15:暗殺者の華麗なる転職
『元○○』(2023/04/09・monogayary)
オリバー・セルヴィッチは人間を殺すことを生業としている男である。
物心がついた頃、ナイフの扱いが物凄く得意だったオリバー少年。
鉛筆削りから小さな木彫り細工、魚や小動物の解体、果ては罠にかかった獲物を苦しませずに殺めるやり方まで。オリバーは一度教えられただけで完璧に記憶した。そして、すっかり自分の技にした。
彼の華麗なるナイフ捌きに感心した祖父は、罠に足を潰され踠く獲物——鹿や猪に変わり、ひとりの人間の大男を与えてみた。その大男は「生きる価値なし」の判断を下された男であった。が、いったい何をして「生きる価値なし」となったのか、オリバー少年は知らない。別段、知りたいとも思わなかった。ただ祖父が「やれ」と言うので、やったに過ぎない。
己の死を目前にした獲物は激しく抵抗する。大男も叫き、丸太のような両腕を振り回し、上半身を捻ったり弾ませたりしながら無傷の片脚で逃げようと抵抗した。どくどくと大量に出血している割に、大男は元気溌剌だった。
しかし、オリバー少年は大男を永遠に黙らせた。一瞬の煌めきの内に文字通り、命を刈り取ったのだ。
鮮やかな御手前に、祖父は大変満足した。そして息子から孫を買い取った。息子は多少賢いが、殺しに関しては嘆かわしいほどにセンスのない男だったので、「あやつでは孫を腐らせるだけだ」と考えたのである。一銭も払わずに取り上げても良かったが、金を出せば一応ビジネスになる。息子の嫁は浪費家だから金は幾らあっても困らないのだ。けれど、才能ある孫が腐るのは惜しい。
そうしてオリバー少年は、祖父の養子となった。
祖父はオリバーを徹底的に教育した。オリバーはスポンジのようにどんどん吸収し、めきめきと成長した。オリバーは同じ年頃の子供に較べて発育がよく、従順であった。そして父親よりも——実父や祖父よりも頭の回転が早く、聡明であった。殺しのセンスは言わずもがなである。
オリバー・セルヴィッチが成人を迎えるまで——より正確に表現するなら、成人になっただろう西暦を迎えるまで——に、何人の人間を始末したか。祖父は知らない。オリバー自身も知らない。恐らく三桁は超えているかもしれない。が、それは推測の域を出ない。
その頃になると、オリバーは自身の生活に物足りなさを感じていた。
最初は何故そう感じるのか分からなかった。不要な命を刈り取るのは生活の一部となっている。畑に生えた雑草を抜くように。鼻をかんだティッシュをゴミ箱へ捨てるように。当たり前に行う作業だ。不満がなければ満足もない。眠りから醒めて顔を洗い、飯を食って便所に行き、歯を磨いて、ターゲットを始末する。また飯を食って人を殺し、小腹を満たして命を刈って、飯を平らげたら地獄の片道切符を渡して、歯磨きとシャワーを終えたら武器の手入れをして眠る。
平穏で平和な日常。
それの何がいけないのか? どうして物足りないなどと感じるのか?
