MISSION:111 緑化計画

「ところでユッグベインの捜索はどうなっていましゅか?」

≪小さいグループはいくつか潰しました≫

「え? ズルいする、ポーちゃん」


 いやいや、そうはいってもアチコチに点在してるんだから、全部やろうってのはムリじゃん?

 大規模なグループならお知らせするけどさ。


 それに今は銀コケシ退治に忙しいし。浮遊石の残りは5個。エルフの戦士団が3チーム向かってるから、近いうちに3つのコケシ工場を潰せると思う。戦士たちは一機当千だもの。失敗も損耗もしないはず。そうなるといよいよ大詰めだしね。


≪だから小粒の邪人グループは発見次第、僕がやっちゃう。南大陸だけだけど≫

「やはり東大陸は難しいでありますか?」

≪町中じゃあ見当たらないしねえ≫

「獣人族が臭いで見付けるけえ、おらんじゃろうね」

「ニャムちゃん、一緒、冒険、羨ましいある。こっち来る、いこと」


 ニャムちゃんは特務機関在住だから来ないと思うよ。今は東大陸の僕と一緒に、小さい村巡りしてる。ライカンスロープだから警戒され辛いっていうのと、案内役として一緒に行動してるのが理由の1つだ。


 それからもう1人。隠れ里のお風呂で変身を見せてくれた、オオカミのライカンスロープの人。オービーヌさんがパーティメンバーだよ。一般コモナークラスの冒険者のふりしながら旅してる。


 なお彼女たちの装備は、ダンジョン産マジックアイテムでガッチガチです。


 でも今は諸国漫遊って感じなだけ……。小さい村にもいなかったら、いよいよ森とか山の中から見つけるしかなくなる。相当キツそうだから、ルァッコルォのオイシイ匂いに期待したい。


 でも今のところは、ユッグベインに関係なさそうな感じだ。


「見付けたら尾行してヤツらの拠点を暴いてくだしゃい」


 根こそぎやっちゃうのでしゅー。

 だってさ。

 エルフ、暇人たちなのになんて殺意高めなんだ。


「初代様、私、お腹空くしたぁ」

「しょうでしゅね。今日はここまでにしましょう」


 僕らはお風呂に入りながらアドバイスをもらう。といっても僕とルァッコルォには、特になにもない。ルァッコルォは体力付けてってくらいだし、僕は変なこと思い付いたら教えてって感じだ。


 フーちゃんには魔力の隠蔽と、できないならできないなりに、偽装の魔力を飛ばしなさいって言われてるよ。ただ、この方法は魔力の消費が大きいのがネックだよねえ。


 ワワンパァには新技の上手な使い方というか、ワワンパァドールが司令塔になって戦場を俯瞰して見るように教えてた。


「ポーちゃんはできてましゅよね」

≪前世のゲームで俯瞰して見るのは慣れてるからかな≫


 見下ろし視点のアクションRPGとか。ジャブジャブ敵キャラが出てくるハクスラのヤツ。仕込んだ罠に上手いことハメたらニンマリできるよー。

 ラプターとミサイルの僕だとFPSになるけど。


 軽くゲームの説明をしたら、みんな興味があるみたい。だけど、パソコンなんてどう足掻いても作れないよ。プログラムもムリィ。ツクロー系のなら少しだけ齧ったけど齧っただけだし。


≪ま、できない話はなしにして、景色でも楽しみましょー≫


 森林浴をしながら、夕日に染まる雲海を眺める不思議ファンタジー空間。大人組も住んでるからお酒も置いてあるけど、僕の前々世の死因はお酒飲んでの入浴っぽい記憶がある。


 なのでお風呂での飲酒は禁止事項に入っております。


「これからのことでしゅが──」


 浮遊石のことは戦士団に任せて、僕らにはユッグベイン探しに主軸を置いて欲しいと頼まれた。

 せっかく新装備作ったんだけどな。


 みんなは「えー」って不満顔。そりゃあ、そうだよね。でもネーネさんいわく、その新装備も学習されると銀コケシの装備も強くなっちゃうでしょ、ってことらしい。面倒が増えるってさ。

