この島、✕✕✕✕✕通用せず
秋野てくと
警告
季節は夏、真っ盛り!
雪女でも助走つけて裸足で走り回りそうなカンカン照りの真夏日のこと。
オレは一隻の漁船に乗り込み、故郷である
名前の通り――さきもり、ってのは教科書でも習ったはずだ――大昔、この島は唐の侵略から九州一帯の沿岸を守るために使われていたそうだ。
人口は約200人、面積はおよそ14.6キロ平方メートル。
住民みんなが知り合いの、小さな島さ。
これといった名産品もなく、誇れるものといったら豊かな自然くらいだな。
浜辺に並ぶのはサルビア、はまゆう、ハイビスカスの花々。
シュノーケリングをしてみれば、サンゴ礁なんかも綺麗なもんなんだぜ?
なにせ観光地化してないもんだから、タチの悪いツアー客の手が入ったりしてないからな。
まぁ、観光地化なんて出来るはずもないんだが……と、オレが故郷に思いを馳せていたちょうどその時。
ぐわん、と漁船が揺れて、波しぶきが甲板に入り込んだ。
その勢いで足元に海水がかかり、靴下までぐっしょりと濡れてしまう。
「荒い運転だなぁ! ったく。しっかりしてくれよ」
「す、すみませぇん!」
どうやら、漁船の船長が舵取りを誤ったようだった。
オレは進路の方に目をやり、ああ――と、納得した。
視界の先にあったのは、まもなく到着するこの島で唯一の港。
そこにあったものを見て、オレはこう思った――
「いくら仕事とはいえ、あれを目にしてもヘーキでいるのには、少々『慣れ』が必要になるわなぁ」と。
ギンッギラに輝く南方の太陽の下で、
この上なくトロピカルで賑やかな配色のペンキで、こう記してあったのだから。
「防人島へようこそ」
「この先、日本国憲法通用せず」――と。
おっと、オレの相棒はどうしてるかな。
ふと視線を下げると、隣にいたハナコは立て看板を睨みながら唸っていた。
よしよし、とハナコの頭をなでる。
ハナコは嫌そうに首を傾けて、ブンブンと尻尾を振った。
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