Island(アイランド)

化野生姜

プロローグ

今日も島は平和です

 今日もチョロん島は平和です。


 ぽかぽか陽気に地面には花が咲きみだれ、ツンとした頭のチョロ助はケロケロ笑いながら花畑の上を転がります。


「どーしたの、チョロ助?そんなに笑って」


 声をかけたのはモフモフの耳を持つ、お友達のポムりん。

 そこにチョロ助は持っていたかじりかけのキノコをさしだします。


「これ、森に生えてたの。食べるとちょー楽しくなるの」


 スコンッ


「アホか!こんなもの毒に決まってるじゃない!」


「チョップすることないじゃないかー」


 それにポムりんは腰に手を当て「もう、何してるのよ。もぐん太もどこ行ったかわからないし」と、チョロ助の手を引っぱって歩き出します。


「おやつのシフォンケーキが焼き上がったのに、どこで油を売ってるんだか」


「わー、次のキノコ食べよー」


「食うな!ってかどこから出したのよ」


「ポケットにいっぱい詰め込んだー」


「捨てなさい、そんなもの」


 そんなやりとりを二人がしていると「おー、チョロ助とポムりんがいるがー」と、のんきな声。


 みれば、ぴょこんと耳を立てたもぐん太が切り株の上に座っています。


「ちょうど家に帰ろうかと思っていたところに出くわせてよかったがー」


「どこ行ってたのよ、おやつの時間に」


「キノコ食べる?」


 スコンッ


 お家へ帰る途中、もぐん太は二人に話します。


「何だか空を見ていたら、急に地面を掘りたくなってがー」


「なんでよ?」


「きっと楽しいからだよ」


「そいでなー、外に出たら何だか冷たい床でな」と、もぐん太。


「まわりから、黄色い服を着た連中がやってきて『脱走だ』とか『チタン製でもダメか』とか言っていて、気がついたらここにいたがー」


「それ、夢じゃない?」と首をかしげるポムりん。


「チョロ助みたいに、変なキノコでも食べたんじゃない?」


「えー、ぼくそんなに変なもの食べないよお」


 そう言って、チョロ助は近くのキノコを取ろうと手を伸ばしますが、ポムりんはその手を「やめんか」とパシリと叩きます。


「何だかよくわからないがー」と空を見上げる、もぐん太。


「もしかしたら、外に出たいと思ったのかも知れんがね」


「あー、それわかるう」とチョロ助。


「だって、ぼくら生まれてから一度も外に出たことないものね」


「確かにね」とポムりん。


「でも、今ある一番の問題は冷めていくケーキをみんなでどうするかよね」


「それはいけない」とチョロ助。


「いなねばならんがー」とお家のドアを開けるもぐん太。


「ただいまー」


 …そこは日本領土にある島、チョロん島。

 ガラスドームに覆われ、偵察機飛び交う不可侵領域は今日も平和なのでした。

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