第3話 社畜魔王の規格外ダンジョン攻略
我はモンスターの大群の中で剣振るう。
密集しているお陰で何体か巻き込無事が出来た。
剣も強化したためしっかりとモンスターを斬ることが出来ている。
《いや誰だよ。剣の方が良いとか言った奴》
《完全に近接無双してるww》
《これで少々教えてもらったか……》
《俺探索者なんだけどさ、鉄の剣であんな事絶対にできないからな?》
《まさかの本業からのお墨付きww》
《社畜魔王最強!!》
《今確認したら、社畜魔王がツイッターのトレンド2位になってるww》
《ホントだww》
《まぁ今社畜魔王ってランク改変のダンジョンに入っている唯一の探索者らしいからな》
「ふん!!」
我はなるべく素材を傷付けないように、一刀のもとに斬り伏せる。
内蔵に関しては諦めるとしよう。
それにしても我も弱くなったな……。
前世の我ならこの程度の雑魚など剣を使っても一瞬で消し飛ばせていたと言うのに。
これからはダンジョン配信者となったのだから、また1から体を鍛え直さないとな。
我はそう強く決意し、修行の一環として全方位から襲いかかってくるモンスターの攻撃をすべて避ける。
《うわースゲー》
《何だよあの動き……背中に目が付いてるどころじゃないだろ》
《正しく超人の域ですな》
《社畜魔王最強!!》
《でもそう言えばこの映像ってどうやって動いてるんだ?》
《確かに》
《手ブレとか無いのに映像がめちゃくちゃ良い所に来るよな》
《多分今までのダンジョン配信者の中でダントツ見やすい》
《何か臨場感あるよな》
《ってそんな事言ってる内に終わったぞ》
「ふぅ……久し振りの戦闘に血が騒いでしまったな。我は戦闘狂では無いつもりだったのだが」
周りに折り重なるようにして積み上げられたモンスターの死体を見ながら呟く。
17年間は一度も戦闘はしていなかったこともあり、恥ずかしくも興奮してしまった。
「まぁそれは後で反省するとしよう。今は……」
我はタブレットに目を向ける。
そこには先程よりも更に速い速度でコメントが表示されていた。
《お、やっとこっち見たぞ》
《お疲れ様!!》
《おつかれ〜》
《凄かったぞ!》
《もうF級なんて辞めろよ》
《これからはS級探索者を名乗って良い気がする》
《俺は一回S級の戦闘見たことあるけど、それに劣らない戦闘だった》
《また本業からのお墨付きいただきましたー!》
《お疲れ様でした!!》
「うむ、皆ありがとう。どうだ? 我の剣の腕は」
《いや普通に化け物級ですわ》
《あれはおかしい》
《一回剣を振っただけでモンスターが何体も死ぬとかありえんぞww》
《探索者の全員があれだとは思わないで欲しい》
《社畜魔王様は普通に強すぎ》
「まぁ我は元魔王であるからな! だがやはり魔王の頃よりも身体スペックは下がっているな」
今の体では全盛期の5割出せるかどうか。
魔術は問題ないのだがな。
《これで弱体化状態はおかしいww》
《魔王って凄いんだな……》
《異世界強者多すぎww》
《そう言えば同接20000人突破おめでとう!!》
《もうそんなに行ってんのか!?》
《さすまおって奴だな!!》
《おめでとう》
《おめでとう》
「おお……こんなにも我の配信に集まってくれているとは……我感動」
正直始めは100人超えたら超ラッキーと思っていたので、此処まで増えるのは予想外だった。
ランク改変に感謝せねばな。
だが、そろそろダンジョンを攻略しなければ。
「これからは少しペースアップしてダンジョンを攻略するぞ」
《そう言えば今何階層なんだ?》
《5階層くらい?》
《7じゃね?》
《7だろ》
「今は7階層だから……後38層である」
結構進んだと思っていたが、まだそれだけしか行ってなかったのか。
……よし、ここは1つ大きな目標を立てよう。
「皆の者、今から我が宣言する! ――45階層のボス部屋まで1時間で行ってみせよう」
《うおおおお!!》
《目標高っ!?》
《まだ7階層で30分経ってるんだぞ!?》
《流石にそれは無理なんじゃ……》
「リスナーよ。我を誰だと思っている? 我は異世界の魔王であるぞ!! その程度楽勝だ!!」
《言い切りやがったww》
《俺は信じてるぞ社畜魔王!!》
《頑張れ社畜魔王!!》
《これから目まぐるしくなる予感》
「楽しみにしていてくれ。では―――ゆくぞ!!」
我はそう言うと同時に全力で地面を蹴る。
その瞬間に景色がスクロールの様に一瞬にして通り過ぎていく。
