帰路

 防人さきもり島からの帰路のこと。


 オレとハナコは行きと同じ漁船に乗り、出航を待っていたのだが――行きの重苦しい空気とは裏腹に、甲板の上は騒がしかった。


「なんなんですかあの島!

 ってなんです?

 気ぃ狂ってんじゃないですか!!?」


 のが嘘のように、ハナコは饒舌じょうぜつになっていた。

 それもそのはずだ。

 

 オレの故郷――防人さきもり島。

 その実態が、という、どこに出しても恥ずかしくない王道ど真ん中ストロングスタイル因習アイランドとは話してなかったもんなぁ、オレ。


「まぁまぁ。落ち着けよ」


 オレはハナコをなだめるように頭を撫でようとするが、彼女は素早いスピードでそれを回避すると「っていうかそれ! 付き合ってもいない男が頭を撫でようとしないでください! セクハラで訴えて示談に持ち込んで賠償金をせしめますよ!」と叫んだ。

 ついでに頭を振るたびに、ハナコの特徴的なポニーテールのがふるふると振られている。


 なんかハナコの方から犬に寄せてきてないか、これ?


 ハナコはオレの後輩の女性警察官である。

 今後はオレと一緒に防人さきもり島係になるということで、訓練がてら連れてきたのだが――なかなかハードな洗礼になってしまったようで。


 あんな島は本当なら出身者のオレだけで担当するべきなんだが、二人組ツーマンセルが警察官の原則なのでね。

 それに一応、「港から正式に入ってきた余所者よそものは食べない」という掟もあるから、安全だとはわかっていたのだが。

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