MISSION:40 特殊個体

≪うおぉぉ……ビックリしたあ!≫


 火炎弾が僕にHITして、ラプター半機分ほどの残機が減った。だけどその程度なら問題ない。即座に4機編制になって散る。


「油断する、した」

「じゃね」

≪当たったの僕でセーフ≫

<ごめん、てぇてぇ見ちゃってた>


 全員が悪いってことで気を引き締めて迎え撃とう。レッツ、パーリィ!

 僕たちは散開して、制空権を奪うよ。AWACSエーワックスとエアタンカーからも高速徹甲弾を射出してもらい、敵機を追い回す。


≪ジアッロ1 8TAAM発射!≫

「ウチぁ雷撃弾じゃっ」


 フーちゃんは高度を取っているね。上空からなにかするみたい。


『氷の精霊さん、風の精霊さん、オラに力貸してくんろ!』


 大きな氷槍が、弾丸飛び交うこのパーティ会場に降り注ぐ。その動きはまるでホーミングミサイルだ。


<火口付近の巣と思わしき場所から敵増援を確認。数、12。なおも増加中! 僕のミサイルはコッチに向かわせる>

≪了解!≫


 ちょっと僕が小っちゃくなっちゃうけど、高速徹甲弾を4TAAMで発射しよう。高速徹甲弾は大きい上にアフターバーナーを吹かすから、残機を消費しちゃうんだよね。でもまあ増えるしいいかなって。


≪ジアッロ1 FOX3!≫


 他の僕も同じ選択をして、同時に特殊兵装を射出する。敵の増援をAWACSが抑えてるので、徐々に僕たちが制空権を取りつつある。


<ターゲットデストロイ。残り8!>


 だけどここで特殊個体のボスワイバーンが動いた!


<ボスの口に高エネルギー反応!>

≪全機突撃ー!!≫

「なにしとるんねポーちゃん!?」「危ないあるする!」

≪まかちょーけー!≫


 濃密なエネルギーが感じられる。つまり、ソイツはご飯です。まさに発射寸前の口に徹甲弾が突き刺さる。

 バカめー! 今更飛びたてると思うなよ?


≪スマートボム投下!≫


 地面に張り付けられたボスは、成す術もなく生命活動を終わらせた。


≪ボスがただのご飯だった件。残存兵力を片付けよう≫

「了解じゃ」

『精霊さん、追加の魔力だべ~』


 フーちゃんもワワンパァも火力を上げたみたい。一気に掃討するつもりだね。牧羊犬ではないけれど、僕は敵を追い込むように通常弾を発射。ワンワンっ。


<敵勢力の残存0。念のため周囲の警戒を行う>

≪了解AWACS。こちらは素材の収集に移る≫


 アチコチに散らばってるから、AWACSもエアタンカーも分散して素材を回収だね。皮が結構かさばるよ。でも属性攻撃に強い素材だそうだから、街に卸すと喜ばれると思う。傷つけないように気を付けながら、中身を分解していく。


≪ふたりはどうする? ここ、暑苦しいし前室で待ってる?≫

「ここ、待つする」

「ウチもー。ボスの魔石見たいけんね」

≪じゃあ先にそっちを解体するよ≫


 だけど出てきた魔石は、ワイバーンよりは大きいものの、ギミックに使う形でもなくサイズも足りなかった。


≪違う……ボスじゃない!?≫

<あばあっ、ゴッソリやられた! 火口の溶岩湖から熱線! 出てくるぞ……ドラゴン!?>


 上空で警戒中のAWACSが半分になった。せっかくあそこまで貯めてたのに!

 僕たちは上昇して火口の様子をうかがう。

 そこには溶岩を滴らせながら、黄金色の瞳をこちらに向けるドラゴンがいた。


「レ、レッドドラゴンなんじゃが……」

きらめく怒りの王!」


 フーちゃんが速攻で、王シリーズを使う。強敵ってことだ。しかしドラゴンも反応を見せる。


『■■■■ ■■■■■■■ ■■ ■』


 意味は分からないけど、結果でなにをしたのかは分かった。竜語魔法ってヤツかな。フーちゃんの怒りの王でドラゴンのいる辺りは凍り付いていくのに、火炎の壁が凍てつく冷気を押し止めてる。強いっ!


