01 トモコと友愛
ずっと前から、言われてきた言葉がある。
友達は大事にしなさい。
って。
周りの人達から、そう言われてきた。
友達を大切にできない人は、ロクな大人になれないから。
って。
だから私は、言われた通りに友達を大事にしてきたんだよ。
なのに、皆がひどいんだ。
それは、私が学校に通ってるときに起こった。
「ねぇ、ジュース買ってきてよ」
「えっ?」
お昼休みの時間、友達のサユリが私にそう話しかけてきた。
「聞こえなかったの? ジュースを買ってきてって言ったの」
「でっ、でも……」
不機嫌そうな顔をする友達に私は反論する。
「学校の外に出ちゃいけないって、先生が……」
ジュースを買える自販機は近くにある。
でもそれは、学校の敷地外にあった。
けれど授業中も、お昼の時間も、学校の外に出てはいけないって先生から言われてるから。
そんな事をしたと先生にばれたら、怒られてしまう。
サユリは、声を荒げる。
「友達が困ってるのに助けてくれないの? じゃあ、もうあんたなんか友達じゃないわ!」
「待って! 行くよ! 行くから!」
「なら、初めからそういえっつーの」
私は渋々、いうとおりにするけど、自分の行動が本当に正しいのか分からなかった。
そんな私を見つめている人間がいる事にも気づかずに、学校を出ていく。
今さっき、一人の女の子がパシられて、廊下を走っていった。
「あはは、『友達』って言ったら、まじで買いにいっちゃったよ。あいつ最高! ねぇ皆、これからももっと遊んであげようよ」
「ほんとうけるんですけど。これからもパシリとして使ってやろ!」
「馬鹿だよねー」
遠くで女子達が騒いでいる。
サユリ達だ。
自分達がしたことについて、これっぽっちも罪悪感を抱いていないらしい。
友達は大切にしなければならないもの、だなんて馬鹿らしい考えだよまったく。
だれが『あの子』に、トモコにそんな事を言ったんだろう。
サユリ達なんて、あんなの友達なんかじゃない。
自分の言うとおりに動かない人間に向かって、「友達だよね?」とか「友達でしょ?」とか言ってくるやつが、友達であるわけがない。
本当の友達というのは、相手がどうしてほしいのかが分かる、そんな心の通じ合った人達の事だ。
だからボクは、サユリの言いなりになっているトモコの事を知って、助けなきゃと思った。
自分の手の中にはとある闇サイトで手に入れた呪いのアイテムがあるから、それを使って。
藁人形を握りしめて、サユリが不幸になるようにと念を込める。
大丈夫。
きっとうまくいくはずだ。
だって、成功した体験談がたくさんネットに書き込まれていたんだから。
大丈夫だよ、トモコ。
ボクが助けてあげるから。
「トモコちゃんというのね。うちの子の葬式に来てくれてありがとう」
「えっと、まあ、はい」
サユリが死んだと聞いた時は、びっくりした。
何でも、暴走した車にはねられたらしい。
私があげたお金で遊んでいたサユリは、カラオケ店から出た瞬間に、命を落とした。
きっと楽しく過ごしていたはずなのに、なんてかわいそうなんだろう。
私はサユリのお葬式に出席して、対応に出てきたサユリの両親と話をしたあと、最後の挨拶をした。
遺影の中のサユリh、何も悩みなんてなさそうに笑っている。
「サユリ、サヨナラだね。天国に行っても私達はずっと一緒だよ」
けれどサユリの友達からは、信じられない物を見るような顔をされたな。
ひそひそ声が聞こえる。
「あんな事されてたのに、友達とか言ってるよ」
「えっ、意味分かんないんですけど。あいつ頭おかしくね?」
きっと大好きなサユリが死んじゃって、ショックが多すぎたせいなんだろう。
友達として、しっかり励ましてあげなくちゃ。
にっこりと笑ってあげると、彼女達は気味悪そうな顔をしてどこかへ行ってしまった。
色々話をしたいところだけど、ちょっとお葬式が長かったから疲れちゃったな。
今日は家に帰って休もう。
自分の部屋に着くと、なぜかゴミ箱の中身が目に付いた。
そこに、あるはずのないものが捨てられていたからだ。
「藁人形?」
どうしてこんなものがあるんだろう。
ちょっと気味が悪い。
家族の誰かのいたずらかな。
友達が亡くなったっていうのに、不謹慎な。
でも、文句を言うのは後。
今は、早く眠って疲れを取りたい。
ここのところ、なぜか眠くてしょうがないからな。
徹夜で試験勉強した時みたい。
着替えを手早く済ませ、ベッドに寝転がるとすぐに眠気がやってきた。
トモコはぐっすり、眠ったようだ。
眠ったばかりのトモコの代わりにボクは、ベッドから起き上がった。
藁人形を外に捨てにいくため、部屋着からもう一度着替えなおさないと。
失敗失敗。
トモコに怪しまれないように今まで頑張ってきたけど、最後にちょっと油断してしまった。
次があったら、睡眠時間を確保するために闇サイトを見るのは短くしたほうがいいかもしれない。
呪いのアイテムもできるだけ、別の場所に保管するようにしよう。
部屋の中にある鏡。
そこに映ったトモコの顔がにやりと笑った。
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