アイドルさんがうちに居座っている

どうも勇者です

第1話 アイドルがうちに居座っている

「ねえ、何してんの?」

「んあ?」


 顔を上げる。休日にしている土曜の午前10時、デジタル時計のディスプレイはまだ日中を指示していた。机には俺の涎に酒の匂い、ビールの缶も転がっている。昨夜酒を飲んでそのままつぶれていたようだ。


「うわ、これオタクな奴じゃん」

「オタクとか言うな。健全な青少年ゲームだ」

「へ~」


 同居人、村雨十香が俺のパソコン画面を覗き見る。大嘘、ちゃんと18金のエロゲだが、世の中には知らないほうがいいこともある。なんまんだぶなんまんだぶ、知らぬが仏もあるものだ。


「ていうか、コンディショナー切れてるんだけど」

「……買うの忘れた」

「はー!?使えないなー」

「使えないとはなんだ。ほしいなら自分で買って来ればいいじゃんか」

「私がここら辺うろうろするわけにいかないでしょー!?」

「へいへい、アイドル様は大変なこって」


 ここにいる十香はいわゆるアイドルだ。アイドルユニット「MINCA」のメンバーで、いわゆる地下アイドルに分類される類のやつ。地下アイドルといっても元、といったほうが正しくて今はメディアにも露出して普通にアイドルとしての活動が主らしい。なんでも最近売れてきたのだとか。羽振りがよさそうで何よりである。


「スーパーいってくるけど、なんか買ってきてほしいもんある?」

「あ、私も行く!」

「はー!?それなら俺行く意味ねーじゃん!?」

「別にいいでしょ、それぐらい」

「それぐらいってお前……」

「ほら、いくよ?」


 いつも履いている、アイドルとしての靴とはまた違う、アパートから戻って少し外に出たりする時の地味で、それでもどこか彼女の背丈にあっているような気もする靴に履き替えると彼女は俺を日のもとに引きずり下ろした。


 うちの家にはアイドルが居座っている。

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