オリバーは事切れた人間を肉塊にしながら、或いは肉塊を薬品で溶かしながら首を傾げた。
* * *
「それってぇ、『刺激が欲しい』ってことなんじゃない?」
窓が一切ないコンクリート打ちっ放しの室内。照明は天井から吊り下げられた数個の裸電球。コンピュータと冷蔵庫とエアコンの稼働音以外、これといった音がしない無機質な薄暗い空間で、オリバーの友人——ペコは愉しげに笑う。
「刺激って?」
「刺激は刺激だよ」
「刺激」
刺激……内心で繰り返し、ペットボトルの飲み口に唇をつける。
オリバーはペコの拠点にいる。男でも女でもない、さらに言えばペコはペコでありペコ以外の何者でもない。ペコは年齢性別不詳人間なハッカーであり、オリバーの情報屋でもある。名前は勿論、偽名だ。オリバーはペコがヒトであることを知っているが、本名は疎か性別も知らない。コンピューターが得意で、仕事が出来て、奇抜な服装と髪色が趣味で、アイスクリームを愛していることしか知らない。
現に今も『I♡f×××』と書かれたショッキングピンクの大き過ぎるパーカーに蛍光の黄緑色に黒いドットが散りばめられたハーフパンツを履き、ヒョウ柄のデッキシューズの踵を踏んづけた状態で引っ掛け、高価そうなゲーミングチェアにだらしなく坐っている。先週会った時は苺のように真っ赤だった髪色は、紫と白の縦縞模様にカラーリングされている。手には銀製のスプーンと、オリバーが土産に買ってやったファミリーサイズのアイスクリーム(塩キャラメルチョコレート味)。
「オリバーさぁ」大きな一口を掬って頬張り、口から抜いたスプーンを行儀悪く振りながらペコは言う。
「自分でも気付かない間に飽きちゃってんだよ。殺し屋業ってやつを」
「飽きる」
「そ」
「殺しに飽きることなんてあるか?」
「知らん。ペコ、虫以外殺したことないし」
「……ペコはハッキングに飽きたりするのか?」
「しないね!」
そんなんありえねー! と仰け反って叫ぶペコ。
「ペコにとってハッキングは呼吸も同然よ。やらなきゃ死んじゃう」
「俺も同じだ。殺しは呼吸。やらなきゃ死ぬ」
「ほんとに?」
「は?」
「ほんとに呼吸と一緒? オリバーって、じーさんに薦められて殺し屋してんじゃなかったっけ?」
「そうだ」
「じゃあ、じーさんに『殺さなくていい』って言われたら——『呼吸するな』って言われたら、呼吸やめるの」
——オリバーって死ねるの、じーさんの一言で。ころっと。
そこまで従順だなんて知らなかったぁ、ペコりん勉強不足ナリ! と舌を出して巫山戯るペコに、オリバーは思わず舌打ちをした。ぐびぐびとペットボトル内のミネラルウォーターを飲み干し、ぐしゃりと潰す。
「そんなわけないだろ」
「なら一緒じゃないじゃん。呼吸は呼吸。殺しは殺し。やらなくて良くて、且つ飽きてるなら辞めればいいじゃん」
「……そんな簡単に辞められるものではない」
「そうなの?」
「たぶん」
「『たぶん』」
「ペコも知ってるだろ」
と溜息をつき、あ、と口を開ける。ペコは気前よくたっぷりとアイスクリームを掬い、オリバーの口へ入れてやる。
「俺は裏社会で、名も顔も知られている。俺の死を望んでる奴が懸賞金をかけているし、アサシンも送られてくる。俺の命を害するなら迎撃しなきゃならない」
迎撃とはつまり、相手の命を奪うこと。奪われる前に奪う。
「そーね。こないだダークウェブで懸賞金を確認したら一五桁目前だったもんね」
「迎撃しなければ死ぬ。俺は死にたくない。だから、殺す」
「そっか。そういう意味で言えば、呼吸と一緒だわな」
「身を隠す選択肢があるのも、術も知っている。けど、隠れ続けるのは不可能だ。いつかは見つかる」
「それに、暗殺以外でコソコソするのは嫌いだもんね?」
「あぁ。俺は自由でいたい」
「じゃあ一時休業すれば? 休業って言葉が嫌ならぁ……有給休暇? 公休? パンピー社会の言い方は分かんないけど、とにかく休んじゃいなよ。で、好きなことやれば?」
「好きなこと」
「或いは、やってみたいこと? 行きたいとことか。なんかあるでしょ」
「……ある。ペコ、お前のパソコンを使って——」
「それはダメ」
魔改造されたペコリジナルコンピューターでゲーム、もしくはネットサーフィンがしたいという希望は食い気味で却下された。
ので、オリバーはペコの助言に従い、殺し屋業に『臨時休業』の札を下げた。期限は無期限。休業中の生活費を心配する必要はなかった。一生涯では使い切れないほどの額が、ビットコインを始め世界各国の通貨で蓄えられているので。
数多あるセーフハウスのひとつに籠り、思案に暮れる——俺の好きなことは何だろう? やってみたいことは? 行ってみたい場所はあるのか?
