2ー2
「——だね」
ふと、すぐ近くから声が聞こえてきた。誰かに話しかけたような口調だった。でもそれは小さい声だったので、うまく聞き取ることができなかった。もしかして話しかけられたのっておれじゃないよな、そう思いながら声の聞こえてきた方を見ると、白い毛糸の帽子をかぶった、背の低い、小学五年生くらいの少年が目を細めながら、ぼくのすぐ隣でブロック塀の上に腰を下ろしていた。そして燃え上がる炎から目をそらすことなくもう一度、今度ははっきりとした声でこう言った。
「すごくきれい」
その言葉を聞いた瞬間、ぼくは反射的に周りを一度見回した。なぜならその少年の一言があまりにも正直で、あまりにも不謹慎だったからだ。でもちょうどその時に、燃えていた家が大きな音を立ててくずれ落ち、と同時に辺りの人々がどよめいたおかげで、どうやらぼくの他にその言葉を耳にした人はいないようだった。ぼくはほっと胸をなで下ろした。なで下ろしながらもう一度隣に目をやると、そこにはもうその少年の姿はなかった。
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