ゼロから始める農業生活 (2)
さて、前回からの続きですが、倉庫&作業場の建設中止と、補助金停止のダブルパンチを食らい、もれなく破産の二文字が飛び交うこととなったのです。
当然、こちらも食い下がりますが、意見や見解の相違により、堂々巡りの状態です。
役人「補助金止めます」
自分「止める理由は?」
役人「補助金を利用して購入する物品並びに機械類の保管場所がないからです」
自分「では、倉庫の建築許可をください」
役人「ダメです。許可できません」
自分「では、このまま補助金なしで営農しろと?」
役人「そうなります」
自分「補助金で移住者募っておいて、いざ補助金使う時になって補助金出さないってどういうこと?」
役人「とにかく出せません」
とまあ、こういうやり取りがあったわけですよ。
そして、これすら超える、自分の農業生活の中で一番驚き呆れる言葉が飛び出しました。
役人「そもそも、農業するのに倉庫っているんですか?」
これである。倉庫がないから補助金出せないと言っておきながら、あろうことか、倉庫の意味すら理解していないという爆弾発言。
嘘だろ!? と読者は思われるかもしれませんが、これが現実! 役人は本当に自分の頭で考えることをしない人種だと、これでもかというほど思い知らされました。
では、なぜ、このようなバカバカしい状況になったのかというと、意外過ぎる話。すなわち、農地に倉庫を建てたことがなかったのである。
役所というのは、徹底した前例踏襲主義であり、以前にやったことのあることしか知らないし、データの蓄積もありません。自分達で思考するというのが、とにかく苦手な連中ばかりです。
挙げ句に頻繁な人事異動で、ノウハウが寸断されることすらままあることで、それが今回、がっつり出てしまったわけです。
実際、農地転用に詳しい人はいました。自分が親方農家に実地研修する前の担当者で、その方は農地転用のノウハウを持っていましたし、自分も色々やり取りしていました。土地と倉庫、作業場の必要性は良く知っていました。
ところが、土地の選定をやっている少し前に急な異動となり、あまりに急すぎて引継ぎが不十分であったようで、そこで農地転用のノウハウを知る人間がいなくなってしまったのです。
そして、前例踏襲において、以前にやったことがないという状況は、上からの明確な指示でもない限りは動かないし、考えることすらしないということでもあります。
そして、倉庫を持つことの意味も理解せず、その重要性も認識せずに、とにかく倉庫を用意しろ、用地は自分でどうにかしろ、というわけです。
不運なことに、それまでも移住者がいて、農業を始めた人もいましたが、その人達は引退した農家のお下がり倉庫があったり、あるいはなんらかの空き物件があって、うまくそこに入りこめた人ばかりであったのです。
一方、自分の場合は空き物件がなく、“イチからではなく、ゼロから始める”ことを余儀なくされ、土地探しに初手から奔走させられたわけです。
そして、どうにか用地を見つけて、現地を案内して確認を取っても、その確認とやらがいい加減過ぎて、大ポカをやらかしてしまったのです。
他部署との情報共有と連携が不十分で、動き出していたプロジェクトが止まった瞬間でした。
しかも、自分達は知らぬ存ぜぬでだんまりを決め込み、こっちに負債を実質押し付ける形になってしまったのです。
さすがの自分もこれにはブチギレ。使いたくなかった最終手段に訴えることにしました。
はっきり言って、役人連中に対しては怒り心頭で、奴らがどうなろうが知ったことではないと、本気で考えていました。
なにしろ、こっちも破産の時限爆弾を抱えさせられ、それが単純な伝達ミスで、しかもそれが発覚すると知らぬ存ぜぬで通そうとしたんですから、当然と言えば当然です。
では、何をしたかと言うとこうです。
自分「先生、よろしくお願いします!」
先生「うむ」
なんか時代劇の一幕みたいですよね。そう、これをやったんです。
先生、すなわち、“議員”に陳情したわけです。
詰んだ盤面を議員先生がどうひっくり返したのか。それは次回を待ってね♪
~ 次回に続く ~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます