神っちだお(σ*´∀`)1
記事を無視して神っちが俺に直接コメントを送ってくる。不要な用件なら無視してやろうかと見たが意味深な言葉。
【黒神白神死神@神っちだお(σ*´∀`)】
『だおだお~♪非公開にしてるから安心して聞いてね。ねぇねぇ(n‘∀‘)η俺ね、
てっきり神っちは女かと思っていたが『俺』とあって逆だと悟る。キャラを作っているのもあり得るが違う気がした。言われるがまま振り向くもあるのは木。スマホに目を向ける。
【黒神白神死神@神っちだお(σ*´∀`)】
『やだ~(*ノ▽ノ)振り向いた。かわいぃww正面向いて』
と、言われ前を向くも誰もいやしない。
└【
『すみません。遊びならお引き取りください。』
└【黒神白神死神@神っちだお(σ*´∀`)】
『えー(・ε・`o)ヤダヤダ。神っち、
読み進めると可愛げがなく、名前を当てられ、見られてる――とストーカー気質な文に言葉を失う。影が掛かり、少し目を前にやると足。
「朔也」
聞き慣れた声。顔を上げると上川の姿。
「これで思う存分撮れるんじゃない? お前の作品もっと俺らに見せてよ」
逆光で表情は見えない。整っていたブルーのYシャツ、グレーのジャケットは乱れ、汚れたネイビーのパンツ。「何処かいった?」と話しかけると歯を見せ静かに笑った。
――取材だよ。
上川はそう言うが違う。取材でそんなに乱れるはずがない。「神っち」とわざとらしく呼ぶと「だお」といい歳した
キャラ作りも大概にしろ、その意味を込めて俺は上川の足を蹴った。
「あはー。バレちゃった。で、あと何回更新すんの? 手が空いたら情報集め手伝ってよ。ハッキング、ピッキング、尾行とか得意でしょ。俺知ってるよ、嫁さんの浮気相手を探って、自警団並みにヤバイことしてたの」
上川の言葉にやった覚えはなく、頭がボーッとし目を閉じる。
「覚えてない?」
頷く。
「嫁さん、殺したの朔也だよね」
そう言われ、一瞬記憶がフラッシュバック。嫁のことはハッキリしないが男にナイフを振り下ろしたのは思い出す。馬乗りになり、何度も刺したがあの時の感情は『怒り』よりも『写真』のインシュピレーションが湧き、それどころじゃなかった。
温かい血を浴びたのが気持ち良く、殺したと言う罪悪感もない。動物の死体に飽き飽きしていたから爆発したんだと。
「どうかな、うまく思い出せない」
静かに目を開け、軽く嗤って当たり前のように嘘をつく。すると、上川は隣に腰かけ声を落としながら言う。
「お前、我に返って泣き出して警察呼んで被害者ぶってたろ。全ては浮気男が悪い。お前は正当防衛とかになったけど、あれはヤバかったって」
誰にも話していない真実。顔色一つ変えぬ俺に上川の顔が強ばる。周囲の音が珍しく耳に入らない。走行音も宣伝も全て。
「おかしいな。誰にもいってないのに」
苛立ちタバコを咥え、ライターで火を付け煙を吐く。善人ぶるのに酷く疲れた俺は見えない仮面を外した。
「いつから見てた。ストーカー」
「えっ、ストーカー? なにそれ、笑わせないでよ」
社内では黙っているが、こう見えて上川とはビジネスパートナー。写真の貸し借りが多く何かと『代』が溜まってる。
知らん顔の上川に腹が立つ。感情を読み取られないよう口元を隠しながら咥え、タバコの煙を顔面に吹き掛ける。だが、慣れているのか上川はニコッと笑った。
「小春に色目使ってんの誰だよ。確かにお前は歳に反して若々しいし、ダンディーなところもあるけどさ。俺の何処がいけない訳?」
小春、小春、と煩い。上川は彼女に思いを寄せているらしく、俺は何も思ってないが彼女のこととなれば狂犬のように噛み付く。
俺の指からタバコを抜き、咥え、吐きかけられる。手で仰ぎ、口論が激しくなる前に「分からず屋ですみませんね」とスコーンの紙袋を渡す。嫌そうに受け取り開く。
「こんなんで許すわけ……スコーンや」
――ちょろ。
スコーンを手に取り、子供のようにかぶり付く姿に溜め息。
「で、俺に何をさせたいんですか。神っちさん。俺は貴方のように警察学校とか行ったことありませんし、体力も格闘も出来ない。こんな俺を……ん?」
小動物のように口をモゴモゴさせ、親指を立てる。だが、喉に詰まったか苦しそうに胸を叩くため、水をやるとイッキ飲み。
「プハっ死ぬかと思った」
――アホか、コイツ。
空になった紙袋を奪い、グシャグシャに丸め近くのゴミ箱に入れるが――上川に膝カックンされ四つん這いに。
「おー良いところに椅子あるわ。よいしょっと」
乗られ、仕方なく付き合うと手の前にUSB。カチャカチャと振られる。
「自警団よりは劣るけどハッキングや解析は出来るだろ。じゃあ、よろしく」
編集長も嫌いだが、この男の人使い荒いも嫌いだ。
*
広場近くのネットカフェ。個室でカフェのパソコンではなく、自分のパソコンでUSBを解析。名前は伏せてあるが殺し対象か、仮の名前と住所、職業が入力されていた。
後、上川が書き途中の記事。『○○神社、戦没者慰霊碑にて――』『○○神社、戦争の記憶を残すため展示』など、戦争や人災、自然災害など見た目に反して内容が真面目だった。
さらにスクロール。
『
音楽好きか。知らないアーティストの名前。写真はないが不思議と気になる。有名なものではなく、注目されそうなものを休憩がてら書く癖があるのは知っていたが――出来ればUSBを分けて欲しい。下手に貸して記事奪われたら元も子もない。
「まだー」
「どうぞ」
「連れションみたいでヤダ」
「はい?」
下らない言い訳に席を立ち、無理矢理引きずり込む。どうも目を離すと整えたはずの服が乱れる。頬には傷もあり、やや痛々しい。
「隠してるなら話して下さい。短時間で取材にしては時間がない。だとしたら、何してるんですか?」
椅子に腰かけ足を組む。優しく説教するもヘラヘラとシャッキとしない彼に腹が立ち、ガン飛ばす。
「えへへ、
ニコッと笑い、ドアを軽く開け、閉め――壊す勢いで思いっきり開ける。ゴンッと鈍い音に眉を潜めると「しー」と唇に人差し指を当てた。
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