「やるしかないんよね! 弱点は冷気じゃ。凍結弾をセット!」

≪僕は徹甲弾でいくよ!≫

「ふぉっくす3!」

『氷の精霊さん、風の精霊さん。引ぎ続ぎオラんこと手伝ってくんろ!』


 ダイヤモンドダストが舞い、ガトリングガンから乱射される凍結弾が降り注ぎ、辺りを冷気が覆っていく。地形効果を逆転させるつもりなのかな? レッドドラゴンの不利になるように。


≪FOX3 斉射あっ!≫


 サイズの大きいAWACSとエアタンカーからは、大量の高速徹甲弾がばら撒かれる。ラプター隊は前後左右と展開して、ミサイルを放つ。


『■ ■■ ■ ■■■■ ■■■■■■■ ■■』


 ドラゴンだって黙ってはいない。吹き出す溶岩でミサイルを狙ってくる。そして外れたとしても地形効果の逆転を防ぐ、一石二鳥の作戦だ。だけど、ソレって魔法だよね。ご飯の匂いがしてるよ。ニヤリ。


 あっ、ダメだ。魔力を食べても溶岩が残ってるせいで、ミッソーもやられちゃったよ。


「なかなか強いあるするー!」

「ええ!? 無茶じゃ! フーちゃん!」≪危ない!!≫

「GYAAWAOOOOOOOW」

「ポーちゃん、真似するあるー」

≪ワイバーンのブレスは魔力の塊だったからだよ!≫


 オカシナことを言いながら、魔力剣を片手に突っ込んでいくフーちゃんへ灼熱のブレスが放たれる! でも瞬間移動したかのような速度で、上を取るフーちゃん。AWACSで見てなきゃ見失うような動きにも関わらず、ドラゴンは当たり前のように溶岩を操作して迎撃しようとしてる。


≪今っ!≫

『■ ■ ■ ■■■ ■■ ■ ■』


 僕とワワンパァは、フーちゃんに集中しているドラゴンに向かって、攻撃を強めた。

 ドラゴンは炎の槍で迎撃しようとする。

 だけど徹甲弾が炎の槍を喰い散らかし、ドラゴンの足元を崩す。

 ワワンパァの凍結弾が溶岩の動きを鈍らせる。


 ほんの僅かに生まれた隙。それを逃すフーちゃんじゃあない。もう同時と言っていいほどの速度で、上下に振りぬかれる輝く剣が、ドラゴンの首へ致命傷を与えた。

 崩れ落ちるレッドドラゴン。


『見事なり強者よ。願わくば我が友に救……いを──』


 頭に響く声。


「ム?」

「今のは……ドラゴンの声なん?」


 しかし返事が返ってくることはなかった。


≪どういうことなんだろうね?≫


 そしてやりにくくなってしまった。ひょっとしてひょっとすると、友好的な魔物だったのではないかっていう疑問が出てきたし、そんな相手を素材にする必要があるし。


「えっとねえ、ドラゴンの素材は全部なんじゃけど……」

「素材、獲る、つらい、なるした」

≪ふたりもかあ。友達助けてって言うドラゴンだもんね≫


 でもレッドドラゴンの魔石x1、竜鱗+皮、爪x20、牙x86、瞳x2、肉になった。

 どうすればいいのか、僕たちはよく分かんなくなって、レッドドラゴンの意志も連れて行く的な意味を持たせて、肉は少し早めの昼ご飯で頂くことにした。


 ドラゴンは当然巨体なので肉を持ち帰るのも大変だし、大部分を僕が今食べつくした。300kgくらいはお持ち帰りする。ちょっと大きめの枕サイズの肉塊を30個分。

 うん、素材にしといてアレだけどさ、アナタの願いは頑張ってみるよ。今のところ、どうすればいいのか見当もつかないけど。


≪友達っていうのはダンジョンマスターってことなのかなあ?≫

「残ってる大物はそれぐらいじゃあ思うよ」

「うん。行く、する」


『ええ、ええ、お待ちしておりますとも。お早めにお願いしますよ?』


 館内放送のように声が聞こえてきた。自分がダンジョンマスターだと自己紹介される。

 このレッドドラゴンは友だけど、余計なことをしたと言ってきた。


『要らぬおせっかいを焼いて、貴方がたに無用の心情を押し付けてしまったことを、お詫びしましょう』


 当初の予定では、ただの敵として現れる予定だったのだとか。だけど強者のエルフと、ダンマスのワワンパァがいたため、どうにかできるのではないかという願いが、このドラゴンに生まれたようだ。


『私に施された設定がゆえ、全力で貴方がたを殺しにいきますが……問題ないように感じますねえ』


 ダンジョンマスターからは余計なことを考えず、討伐をしてくれと頼まれ放送は切れた。


「施す、設定? するある?」

「ダンジョンマスターにかぁ? そんなん聞いたことないわ」


 狂わされたダンジョンマスター……特殊個体ということなんだろうか。

--------------------------------------------------------------------------

次回≪MISSION:41 滅びを司る王≫に、ヘッドオン!


お宝

リング・オブ・アンチポイズン

スタッグビートル・フォートレスの魔石 外皮

アンチポイズンジェム

スケアリー・ジャイアントコングの魔石 毛皮

ワイバーンの竜鱗+皮45

レッドドラゴンの魔石 竜鱗+皮 牙x86 瞳x2 肉塊x30個(300kg)

           爪x20(手6x2 足4x2)


その他の魔石は現時点で265個

 ジャイアントキャタピラー61

 クレイジーモンキー203

 ワイバーンの魔石43


※スマートボム:誘導爆弾

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る