これまでの人生で一度も自問したことのない事柄だ。俺は何が好きなのだろう。ペコのパソコンを使ってみる以外に、やりたいことは? 行きたい場所? 仕事で世界中に飛び、色々なものを見た。宇宙には行ったことがない。けど、宇宙に行きたいとは思わない。
パンピー社会の人々は仕事を『臨時休業』したら、何をするのだろう。尽きた食糧を求め、ふらっと街中を歩いてみる……友人で賑やかにする集団……子供を連れた家族……如何にも観光客然としたカップル……新婚旅行らしい浮かれた男女……。オリバーには、どんちゃん騒ぎをするような友人は居ない。家族や恋人も。子供なんて論外だ。まったく参考にならない風景に、オリバーは深い溜息をついた。
因みに、新婚旅行らしき男女は懸賞金目当てのハンターだった。当然、処理した。『臨時休業』とは?
* * *
籠って考えても時間が無益に過ぎるだけ。
取り敢えず、オリバーは旅行に出た。
これまで世界各地の凡ゆる場所に足を踏み入れたけれど『THE 観光地』でのんびり過ごしたり、ガイドブック片手に散策した経験はない。地元料理に舌鼓をうったり、欲望に従った買い食いもしたことがない。旅行資金は、たんまりある。西へ東へ、北へ南へ。地球一周と言わず様々なルートで一〇周したって構わない。
オリバーは旅行を大いに愉しんだ。スフィンクスとピラミッドを見、自由の女神とツーショット写真を撮り、万里の長城に登り、真紅の鳥居が大量に並ぶ神社の不思議な魅力に取り憑かれ、ルーブル美術館を筆頭に数多くの美術館や博物館を巡った。沢山の写真を撮り、その時々に去来した感情を細かく文章に残した。
パエリヤにトムヤムクン、ブイヤベース、ラーメン、寿司、フィッシュ&チップス、タコス、ピッツァ、チョロス、スフォリアテッラ、ザッハトルテ——どれもこれも美味しすぎて、オリバーは幾度か腹を壊し、度々ERの世話になった。入院もした。殺し屋『営業中』の時には擦り傷ひとつ負ったことがないのに……オリバーは少しへこんだ。
なぜ人間には胃袋が一個しかないのか。人体の謎に直面し、真剣に悩みもした。
オリバー・セルヴィッチの転機は、インドと日本に在った。
クミンやカルダモン、シナモン、ジンジャー、唐辛子、ターメリック……何十種類ものスパイスを巧みに配合した香辛料で作られる料理——カレーが、オリバーの人生を変えた。
これほどまでに複雑且つ刺激的でありながら、繊細な味付けは食べたことがない。同じ〈カレー〉属に分類されるにも拘らず、味や香り、辛さ、舌触り、色合いまで異なる。奥深い。実に奥深い。チャパティと呼ばれる平たいパンか、ライスで食べるかを選べるのも面白い。
さらに面白いのは、インドと日本の〈カレー〉が似て非なるものであることだ。
日本のカレーは、とろみが強くドロッとしている。かと思えばインドのカレーよりも水っぽい『スープカレー』なるものがある。やたら大きなジャガイモやら人参やら肉やらがゴロゴロと煮込まれていたり、季節の野菜が使われていたりする。肉も牛肉を入れる地域があれば鶏肉、豚肉を使う地域もある。地域に関係なく家庭によって異なる場合がある。インドほどスパイシーではなく、しかし濃厚で、これが水分の多いモチモチとした日本の米によく合うのだ。日本人の間では『カレーライス』が主流だが他にも『ドライカレー』があり、ライスではなくうどんを使った『カレーうどん』がある。日本国内に点在するカレー専門店では、ソーセージやチーズなどをトッピング出来る。スーパーマーケットやコンビニにはレトルトカレーなるものが販売されており、長期保存が可能な上、いつでも好きな時にカレーライスが食べられる。まるで書籍のようにレトルトカレーが陳列されている棚を見た時、オリバーは
