尾行

ナタリーとダレンはショッピング街に来ていた。


 洋服や鞄などの店が通りに並び、互いの個性を外観やショーウィンドウで宣伝をして、個性の合う客を引き寄せている。

 終始緊張した面持ちのダレンは、ナタリーの後ろを歩きながら、練習するように小声で言葉を呟いてる。


「――ぇ、ねぇ!」


「はいっ!」


 話しかけられているのに気が付いたダレンは、思わず大きな声で返事をする。


 それを少し訝し気な顔で見ながら、ナタリーは話の続きを言う。


「好きな人に告白する時の服装を選んで欲しいんだったよね? どんな服が好みとかある?」


「ええっと、そうだなあ……。服には疎くてあんまりわからないから、良ければ僕に似合いそうな服をナタリーさんの好みで選んで欲しいんだけど、いいかな?」


「それは構わないけど、私の好みだけで選んじゃっていいの?」


「全然大丈夫! 寧ろそうして欲しいです!」


「わかった。じゃあ、まずはあの服屋見てみようか」


 ナタリーの誘導で2人はカジュアル系の服を取り扱う服屋に入って行った。


 その様子を店の外からロボとアーロンが見ている。

 アーロンはナタリーに気付かれない為か、前街に行った時と同じ変装をし、エルフ特有の尖った耳と澄んだ瞳を変え、髪色も茶色に変えていた。

 それでも服装までは変える余裕がなかった為、服装はローブのままで、ロボも首筋の痣を隠す魔法を施しただけだった。


「そもそもナタリーは鼻が利くんだろ? いくら変装しようが意味ないんじゃないか?」


 ロボが純粋な疑問を口にする。


「それは多分大丈夫。ナタリーは人間の見た目になると目からの情報を優先して、あんまり鼻を使わない傾向にあるから。意識しない限り匂いでは気付かれないと思う。ただ、聴覚からの情報は健在だから――」


 その時、店内の服を見ていたナタリーが入り口から出て来て、外を確認した。


「いつもより聴覚は使ってないけど、あんまり近くには行けないし、大きな声では話せないんだ」


 ナタリーの行動に気が付いた2人は慌てて物陰に隠れた。


「というか、ロボはどうして見送りに付いて来たの? 今日は家で魔法の練習をするって言ってなかった?」


 アーロンは首を傾げながら聞く。


「ルイスに頼まれたからだ」


「ルイスに?」


「見送りに行ったあんたが暴走するかもしれないから、自分の代わりに見張ってきてくれってルイスに頼まれた。自分はノアとミアを見てるからってな」


 ロボの言葉にアーロンは複雑そうな顔をする。


「僕の事をよく理解してる、出来た弟子みたいだね」


「本当にな」


 ロボは溜息を吐きながら言う。

 

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