40歳、白ねぎ農家です。
夢神 蒼茫
序文
どうも皆さん、こんにちは。
初めましての方は、初めまして。拙い文章の自作小説をご覧になってくださっている方は、いつもご贔屓にしていただいて感謝の言葉もございません。
当方、
趣味として、物書きの真似事なんぞやらしてもらっているわけですが、本職は農家でございます。
作っている品目は『白ねぎ』。これを周年で作っております。
ちなみに、元は大阪、京都で調理師なんぞをやっておりましたが、いわゆる“脱サラ”をして農業を始め、農家にクラスチェンジしたというわけでございます。
農家になって五年目。正確には、丸四年と半年が経過した今日この頃、これまでの農家としての歩みや体験談、一年の動きなんぞをまとめてみて、それをエッセイとして書き綴ったのが本作でございます。
農業に興味のある方、あるいは脱サラ農家を目指されている方、いるかどうかは定かではありませんが、
***
ざっくりではございますが、まずは皆さんも馴染み深い野菜であろう、『ねぎ』についてお話いたしましょうか。
ねぎといえば、『長ねぎ』もしくは『玉ねぎ』を思い浮かべることでしょう。どちらもかつては同じユリ科の植物に分類されており、現在はヒガンバナ科ネギ属となっております。
長ねぎ、玉ねぎ、共に中央アジアもしくは中国西部が原産とされ、そこから日本に渡ってきました。
そのうち、『長ねぎ』は『青ねぎ』と『白ねぎ』に分類されています。
なお、西日本においては『青ねぎ』が主流であり、東日本では『白ねぎ』が主流となっています。
これは主にそれぞれの気候が原因になっています。
ねぎの原産地はもともと中国の西部と考えられており、寒冷な気候である華北や東北部では白い部分が多い『太ねぎ』が作られ、温暖な気候の華南や華中では緑の部分が多い『葉ねぎ』、双方にまたがる中間部分では両方の性質を兼ね備えた『中間種』が栽培されていました。
それが奈良時代ごろから日本に順次伝来し、やがて、寒冷な北日本に『太ねぎ』が『加賀群(白ねぎ)』として栽培されるようになり、逆に温暖な西日本においては『葉ねぎ』が『九条群(青ねぎ)』として栽培され、その中間の東日本に『中間種』が『千住群(白ねぎ)』として広がったと考えられています。
つまり、かつての伝播経路は気候によって決し、それがそのまま現在の各種ねぎの地域分布の骨格になったというわけです。
可食部はどちらも葉部ですが、ねぎは本体の大部分が葉部なのです。下の方についている固い部分が根部と茎部であり、白い部分も葉部なのです。白いのは土に埋まって光合成ができず、葉緑素がない状態であり、白であっても葉部なのです。
これは結構、勘違いされている方も多いですね。
薬味や各種料理に使われ、白も青もどちらも用途の広い野菜ですが、その効用には大きな違いがります。
それは『薬効の白』と『栄養の青』ということです。
『白ねぎ』は硫化アリルという成分を多く含んでおり、あのねぎ独特の匂いや辛みの元になっています。
この硫化アリルは非常に強力で、血液凝固の抑制、抗菌作用、抗酸化性、消化や吸収の促進、解毒の補助、血中コレステロール低下など、数々の薬効が存在します。
昔、民間療法において「風邪を引いたら焼いた白ネギを首に巻け」などというものがありましたが、これは気化した硫化アリルを吸わせるためであり、科学的根拠のない時代においても、白ネギがそういう薬効を持っていると経験則から学び取っていたのでしょう。
ちなみに、硫化アリルには催涙効果もあり、これが目や鼻の粘膜を刺激して、涙がボロボロ出てくるようになります。玉ねぎにも同様の成分が含まれています。
また、加熱すると甘み成分が増し、鍋や炒め物に適しているのはそのためです。
一方の『青ねぎ』は日に当てない白ネギとは打って変わって、太陽光線をガンガン当てることによって青くなるため、非常に高い栄養価を内に溜め込んでいます。
各種ビタミンに加え、カルシウムも多く含んでおり、白ネギほど癖もなく、彩りも鮮やかな緑であるため、薬味に使われます。
大阪住まいの長かった自分には、粉物にドサッと青ねぎが入っているイメージで、今はそれが白ネギに取って代わられております。
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白も青も、どちらもそれぞれ魅力的であり、双方捨て難い特色があります。
皆さんは、どちらのねぎがお好みでしょうか?
と言いつつも、これからは自分が育て、出荷している『白ねぎ』のお話をしていくことにいたしましょう。
白ねぎ栽培の一年の動きを語り、それからこれまで農家に転じて経験してきた数々の出来事を、面白おかしく語っていきたいと思います。
お時間がございましたら、このまま次なる章へと進み、華麗なるネギネギワールドをお楽しみいただけると幸いでございます。
~ 1月に続く ~
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