「日本人って面白可笑しい人種だな」
と内心で独り言ちた。カップヌードルならぬカップカレーを目にした時は
「そこまで食べたいか」
と思った。まあ、気持ちは分からなくもないけれど。美味しい料理が短時間で完成し、手軽に食べられるのは嬉しい。
そんなこんながあり、オリバー・セルヴィッチはインドと日本で、カレーの修行をした。
そして、自分の店を持った。
店名は〈Assassin curry〉。なんとも物騒な名前だなぁ、とはペコの言である。分かり易くて良いじゃないか、とオリバーは思うのだが。殺し屋業は未だ『臨時休業』だけれど、足を洗ったわけではないのだし。
殺しの腕前と同じぐらい、オリバーの料理の腕は確かだった。
けれども経営その他諸々に関しては、素人中の素人。ど素人だった。
〈Assassin curry〉は三ヶ月で閉店となった。オリバーが作るカレーに間違いはなかった。カレーの本場であるインドと、日本国内でも指折りな名店で修行を終えたのだ。師匠達はみなオリバーの憶えの良さとセンスを褒め、認めたのだ。免許皆伝の腕前と言ってよい。
では何故、閉店に追い込まれたのか。
経営に失敗した? それもある。が、直接的な原因ではない。
店名が悪かった? 否、そこは逆にウケが良かった。
刺客が引っ切り無しに送られた? 確かに営業時間など関係なく来店したが、全員お帰りいただいた。母なる海と大地に。
閉店の理由。それは、客の感想が全てを物語っている。
「かっっっっっっっっっっら‼︎‼︎」
「何これ辛い‼︎‼︎‼︎」
「かっ、ッ、ゴホゴホゴホッ‼︎‼︎」
「オエッ…………ぐ、ゴホッ」
「辛い辛い辛い辛いッ、水‼︎ みずっ‼︎」
「なんだこれ殺す気⁉︎⁉︎」
オリバーが作るカレーは辛過ぎた。人類には早過ぎる辛さとか、そういう意味ではなくて。生命の危険を感じるレベルで辛かった。中には余りの辛さに救急搬送される人もいた。「カレーに劇物が混入している」と通報され、オリバー・セルヴィッチは人生で初めて警察の御厄介になった。が、多種多様なスパイスは検出されても毒物や薬物の類は一切検出されなかったので、オリバーは「お咎めなし」となった。
物騒な店名と辛過ぎるカレーを聞きつけ、激辛好きの猛者共が訪れた。しかし、誰ひとり完食することは出来ず。みな、オリバーが拵えたカレーを前に膝をつき、味覚を殺された。〈Assassin curry〉は伊達じゃなかった。
恐ろしいのは、オリバー自身が辛味を感じていない点だ。味覚は死んでいないのに。寧ろ、舌は確かなのに。「そんなに辛いか?」と首を傾げるばかりで、故にカレーの味を改めるに至らなかった。
閉店後、オリバーは殺し屋業を再開することはなかった。
なんとなく、ヤル気が起きなかったのだ。
刺客や懸賞金ハンターは飽くことなく命を狙ってくるけれど、彼らの処理は生活の一部から事務作業に格下げされていた。判子を押すように脳天に鉛玉を撃ち込み、郵便物を開封するノリで動脈を切り裂き、書類をシュレッダーする感覚で人体を細切れにする。愉しくもなんともない。感情のひと匙も湧かない平坦なお仕事。自分の中の何かが死滅していくのをオリバーは感じた。
「死にたくない」
ベッドさえ置いていない無機質な空間に、小さな呟きが溶けてゆく。
そう。オリバーは何より死にたくなかった。自由に生きたかった。
オリバー・セルヴィッチは再び、旅行に出た。なんだかんだ言って、世界の名所を気ままに巡り、食べたいものを思う存分食べる生活が一番充実していたと気付いたので。
