東北トロピカル因習アイランド

バイオヌートリア

なんで東北にトロピカル

「え?佐渡島潜入調査?朱鷺でも視察するんですか?」

「そうではない。君には佐渡島の地下深くに存在すると言われる"東北の"因習村、通称サドヶ島ハワイアンアイランドへの潜入を試みてもらう。」

どうしよう、何一つ言葉が理解できない。

佐渡島の地下?因習村?ハワイアンアイランド?ラリってんのかこの上司は。

「スミマセン、何一つ理解できないので詳しく説明をお願いします。」

「言った通りだ。佐渡島の地下に降りてサドヶ島を調査するのが君の役目だ。詳しくはブリーフィング資料を確認してくれ。」

仕方なく資料に目を落とす。

半年前、16年から失踪していた窃盗犯のヤスが佐渡島で見付かった。

事件は時効を迎えては居たが、ほぼ半裸でしかも全身に水泡や鞭で打たれた跡がある状態で保護されたため警察による聴取が行われた。

「あのままだと死んでいた。あの場所にいたら『てんあげ様』の供物にされていた。」

その場所と言うのが佐渡島の地下空間だと言う。

「ヤク中毒の戯れ言で調査ですか……。」

「毛髪検査でもヤクは出なかった。男が言うには佐渡島で年に1回神隠しが発生し、その神隠しがサドヶ島へ行くチャンスだとな。前回の事件から丁度一年にあたるのが今月。平和な島に良からぬものがあるかもしれんのだ。ひとつ調査よろしくな。」

と、言うわけで佐渡島へやって来た。

聞き込みをして分かったのは、北の海岸の私有地には近づくな、あそこにはパリピが居ると言うことだけだ。

「あからさまにソコやん……。」

北の海岸に侵入しぶらぶら散策していると怪しげな洞窟を見つけた。

ようこそサドヶ島ハワイアンアイランド。

何だこのバブル時代の遺産みたいなゴテゴテの看板は。しかし、ダサダサで派手っ派手な看板は手入れはされているようで朽ちてはいなかった。

(まるでここだけ歌舞伎町だな)

「この先がパリピの楽園、サドヶ島ハワイアンアイランドっす。」

(ヤバイ、人が来る……)

とっさに俺は身を隠すと、声のした方に目をやる。

明らかにチャラそうなパリピが数人看板をくぐり中に吸い込まれた。

今しかない……俺はこっそり後を追った。

警備も見張りもなく地下へ地下へと降りていく。

「こっからはこれで降りるっす。」

中にケーブルカーの駅があった。無線でケーブルカーを呼んだようだ。

ケーブルカーが動き出すまでの間に、持参したパリピセットで変装し列に潜り込む。点呼もされないし割とザルだった。

道中島の説明をされる。波の力で発電するぱりぴ様、地熱発電のてんあげ様、クラブのぶちあげ様……その他色々あって退屈はしないらしい。

「あ、ネットには書かんで下さいね。人が増えると酒足んないんで。あんまりたくさんはいれてねーんすよ。」

だそうだ。スマンな……勝手についてきて。

そうこうしているとサドヶ島ハワイアンアイランドに着いた。

「まるで歌舞伎町だな……。」

「向こうにはワイキキ風ビーチもあるッスヨ」

訂正、ここは南国風ごちゃ混ぜ空間だ。

至れり尽くせりのレジャー施設である。地熱のお陰か冬でも25度はあるようで少し蒸し暑い。島の中央にそびえるガラスの棟みたいなものが地熱発電のてんあげ様の熱を逃がす煙突でもあるそうだ。

地下の割に電飾で常に明るく、そこかしこに人が居る。一区画暗めの場所が寝るとこらしい。

ここの調査か……骨が折れるな。

「あ、ちなみに中の施設利用は基本無料なんで、シクヨロ。」

「神かよ。」

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