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 その勇一郎の言葉を聞いてから、しばらくの間ぼくは何も言うことができなかった。実を言うと、図星だったからだ。そう、ぼくはそれまでの十三年間——その時ぼくは十三歳だった——、努力らしい努力を何一つしたことがなかったし、する気にもならなかった。先にも言った通り、ぼくはそういうことをしなくてもたいがいのことは他人よりもうまくできたし、そして前出の教師たちのように、ぼくを実際以上に持ち上げてくれる「誰か」が、必ずと言っていいほど近くにいたからだ。はっきりとした理由は今でもよくわからないけれど、そういう面でぼくはとても人気がある子供だったのだ。

 でも、ぼくはその「誰か」にそうされることがとても嫌だった。なぜならぼくはその「誰か」に持ち上げられる度に、自分がどんどん駄目になってゆくような気がしていたからだ。そうされる度に、自分がどんどんすり減ってゆくような気がしていたからだ。これは本当のぼくじゃない、いつもそんな風に感じていた。本当のぼくはもっと駄目な奴なんだ、いつだってそう思っていた。にもかかわらず、ぼくはその「誰か」をなかなか否定することができないでいた。その「誰か」は、ぼくにとってとても嫌な存在であると同時に、あまりにも心地よい存在だったからだ。その「誰か」に任せておきさえすれば、ぼくはたいした努力もせずに、「特別」になることができたからだ。

 馬鹿げてる。

 今のぼくにならその考えがどれだけ馬鹿げているのかを理解することができる。でも当時の十三歳のぼくには、まだうまく理解できていなかった。あるいはまだ理解したくなかったのかもしれない。でも勇一郎はその時に、既にはっきりと理解しているように見えた。その考えがどれだけ馬鹿げていて、そしてどれだけ危険なことなのかを。

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