うむ、これはこれで悪くない。
配信ではあまりやらない方が良いかもしれんが。
《いや速すぎな》
《目まぐるしくとは言ったけど、此処までとは言われてない》
《チーターより速いだろ絶対ww》
《それについていける画面最強》
《確かにww》
《それなww》
***
――第35階層――
我はあれから道を遮るモンスターを視界に収まった瞬間に魔術で殺しながら順調に進んでいたのだが……
「……何だこのモンスターは?」
我は目の前の湖の様な所から現れた巨大な大蛇の様な龍の様なモンスターを見上げて声を漏らす。
30階層からこう言ったダンジョンの中だと言うのに外の自然と何ら変わりない光景が続いていた。
因みに今回の階は、森林の中の開けた場所にある巨大な湖と言った感じだった。
そして我が湖に近付くと、突然モンスターが現れたというわけだ。
まぁ既にモンスターがいることは知っていたから別に驚きはしないが。
《うわっマジかよ》
《シーサーペントじゃん》
《初のB級モンスターだな》
《と言うかシーサーペントって海のダンジョンにしかいないはずだよな?》
《それは俺も思った》
《湖に居るなんて初》
「ふむ……此奴はシーサーペントと言うのか。まぁ図体がデカいだけの雑魚であるな」
図体がデカいというのは意外と弱点が多いからな。
このモンスターは予測だが、10メートル以上は確実にある。
湖から完全に姿を表していないのでなんとも言えないが。
しかし――我からしてみればただの大きな的と変わりない。
《B級を雑魚とか普通言えんぞww》
《ベテランでも余裕で死ぬぞB級は》
《A級でも下手したら死ぬ》
《まぁ社畜魔王は強いから》
《異世界ではこれくらいのモンスターがうじゃうじゃいそう》
「我の居た世界では、この程度なら中堅の冒険者がテイム出来るな」
何ならコイツよりも強い奴を何体もテイムする人間を知っている。
我的にはあの人間は嫌いだったが、そこそこ強かった。
《やっぱり異次元ww》
《異世界の人たち来たら皆英雄だな》
《何人か来てほしいよな》
《現在15分経過しましたよ社畜魔王様!!》
《いや18階層を15分とかもはやバグ》
「意外と時間を使っていたのだな。なら直ぐにこのデカブツを倒して先に進むとしよう」
我は小声で詠唱を始める。
この技は少々強力な魔術なので、我でも多少の詠唱が必要になってくる。
「昔ならこの程度の魔術など無詠唱でもいけたのだが……《我が眼前の敵を殲滅せよ――【召喚】》」
地下に進んでいるはずなのに永遠と広がる青空に、シーサーペントよりも遥に大きな赤く輝く魔術陣が展開される。
その魔術陣には我の1割程の魔力が込められているため、魔術陣はバチバチと音を立てて火花を散らしている。
《何だこの魔術!?》
《今までとは比べ物にならん大きさだぞ!?》
《何が始まるんだ!?(ワクワク)》
コメント欄もこれから何が起こるか興味津々なようだ。
そしてシーサーペントもこれ程の莫大な魔力の攻撃はヤバいと思ったのか、急いで大元である我を攻撃しようと口に魔力を溜める。
流石に我には全く届かないものの、相当な魔力が篭った水のブレスみたいなものを発射してきた。
「グルアアア!!」
「五月蝿いぞ蛇。【魔防結界】」
我はシーサーペントのブレスを結界魔術で受け止める。
思った以上に弱かったお陰で通常の結界で済んだ。
我が少しホッとしていると、遂に極大魔術が完成した。
頭上の魔術陣が一際強く火花をちらしたかと思うと、直径何百メートルもありそうな隕石が現れる。
そしてそれは激しく燃えながらゆっくりと地上に向かって落ちていく。
「堕ちろ――【
《おおおおおお!!》
《めちゃくちゃデケェええ!!》
《空が燃えてるよ……》
《ヤベェ……》
《語彙力低下ww》
《皆唖然としてるぞ絶対ww まぁ俺もだけど》
《シーサーペントもめちゃくちゃな攻撃してる》
《自暴自棄になったんだろww》
《B級モンスターが自暴自棄ww》
コメント欄でも言われているが、シーサーペントは我武者羅に隕石に向かってブレスを吐いている。
だが当たると同時に蒸発してしまうため、隕石は全く減衰することなく、シーサーペントを呑み込んで地面に激突した。
ズガアアアアアアアアアアアアアアアンッッ!!
その瞬間に体全体を震わせるような激突音が響き渡り、辺りを爆風と地震が襲った。
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