MISSION:06 マニューバ

 まずは最小単位で分離させてみるとしよう。残機が減った場合は激しい飢餓感に襲われたけど、残機充分の時は平気かもしれないし。平気なら分散して色々と試せるしね。


≪ポヨグランダー、発進っ!≫


 3機ほど分離して様子をうかがう。


 こちらイエローベース。PG1ピージーワン、現在の状況を報告せよ。


<こちらPG1。目視で標的を捉えた。進路を確保しつつ前進する>


 了解、イエローベースより各機へ。PG2、3はPG1の指示に従え。


<PG2、了解><PG3、了解>

<PG1、了解。観光気分ではしゃぐなよ? ブレイク!>


 戦車部隊はブレイクとか言わないかな?

 しかし、うーん……塵サイズだとメッセージウィンドウが使えない。無線風に表示しても一人でナニヤッテンノって感じだ……。だけども飢餓感がないのはセーフだったな。残機が大幅に減らなければ問題はないみたい。


 とはいえ、最小サイズだと転がるのが精一杯で移動が遅いなあ。ある程度僕がいないとなにもできないや。単機で運用するのは隠密行動の時くらいかな。1mmすらないサイズだし。というか1㎜かなって長さになってみると、500機くらいいるような……。


 組上がって計算してみたら、莫大な量の僕でした。1㎜四方なのに。


 これはウン百万機を1機単位な感じで、扱ったほうがいいかもしれない。だってなかなかドアに辿り着かないし。追加の僕をスイカの種みたいに飛ばして合体させた。


 出て行く僕に、見つかるなよと注意をうながす。アッチの僕がワクワクしすぎてるし。いや、分かるよ? 探検隊ごっこしたい気持ちは。コッチは代わり映えのしない部屋の中だしさ。まあコッチはコッチでやることあるし、楽しんでおくれ。


 しかしアレだな。極小サイズなのに、ソレが目であり耳であり脳であり胃でありと、色んな役割を果たしてる。結構スゴイことなんじゃないだろうか。


 ということで、高速移動の手段を模索しよう。


『ポーちゃーん、おっぱいになってくんろ~』


 と、いうことで、高速移動の手段を模索しよう。


『ねぇポーちゃん、おっぱいになってくんろ!』

≪フーちゃんや、アホなコト言ってないでちゃんと服を着ないと!≫

『んー? 早くおっぱいになって欲しいんだべ~』


 羞恥の心はどこ行った。

 まるか? 本気で僕の性別はまるなのかっ!?


 僕は全裸の幼女に抱きかかえられてしまい、風呂場に強制連行されておっぱいを強要された。そして美味しい魔力ナニかをギュンギュン押し付けてくる。僕を大きくしたい様子。フーちゃんはボインの魅力に捕らわれすぎだと思う。


 ちなみに僕の体は不透明なので、胸部や下腹部に張り付けられると、女性の恥部を隠すことができる。ゆえに──彼女の恥部は隠されているので環境に優しいのだ(錯乱)


 え?

 まだちっちゃい?

 もっと大きくなって欲しいって?

 今でも巨乳サイズなのに?


 フーちゃんの胸に魔乳は似合わないよ。しかし僕を胸にくっ付けた彼女は満足そうに笑みを浮かべている。


『ばっちゃまと同じになったべ!』

≪お婆ちゃん、魔乳なんだ≫

『まにゅ~?』


 お婆ちゃんは魔乳婆。そんなタイトルが頭に浮かんだ。なんか昔のドラマにありそ……う、あっ! おっ!? マニューバ!!

 走る必要はないじゃん。フーちゃんは飛ぶんだし、僕も飛べばいい。


≪用事ができた。おっぱいはオシマイ!≫


 えぇ~、とか残念がるフーちゃんに、僕を30%くらい残して風呂から脱出。どうしてもおっぱいしたいなら、普通サイズでガマンしてくれ。

 さ、飛行システムを考えよう。


 一番簡単なのはフーちゃんに引っ張ってもらってグライダー的な感じなんだろうけど……やっぱり自分で飛びたいよなー。となると、ヘリとかドローンが現実的かと思う。


 飛行機だと翼の形状とかも大事だろうし、すぐには無理かな。さっき別れた僕にやってもらうか。マニューバはしばらくオアズケですな。

 PG1、PG1ン~応答せよー。


<こちらPG2。PG1は光になった>


 え、どゆこと?

 あぁー……そう、うん。猫の獣人、うん。ケモミミか。へー、興奮しすぎて死んじゃったのね。分かった。分かるけど分かりたくなかった!