旅の資金は、まだまだ潤沢にある。オリバーは最新のデジタル一眼レフを購入した。写真に飽きたら独学で絵を学んだ。マイナーな場所にも足を運び、ゲテモノと呼ばれ忌避される料理や食材も喜んで食べ、写真撮影を欠かさず、見て感じたことを事細かく文章化した。
芸術面の才能はぐんぐん伸びた。街角のカフェで——或いは海辺や、山の中腹の開けた場所で——オリバーの絵を覗き見た人は漏れなく「プロの画家だ」と思った。それほどまでに素晴らしい描写だった。
「君の旅行記を出版しないか?」
そうオリバー・セルヴィッチに声を掛けた紳士もまた、彼をプロの絵描きか、或いはプロに相当する人物だと思い込んでいた。
紳士はポール・スミスと名乗った。これまでの人生経験からオリバーは、『ポール・スミス』を偽名だと決めつけていた(偽名としては余りにも在り来たり過ぎるけれど)。が、ポールから名刺を貰い、名刺に印字されたロゴがアメリカの大手出版社だと分かり、ペコに身元照会を頼んだ結果、『ポール・スミス』は偽りでないとの結論に至る。
ポールはオリバーを「世界で最もステーキが旨い店」に招待した。そしてA5ランクの逸品をシェフに振る舞わせ、「どうだろうか」と交渉を開始した。
「君は暗殺者でありながら世界各地を巡り、人の命と引き換えに手にした金で極上の景色とグルメを堪能しているのだろう?」
「んー、まあ」もぐもぐしながら頷くオリバー。「間違っちゃない。旅行を始めてからは完全に収入ゼロだが、これまでの蓄えは人の命の積み重なりで出来ている」
「君には絵の才能がある。控えめに言ってプロ並みだ」
「そうらしい」
「自覚がないのか?」
「比較対象がないんで」
美術館の絵画と較べちゃいかんでしょ、と言うと、ポールは快活に笑って「そりゃそうだ」と頷く。
「プロ並みであることはよ私が保障しよう」と言い、ポールがコーヒーカップに口をつける。「そこで、どうだろう。旅行記を出版してみないか?」
「旅行記」
「そうだ。旅行記だ」
「何故」
「価値があるからだ」
ポールの口角が、にやりと上向いた。そして身振り手振りで説明し始める。
「君の描く絵は素晴らしい。素朴でありながら生き生きとしている。描写力もピカイチだ。噂に聞いたが旅先で日記のようなものも書いているんだろう? 見せたまえ」
差し出したら速攻で奪われ食い入るように読まれた。
「素晴らしい。素晴らしい! これは芸術だ! まさに芸術だ! 世に出し、みなに公表するべきだ! これは金になる! は? 金は興味がない? 馬鹿を言え。この文も絵も、金を取る価値がある。否、金を払う価値があるのだ。金を払ってでも見て、読むべきなのだ‼︎」
オリバーは、ポールの勢いと情熱に負けた。裏社会に居ないタイプでもあった。口がよく回り相手に言葉を挟ませない奴は腐るほどいるが、ポールは、そういう輩とはまるで違う。実直な言葉がオリバーの胸に杭のように刺さった。
気付けば、オリバーの旅行記が出版されていた。著者名は勿論『オリバー・セルヴィッチ』ではないけれど。
オリバーの旅行記は重版され、様々な言語に翻訳され、本屋の最も目立つ位置に陳列された。第二弾、第三弾の契約が申し込まれた。
オリバーは頷いた。何故だか胸が満たされた。この広い地球で、自分の存在が認められた気分になったのだ。オリバーはより一層、愉快な気持ちで旅行を愉んだ。
今この瞬間もオリバー・セルヴィッチは何処かの土地を踏み、素晴らしい景色と文化や歴史その他諸々を吸収し、様々な料理や食材を味わっている。
そして私たちは彼の生き様を、書籍で眼にする。殺し屋業を無期限で『臨時休業』している犯罪者だとは知らないままに。
(終)
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