こえの家の日常
こえの
バレンタイン2023
バレンタイン2023#1
バレンタイン。
それは女性が好意を持つ男性にチョコを送るイベント。
しかし近年では男性から女性へ渡すこともあれば、女性同士、男性同士でも日々の感謝の気持ちを伝えるためにチョコを送り合う事もあるらしい。
さて、そんな訳でいちかは悩んでいた。
日頃の感謝をマスターであるこえのに伝えるべく、
チョコを渡すべきか否か。
女性から男性へとチョコを渡す、というのは感謝の気持ちで渡したとしても邪推されることは否めない。
義理チョコだと分かりやすく、買っただけの物を渡すというのも有りだとは思うが、何だかそれでは気持ちが伝わらない気がしている。
何だかんだマスターと出会ってから数年が経っている。
未だ燻っているものの、日頃から頑張っているマスターに少しでも元気を出して欲しい。
そんな健気な想いを持ちつつも、勘違いされたくはないという乙女心である。
そもそもとして、チョコを買うにしてもそのお金は、自分で働いて手に入れたものではなくお小遣いとしてマスターから貰ったものだ。
確かに家事等で労働はしているものの、それとこれとは話が違う。
自分で自分にチョコを買ってあげてるのと変わらない事になってしまわないだろうか。
―――まぁ何にもしてないでお小遣いを貰ってるはじめは何なんだという話になってしまうが。
「どうするかなぁ。」
いちかはリビングで腕を組み悩む。
バレンタイン当日まで1週間強だ。
うーん、と唸っているとガチャガチャと鍵を開ける音が聞こえた。
はじめが帰ってきたようだ。
「お姉ちゃんどうしたの?」
はじめが不思議そうに悩むいちかに声をかけた。
その手には近くのコンビニで何かを買ってきたであろう袋があった。
「いやな、バレンタインどうしようかなって思ってな。」
「あーそれね。私は○ッキーで良いかなって思ってるんだけど。」
はじめの言葉にいちかは驚きを隠せない。
何もあげないよりは確かに良いのかもしれないけれど……。
いちかは即ツッコミを入れる。
「いやいや、それじゃアカンやろ。」
「なんで?チョコじゃん。チョコ渡せば良いんでしょバレンタインって。」
「全然違うわ!」
言葉とは裏腹に成程といちかは合点がいった。
この
なので、先程から悶々と考えていたことを一字一句間違いなくいちかははじめに伝えた。
無論そのお小遣いは元々誰ので、いつも何もしてあげてないやん!って事とかもチクチクと。
「うへー、お姉ちゃん、それは考えすぎだと思うよ。」
「でも年に一度の大事なイベントやん?」
「感謝の気持ちが伝われば良いんでしょ?お姉ちゃんは普段から色々やってるんだし、わざわざ大きいことやらなくても伝わると思うけどな〜。」
「それとこれとは違うんや!」
これは気持ちの問題なのだ。
いちかはマスターを驚かせたいと思っている。
"バレンタインだから"とただただ消化したくないのが本音なのだ。
特別であるからこそのイベント。
それで色んな事を想って欲しい。
「うーん、じゃあとりあえずはお金を貯めないとだね。」
「そうなんやけどなぁ。でもVOICEROIDのバイトってマスターの許可証とか色々必要やろ?私達の所有権はマスターが持ってるわけでも無いしバレたらやばいやん。」
諸々の事情がいちかに過る。
あまりいい思い出ではないが現実的に仕方のないことだ。
「実はね、良い所があるんですよ。」
っとはじめが怪しい顔でいちかを誘う。
まるで悪事を勧めるかのように
「え。」
いちかはヤバいことに巻き込まれないだろうかと思いつつも、
もし妹がそんな悪事に手を染めてたら嫌だと思ったので、一度出そうになった言葉を飲み込みはじめの話聞いてみることにした。
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