第3話 ああ、いやらしい。人前で「お父さんは、お母さんは…」とかって、言わないで。父、母、兄、弟、姉、妹、祖父や祖母…って言うのが、常識。

 新卒の大学の入学式は、楽しかったよ。

 パパとママが、きてくれた。

 じいじとばあばは、腰が痛いんで、こられないと言った。

 だから、1ヶ月後くらいに、こちらから遊びにいってやった。入学祝いの金を、たんまり、もらうために。

 俺らの世代にとっては、シューショクヒョーガキ世代の人たちと高齢者は、金づる。

 気付けば、卒業式。

 パパとママに、心配された。

 「おい、ガラハド?将来のことは、どう考えているんだ?」

 「そうよ?たとえば、結婚について、ちょっとでも考えたことはあるの?」

 あせるな!

 女の子のほうから、俺らの元に、やってきてくれるはず。

 俺ら新卒は、格好良すぎだ。

 「ガラハド?自分自身で動いたら、どうなの?」

 「わかったよ。ママ!」

 俺は、動いたさ。

 俺らの世代の男子は、SNS依存症!

 「マッチングアプリを、使え!」

 困ったら、何でも、SNS!

 「恋愛とは、楽しいことも、そうでないことも、経験していく旅。男女でケンカをして共にすごしながら、互いを近付けていく。心の努力の作業」

 もう、そういう考え方は、古いわけ。俺ら的には。

 「努力って、コスパ悪くね?」

 「それ、正解」

 「タイパも、悪くね?」

 「正解」

 「俺らの世代には、無理。努力とかがまん、無理」

 「自分で、言うなよ」

 「オンリーワン!」

 「世界に1つだけの花!」

 「日本の中心で、俺らを叫ぶ!」

 「パパやママのような、メンドーな努力の生き方はしません!」

 「つか、できません!」

 「やっぱり、恋愛には、マッチングアプリを使え!」

 「最短ルートで、いけ!」

 努力のいらない過保護な生活のクセは、大人になっても、簡単には抜けない。

 俺は、マッチングアプリを使って、リアムちゃんという名前の女の子と知りあった。リアムは、日本生まれの、日本人女性の本名。

 マッチングアプリでの出会いは、まじ、マスト!

 コツコツと生きてきた世代との差って、どうよ?

 彼女に実際に会って、驚かされたのが、しゃべり方。彼女は、こんなふうにしゃべるんだよ。

 信じられるか?

 「私には、やや病弱な母がいます。父は、出張中です。静かな家庭ですし、声をあららげるなんてことは、しないでくださいね?」

 驚いたよ。

 「…母?父?…え、え?ママとか、パパって、言わないわけ?」

 へえ。

 人前では、父、母、兄、弟、姉、妹、祖父や祖母…とかって言うのが、社会常識なんだとか。

 まじか。






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