コロロの森のフィアフィアスー ~子エルフちゃんは容赦なし~

ヒコマキ

第1章 不老と不死の怪物たち

MISSION:00 プロローグ

 樹海上空を飛行する早期警戒管制機より通信が入る。AWACSエーワックスと呼ばれるそれは、高高度を飛行し敵勢力の発見や友軍への指揮を行う機体である。


 降り注ぐ陽の光。爽やかなブルーに染まる空。明らかに屋外の特徴を備えたこの樹海は──ダンジョンだった。


≪こちらAWACSヘヴンアイズ。

 目標は北東より接近中。接敵までおよそ120ヒトフタマル


 AWACSヘヴンアイズは敵機と友軍機の速度を計測。

 およそではあるが120秒後に戦闘開始と判断し、戦闘に備えて指示を出す。


≪各隊に指示を通達する。

 ブレイド、ハンマー、ファング、ランスの各地上部隊は進路を確保しつつ前進。敵地上部隊を掃討せよ。

 ジアッロ、ミダース、オーロ、アウルムの各機はジアッロ1に従い敵航空勢力の無力化を急げ。

 こちらは引き続き警戒を行う≫


≪ブレイド了解≫≪ハンマー隊、了解≫≪ファング、了解≫≪こちらランス隊。了解した≫


 放たれる言葉は敵勢力の撃破。各部隊は了承の意を返した。彼らは屋内の空で戦闘行動をするという、摩訶不思議な経験を得ることになる。


≪ジアッロ1より各機。

 ジアッロ、オーロ、ミダース、アウルムの各隊は可及的速やかに制空権の奪取。

 のちに特殊兵装を対地に変更し、地上部隊を掩護する。オーバー≫


 航空部隊隊長機であるジアッロ1はそう指示を出し、速度を上げながら雲の尾を引く。ジアッロ1を頂点に、追従しつつも編隊を崩さない様は、彼らの練度の高さを証明しているようだ。


 緊迫した風の舞う、戦場には似つかわしくない麗らかな日差しを照り返す──黄金の翼。

 それはまさに猛禽と呼ばれるに相応しい武威を発していた。


≪オーロ1了解。FAファーストアタックは我々オーロ隊が頂く≫


≪アウルム1、了解。とっとと終わらせて風呂に浸かりたいもんだな≫


≪こちらブレイド隊。地上の敵は俺たちが全て喰らいつくす。お空のキミたち、蚊トンボ相手に頑張りな!≫


 醜悪な笑みを浮かべ、駆け寄る物の怪。

 咆哮を上げ迫り来る飛竜。

 眼前に広がる敵勢力。


≪ハッ、言ってろ!!≫


≪ジアッロ1より各機。目視で標的を捉えた。はしゃぎ過ぎるなよ?

 ブレイク!≫


 怯える心を奮い立たせるかのように彼らは語り、散開する。


≪オーロ2 FOX3!≫


 異形を破壊すべく射出されるロングレンジミサイル。

 魔獣と兵器。

 その戦いの火蓋が今──切られた。


≪早漏野郎!!≫


 守るべきは己ではなく──


≪アウルム3 エンゲージ!≫


≪こちらジアッロ1。後ろにエルヴンがいることを忘れるなよ……

 絶対に抜かれるな!≫


 ──そう、それは大切なもののために。

--------------------------------------------------------------------------

次回≪MISSION:01 コロロの森のフィアフィアスー≫に、ヘッドオン!


AWACS:早期警戒管制機のこと。通信時、ウィットに富んだ報告にジョークで返したりするとカッチョイイ気分になれるヤツ。

ブレイク:回避! だったり、散開! だったりのカッチョイイ便利語

ジアッロやオーロ等:コールサイン。部隊の名称。1番は隊長機

FOX3:特殊兵装発射の意

 本来は誘導方式の違いらしいですが、ここでは雰囲気ナンバー

 FOX1が機銃的なヤツでFOX2が通常弾的なアレ

 ファイアだと火災発生と混同してしまうために、なんちゃらォネティックコードの頭文字を取ってフォックスうんちゃらと叫ぶカッチョイイヤツ

エルヴン:コールサインではなくTACネーム(戦闘時の非公式愛称)


 某ス・コンバット的な記憶を辿り彼らは使用している。気持ち良ければそれで良かろう、なのだ。こまけぇこたぁ気にしてはいない。

 だって気持ちいから。

 キモチィー。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る