神っちだお(σ*´∀`)2
気になりドアに近寄ると「ちょ、ちょ、ちょ……なんでもないって」と慌てた様子で開けられないよう邪魔する。
聞くよりも見た方が早いか、とアプリに目を向けると川上のページに殺害予告と心無い言葉が何個も刻まれていた。
〔闇映え マイページ
黒神白神死神@神っちだお〕
【
『可愛い子ぶるな、気持ち悪い。此処は殺しアプリ。今ゲーム中なのに意味ない書き込みばかりしてさ。お前、一応キラー対象だよね? 立場分かってる。脳みそありますか』
|
【No.NAME1282】
『そんなキャラだから嫌われてんだろ。表でも見かけたけどさ。写真も何もろくに投稿しないで口ばっか。早く消えろ。ぶりっこ』
|
【No.NAME37564】
『コイツ調べようとしても誰かがブロックしてやがる。あん? 噂の新人と仲いいとか。じゃ、そっちに聞くわ』
└No.NAME3642"9 その他一括
【トレイ@自警団】
『煩い黙れ、
└【No.NAME1282】
『はぁ?』
|
No.NAME3642"9 その他一括
【トレイ@自警団】
『怖いからって名前を隠して書くな。根性なし。殺し専門なら堂々と書いて殺されなさい。見苦しい、何も出来ない犬が。丁度いい退屈してたんですよ。上司の愚痴やら文句やら貴方達で殺らせていただきます』
|
【カルマ@(怒)】
『加勢するよ、トレイ』
|
全て数日前のやり取り。上川は言動や言葉から
――原因はこれか。
「なるほど」
上川に画面を見せると「あー!!」と声をあげ顔を覆う。指の間から俺を見つめ、目があった瞬間閉ざす。
「神っち。いえ、上川くん。これはどう言うことかな?」
軽く壁に突き飛ばし、逃げようと体を捻る彼の顔の横に思いっきり手をつく。バンッと殴ったような鈍い音に青ざめ、逃がさないよう優しく胸ぐらを掴む。
「ゲームって? 俺やったばかりで分からないんですけど。てか、書き込み何。何で俺まで巻き込まれてんの?
身長178の俺より少し低い上川。問い詰めようと顔を近づけたら額と額が軽く当たる。
「チミって何。か、顔近いし……」
「どうでもいい」
少し間を置き、やっと口を開く。
「今、殺しの祭典やってて誰かを殺して写真撮んないと消される。しかも、ランキングあって最下位撮ったら首飛ぶのもだけど、何よりも俺が『殺し』と『情報提供』どっちもやってたらヘイトが付いて……。一人じゃキツいというか、なんというか。その、お前興味ありそうだし……えへっ」
舌を出し、可愛い子ぶる上川の腹に無言で膝蹴り入れる。
「写真欲しいんでしょ。嫁を撮ったあの写真。じゃなきゃ、表でも裏でも口答で言うはずがない」
俺の肩に顔を乗せ、痛みに負けじとハハッと弱々しい声。仕方ない、とスマホを上川のズボンに突っ込む。
「へっ?」
「これで帳消し。チミ、ベーコンレタスとか平気ですか」
「だから、チミってなんだよ!!」
「へぇ~知らないんすね。社内で女子がカップリング考えてるらしいです。俺と
廊下から微かに殺気放つ人の気配。ざわついているのか話し声が聞こえる。「お引き取りください」「警察呼びますよ」。多分、上川を追っていた人だろう。
「すみませんね」
思いっきり腕を引っ張り、抱き寄せると唇が触れるか触れないかの距離で止める。バンッと乱暴に蹴り開けられたドア。目を向けると男が三人。二十歳前後だろうか。若々しく幼い。
「何か?」
ソッと上川のジャケットに手を忍ばせ、ショルダーホルスターに入れていたハンドガンに手を伸ばす。普通の記者なら持つはずがない護身用。銃刀法で禁止されている分、手にするには難しいのに妙だ。しかも、少し軽い。
「(小声)なんで知ってんだよ」
「(小声)見えた」
「(小声)はぁ!?」
「(小声)少し借りる」
聞こえぬよう小声で言い、引き抜く。
「すみません、何か悪いことでもしましたかね。俺じゃなくて
言うや否や咄嗟に銃を向け、引き金を引くと安っぽい音。パンッと音を立て出たのはBB弾。トイガンだった。コツンっと情けない音を立て男の頭に当たる。白ける室内。冷たい視線。上川は必死に笑いを堪え、俺は呆れ言葉も出ない。
「イッテェな!! 何すんだよ、おっさん」
――おっさん。いや、まだ壮年。
ズガズカと中に入り、俺を押し退け上川を見ては「逹か」と言われ首を横に振る。そんな、と絶望した顔に俺は笑みを浮かべ、一瞬渡したスマホに目をやったその時――彼は俺にスマホを投げ、俺はスマホを受け取ると素早く画面に触れた。
――ねぇ、あの人の家行ったの? これ、あの人の家の写真、だよね。
――家? なんのことかな、俺は知らないよ。
――しらばっくれないで。こんなの脅迫だわ。
――脅迫。悪いのはそっちでしょう。俺が大人にしては稼ぎも少ない、役にも立たないけど頑張ってはいる。でも、君の理想ではないみたいだ。
――お願いだからやめて。こんなのおかしいわ。
――おかしい? (嗤って)それは貴方でしょう。
視界が真っ暗になったとき、亡き嫁とのやり取りを思い出す。擦れ違い言葉さえ交わさなかったが珍しく喧嘩した。あの時に……。
ジリリと鳴り響く不快な
「朔也、お前……」
「自警団より悪質ですかね、これ」
「いや、これ最高。さすが嫁殺しの
笑顔でグッと親指を立てる。
最悪なことを想定して解析するふりして建物の警備を全てハッキングした。システム、構造、客。あくまでも趣味程度だが驚かせることはできる。いや、もっと時間があれば男らのスマホもハッキング出来たはずだが、そこまで至らなかった。
――撤退するか。
上川にトイガンを投げ返し、デスクに置いていたパソコンをビジネスバックに詰め込む。丁寧にタオルで指紋を拭き取り、肩にかけると飛び付かれ危うく倒れそうになる。
「サンキュー、
背中を叩かれ、ギャンギャン子犬のように鳴く。非常に煩いが悪い気はしない。肘で脇を殴ると、よろけた上川の腕を掴み場に合わせたように焦ったふりして外へ出た。
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