 なので浮遊石のダンジョンを、壊滅させるまでは戦っちゃダメって言われた。


「そもそも禁止してたはずでしゅが?」

「エヘェ」


 うやむやの内に戦ってたことを思い出したのか、フーちゃんが誤魔化すような微笑みを浮かべてる。

 でもまあ、任せちゃうのが安心かもなあ。


「アルカンシェルを作られたら、フーちゃんとパァちゃんは危ないかもしれませぬな」

「ムーッ?」

≪だね……接近戦に持ち込まれる可能性が高くなっちゃう≫

「あんな細い足じゃのに、ブチ速い動きするけえ恐いわ」


 空に逃げても追われるし、確かにフーちゃんとワワンパァが危なくなるのか。

 短時間って条件付きだけど、接近戦で圧倒できるのはルァッコルォだけ。

 そして僕は切られたところで問題ない。


 なんでもアリだなーこの子。って思ってたけど、ここにきてフーちゃんの弱点が露見してしまった。

 単純に銀コケシが強いってことなんだけども。


 ワワンパァに関しては、魂の扱いがどうなるのか不明だからね。攻撃受けて魂を取られました、なんてことになったら嫌だし。


「ウウ……分かる、した……」


 グギギって顔しながら、コケシ禁止を了承するフーちゃん。まあまあ、落ち着くのですよ、フーちゃん。どうせユッグベインも大きい拠点を絶対どこかに持ってるって。そこで暴れたらいいじゃん!


「ポーちゃん、ガンバルする!」

≪お任せあれ≫

「コケシも一緒に行動しちょるかもしれんけえ、気ぃ付けんとね」

「アルカンシェルの出番がなくなり申した。残念であります」

「装備の更新が行われない内に、虹の忘郷は潰しておきましゅ」


 なるはや・・・・でお願いしまーす。

 ルァッコルォがションボリしちゃったので。


「銀コケシが危ないと止めましたが、とはいえ邪人も3本角になると飛ぶ可能性がありましゅから注意するのでしゅよ」

「「「ハーイ」」」


 敵サイドもダンジョンを拠点にしてたら、マジックアイテムで身を固めてそうだし威力偵察を僕がやっておくのが正解だな。

 大きいグループを見つけたら内緒で一戦かましておこう。


≪じゃあ明日にでもワワンパァんとこに行く?≫

「うん。久しぶり、生パァちゃん、会うしたい」

「ずっと洋上のパンツァーポーにいましたからな」

「ウチぁあんまり気にならんかったけど、よう考えたら1ヶ月も籠っちょったんじゃよねえ」

≪引きこもりが過ぎたね≫


 ワワンパァダンジョンに行ったら、あっちでも契約するのを忘れないようにしないと。外出中でもDPが入るのは大きいからね。塵的にも。


≪そういえば指揮蟹島の浄化作業4周目に突入したよ。エーゴーァさんの指示で浄化剤を杭にして地中に埋め込む作業になった。浄化速度上がるんじゃないかって考えてるみたい≫

「おー、さすがエーゴーァ。できるヤツじゃあ! ポーちゃんもありがとね!」

≪任されちょるけん!≫


「ポーちゃん、ちょるる、した」

「カワイイであります」

「ふむ、ある程度浄化が進んだら、霊樹の苗木を贈りましゅ」

えんですか? ネーネ様、ありがとうございます」


 ダンジョンでも作れるけど、ワワンパァの反応からするとエルフが作ったほうがいい物になるっぽい。普通の木より影響力が強いから、多すぎると森が爆増しちゃう。でもちゃんと管理しておけば、指揮蟹島に緑が復活するのも早まるね。


 100年以上掛かっても、まだ毒々しい土地だった島だけどさ。僕らが関わって一気に緑化が進みそうって思うと誇らしい気分になる。

 頑張ろッ!


≪こうなってくると、永久凍土になっちゃったところも緑化したくなってきた≫

「「ウッ!?」」


 ビクッてなるコロコロになりたいフーちゃんと、元コロコロのネーネさん。

 現コロコロのせいだしね。

 ビクッてなっても仕方ないかもね。


「あそこは手を出し辛かったのでしゅ」


 永久凍土のせいで、なーんにもないそうだ。物資を運ぶのにも限界があるんだろうなあ。エルフは飛べる人が多いっていっても、人力じゃあねえ。


「でも、今、ポーちゃんいるする。パンツァーポーちゃんあるする!」

「いけましゅね!」

「ばっちゃま、失敗、取り戻すする」

「手伝ってくだしゃい」

「ポーちゃん、まかちょけぇ、して、ね?」

≪まかちょーけー!≫


 でもそれは虹の忘郷殲滅作戦が完了してからの話です。

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次回≪MISSION:112 +3セイバー≫に、ヘッドオン!

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