第9話 また、つまらぬフラグをへし折ります。


 あれから数ヶ月が過ぎました。


 最近は、キャスバル様と共にジークフリート王子がいらっしゃいます。

 末の王子で陛下や兄殿下たちからも甘やかされているようで、勉強もせずに入り浸っています。


 もうすぐ、アーレンバッハ学園に入学すると云うのに大丈夫なのでしょうか。

 アーレンバッハ学園は、全寮制の学園で貴族の子息や令嬢、一部の平民が通う学園です。


 高位貴族である、公爵、侯爵、伯爵までは、お付きの者が1人まで連れていくことが、認められています。


 原作小説では、アルフォンス様には、私 シエスタが。

 イライザお嬢様には、パティが付いていくのです。


 そう、学園入学時には、クッキーは追い出された後だったのです。

 追い出されたクッキーは、街を彷徨さまよい歩いている処をにジークフリート王子に助け出され、バーボン伯爵の本家である ウイスキー公爵の養女に成り、アーレンバッハ学園に入学して来るのです。


 もう、何処から突っ込みを入れたら良いか判りませんね。

 テンプレにも程があります。

 だから、底辺作者のルシアンには、一桁しかフォロワーが居ないのですよ。

 …………まあ、その内のひとりが私なのですが。



 話を戻します。

 つまり、今回は追い出された原因である事件を解決することにより、クッキーの追放イベントを へし折ります。


 全ては私の平穏の為に。


 事件のあらましは、バーボン伯爵婦人であるヒルデガルド様の首飾りが紛失する事から始まります。

 原作小説では、アルフォンスやイライザ兄妹がクッキーの仕業だと訴え、それが録に調べられずにクッキーのせいにされて追い出されてしまうのです。

 オスカー伯爵が居れば、展開も違っていたのでしょうが、生憎あいにく、王命で国境付近を視察の為に長期間不在だった為に起こった事件でもあります。


 まあ、これは冤罪えんざいで、単に奥様が金庫にしまったのを忘れていただけなのですが。

 原作小説程、険悪に成っていない今だからこそのチャンスです。



わたくしの大事な首飾りが見当たりませんわ !

 誰か、知っているのなら、今なら許して差し上げますから 名乗り出しなさい ! 」


 奥様が騒ぎだしましたね。

 ろくに探しもせずに人、それも使用人を疑うなんて奥様がと云うより貴族が可笑しいのでしょうね。


 アルフォンス様は当然として、イライザも関係が良く成っているからか、黙っています。


「名乗り出ないなら、使用人部屋を家捜ししてでも…………


 皆まで言わせません、引っ込みが付かなく成りますからね。


「奥様、よろしいでしょうか ? 」


「シエスタなら知っているの、誰が犯人なのか ? 」


 私を信用してくれるのは良いのですが、疑い過ぎですね。


「奥様は、しっかりされている方なので、金庫に仕舞われたのではないでしょうか ?

 お忙しいので忘れてしまったのでは無いでしょうか 」


 私の進言により、奥様が調べた結果、無事に首飾りが見つかりました。


 これにより奥様からも使用人仲間からも信頼が増えたような気がします。

 無事に追放イベントをへし折ったので、クッキーが追い出されるイベントも起こらないはずです。


 今度こそ、めでたし、めでたし です。



 そんな時に突然にオスカー伯爵が帰って来ました。


「喜べ、クッキー !

 本家のウイスキー公爵が、お前をにしてくださるそうだ ! 」



 …………私、この世界は嫌いです。

 やはり、原作作者ルシアン と 女神は殴らなくては気がすみません !

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