 僕、なんて恥ずかしいヤツなんだ。


 そんな悲しい会話をして意思の疎通も確認。携帯で話しているみたいな感じなので、問題はなさそう。内容はアレだけど。

 そしてスライムは割と死にやすいみたいだ。たぶん。


 まあ、それはともかくとして、プロペラ機になって空飛ぶ練習をして欲しいと伝えると、面白そうだと返ってきた。ついでにフーちゃんの婆ちゃんは魔乳婆だと教えておく。ケモミミを見たポヨグランダー1が羨ましかったので。

 クッソォゥッ、僕も見たかったヨ!


<魔乳婆? ……それで飛行機? 安直ー>


 うっさいなあ、ソッチだってケモミミでハッスルして死んだくせに。


<ヤメロォゥッ>


 そうだね……自分で自分をなじっても益はない。あ、でも見ていない情報は共有できないということは分かったか。

 一応……益はあった。ヨカッタヨカッタ。


 気を取り直して飛行の手段を考えよう。

 ヘリ、ドローン。この2つの中で考えるなら、ヘリのほうが簡単な気がする。ドローンのほうが回転させるプロペラが多いし同期させるのも難しそう。

 うーん……オートジャイロって手もあるかあ。けど、飛行速度が遅そう? どうなんだろう?


 ま、とにかくやってみるか。形状、強度、パワー。この3つをクリアしないと飛べそうにないかな。


 まずは頭に四枚羽の竹トンボ的なプロペラを形成して、離陸可能か試すとしようか。僕を中心に、四方へちびスライムを配置して形状を確認させる。天井にはプィッと射出して張り付けた。


 プィッと射出も訓練すれば、なにかに使えそう。


 そして僕は四角いキンピカになった。

 そうだったー……力を込めるとキンピカになってサイコロ状態が落ち着くという謎機能が付いてたよ。


 キンピカはもうどうしようもないから諦めるとして、僕全員まとめて力を込めるんじゃなく、ちびスラ状態で小さいサイコロになってから、それを組み上げて形作るのがいいかな。ジャギーはコーティングする感じでくっ付こう。


 プロペラの回転力は直回しじゃなく、ギア比でコントロールするほうがパワーを出しやすいはず。


 アレコレ細かい指示を、ちびスラから受けつつスラコプターになっていく。並列実行が可能になった今の僕は、なかなかの速度で珍妙な姿に変身できた。


 ただ……雫型ボディに大きめの回転翼。

 かっこよさの欠片もないっ。

 でも──気分を盛り上げていこう!


≪まわせー!≫


 フォゥン、フォゥン、フォン、フォン、フォンフォフォフォォォィィイイイイ。そんな音を立てて、スラコプター饅頭は離陸した。

 すんごく回ってます。テールローターがないから仕方ない。


「ポーちゃん、飛ぶしてる。スゴイ!」

≪ねぇ、僕とくっ付いてテールローターになってよ≫


 丁度良いタイミングで風呂から出てきたおっぱい役の僕に、テールローター役を頼む。


『テールロルータラーってなんだべ?』


 なんか増えちゃってるべ?


≪僕の上にプルプル回ってる四枚羽の回転翼があるでしょ? これはメインローターって言って飛ぶために必要なヤツで、この翼が回転すると僕の本体も回っちゃうんだ。だから本体が回らないように制御するのがテールローターってわけさ≫


 着陸しながら説明すると──


「ふーん」


 ──って言われた。


≪つまり尻尾から風を吹いて本体が回らないようにするヤツだよ≫

「おなら、する?」

≪おなら、しない。まあ飛ぶのに必要ってこと≫

「分かるした。おなら、ない」


 神妙な顔で頷いてるけど、あんまり分かってなさそうだ。でもまあ魔法で飛ぶ人が気にすることじゃないね。屁コキスライムじゃないと理解してくれればいいよ。

 ただ……


≪すんごい疲れる。そしてチョットだけ残機が減った≫

「増やす、する?」

≪さっき増えたから平気だよ≫


 疲れたら僕は死ぬ。興奮しても僕は死ぬ。でもそこら辺にあるマナを吸収するとアッサリ増える。


 誕生と死滅が隣り合わせの人生になってしまった。

 命ってナンダロネ?

 ホコリくらいの軽さダネ?

 そんなことをフーちゃんに伝えたら、優しい彼女は慰めてくれた。


『ダイジョブ。ポーちゃん、丸くて柔らくてポヨポヨしてて、ばっちゃまのおっぱいみたいで可愛いんだべ! とーっても大切なん!』


 可愛い魔乳ってナンダロネ?

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次回≪MISSION:07 カナシイ味≫に、ヘッドオン!

※1㎜かなって長さになってみると、500機くらい──

1機2μmの設定。0.002㎜です。人の細胞は20μmだそうなので、10分の1にしーよおっと。ヒトの細胞は1cm四方で、およそ25万個だそうなので、計算上は250万個……

アレ……? この設定……アカンヤツなのでは……?

まあいっか。

っていう軽い感じの設定。

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