、もっと早く知りたかったぜ。

 

「そろそろ降下地点です! 扉開けます!」


 スカイダイビングは初めてだな。

 まあ、何とかなんだろ。


 俺は開かれた扉から、氷の大地に向けてダイブする。




「さて、早速中に入るか」


「英雄さんよ〜ちょっと待ってくれねえか? まだ他の奴らがダイブしてるんだ」


 そういえばいたなぁ、こいつら。

 一人でいいって言ったんだが、小森のおっさんがこいつらを一緒に連れて行くことが条件だと抜かしやがったから、仕方がねえから同行を許可した。


「足手まといになるなよ〜?」


「チッ……調子に乗りやがって」 


 俺についてきてるやつは五人。

 全員が裏社会の人間だな……そう言う奴は雰囲気でわかる。


 小森のおっさん、こんな奴ら飼ってるなんてな。

 帰ったら財前の爺さんにチクっとくか。


 俺は連中を連れて、遠くに見えるEXダンジョンを目指した。




 へえ、こりゃあやべえ匂いがするなあ。


「おいお前ら、油断してっと死んじまうぜ?」


「へいへい」

「言われなくても警戒してるさ」


 まあ、俺には関係ねえな。


 そして俺を先頭に、EXダンジョンに入場する。


 中は普通のダンジョンとは違った。


 まずかなり広い、どこまで続いてるか分かんねえ程の広い空間。


 そして何もねえ、見渡す限りの石の床が続いてやがる。

 一番近いので言えばボス部屋か?


 そして暗い、「暗視」を高レベルで持ってないときついかもな。

 


 

 内部の構造を確認してると、突如全方位から何かが迫ってきた。


「何か来やがるぞ!」


 ――シュッ――ザシュ


「何だ!? 何が――うわああああ!」


「おい! 何が起きてる ! ? 何とかしてく――」


 ――シュッ

 

「チッ、言わんこっちゃねえ!」


 何かの攻撃が高速で俺たちに飛んできてやがる!


 俺は大剣を抜刀して攻撃を防ぐ。


 ――パーン!

 

 剣に触れた何かが弾けた。

 

 こりゃあ、魔法か ! ? 

 魔力の斬撃が四方八方から飛んできやがる!


「舐めたことしやがるなあ! 狂剣きょうけん! 狂華くるいばな!」


 ――パパパパパパパパパーン!


 数百の魔力の斬撃を大剣で叩き切ると、攻撃が止んだ。


「もう終わりかあ? ならこっちから行くぜえ?」


 俺は一番近場の魔法が発射されていた位置に疾駆した。


「よお? おめえ、悪魔系の魔物か?」


 魔法が飛んできた方向には悪魔系の魔物のような人型がいやがった。

 

「なっ ! ? 無傷だと ! ?」


 ――ザシュ――ボトリ


 お? 勢いで首切っちまったが、今喋らなかったか?


 まあいいか、攻撃してきたのこいつらだしな。


 それにしても……何匹いやがんだこいつら……

 

 四方八方からさっきのやつと同じ見た目の悪魔がわらわらと迫ってきやがる。


 ちょっとは楽しめるか?


「今回の人間は多少はやるようだな」


 夥しい悪魔の群れの先頭に、他の悪魔よりも高位の悪魔がいやがる


 ありゃデーモンロードか?

 黒い羽と黒い二本のねじれた角、悪魔系なのは間違いねえんだが……今まで見てきたやつとは少しちげえな。


 まあいいや、こいつらダンジョンの魔物と違って生きてやがるみてえだし。


 ダンジョンの魔物みたいなつまんねえ攻撃はしてこないことを願うぜ。


「はて、我らの攻撃に何秒耐えられるかな?」


 一際偉そうに喋ってるやつが親玉か?


 舐められたもんだぜ……


「おい悪魔野郎。この中で一番強えのはお前か?」


 数百匹はいる悪魔だが……


「見てわからないのか? これだから下等生物は困るな」


 少しがっかりだぜ。


狂化バーサーク


 ジョブ専用スキル「狂化」。

 理性を失う代わりに、ステータスが爆発的に増加する。


 俺の前の「狂戦士」のジョブのやつは、完全に理性を失って死ぬまで暴れ続けたらしい。


 だが、俺はそうはならねえ。


「おい悪魔ども! すぐにくたばるんじゃねえぞ!」


 俺は大剣を片手で握り、近場の悪魔に近づく。


 頭を鷲掴みにしてそのまま握りつぶす。


 ――グシャ

 

 そして次の悪魔は大剣の薙ぎ払いで両断する。

 

 薙ぎ払いは音速を超え、衝撃波が発生。


 ――ドーン!


 そして悪魔どもを次々と屠り続ける。


 薙ぎ払い、突き刺し、殴り飛ばす。


「オラオラどうしたあ! もっと気合い入れてかかってきやがれ!」


「この人間……化け物か ! ?」


 


「ふう、まあ数は多かったが、イマイチだったな」


 立っているのは俺と、偉そうにしてた悪魔だけ。


 周りを見ると、死体の山が出来上がっていた。

 悪魔が数百体に、小森子飼いの連中も死体になっちまってる。

 だからいらねえっていたんだけどなぁ。


 にしても……


「やっぱり雲散してねえってことは、こいつら生きてるってので確定か?」


「き……さま、人間……なのか?」


 さっきまであんなに威勢が良かった悪魔もこの様だ。


「で? お前はどうすんだ? 俺としてはもっと強え奴を連れてきてほしんだけどよ」


「は?……まだ戦うのか?……300だぞ! それだけの同胞と戦って、まだ戦い足りないだと……」


 300もいたのか? 

 まあ、話にならねえ程弱かったからな。

 気づかなかったぜ。


「ピーピーうるせえな。で? お前より強いやつは何人いるんだ?」


「フ……フフ……ハハハハ! 私より強い存在だと? そんなもの数えられない程いるに決まっているだろう! あの方々に比べれば、貴様など虫同然だ」


 まじかよ……ウジャウジャいやがるのか ! ?


 今回は大当たりだぜ!

 

「クハッ、ハハハ! そいつは楽しみになってきたなあ!……あ?」


 俺が思わず笑っているうちに、偉そうにしている悪魔は逃げ出してしまった。


 まあいいか……あいつ追いかければ、そこに強えやつがいるだろう。


 俺は逃げる悪魔を追いかけ、そのままダンジョンの奥に向かった。

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