アイテム交換
amegahare
アイテム交換の儀式
とある異世界に王様が納める国があった。
多くの冒険者がその国で過ごしていた。
雪が降り始めたある日、王様が国民に向かって、こんなことを言い出した。
「我々は日常的に出会う人達が限定されている。これは、社会の階層化の要因だ。果たして、これでいいのだろうか。相互理解が大切だ」
真剣な顔の王様は声を張り上げた。
「だからワシは新たな法律を作った。ランダムで決められた男女が建国祭の日に強制的にプレゼント交換しなければならないという法律を!」
そんな法律ができてしまって、最初の建国祭が訪れようとしている。
お嬢様の魔法学校に通う私のもとに届いた相手の男性は、、、、県内一と呼び声が高い不良高校に通う戦士の男子生徒だった。
どうやら高校生は高校生の相手から選ばれるらしい。
せめて同じ魔法学校の中から選ばれて欲しかった。
次の日、魔法学校に行くと、クラスメイト達は相手が誰になったかの話題で盛り上がっていた。貴族が多い学校、神官学校、鍛冶屋の多い学校などなどクラスメイト達の楽しげな会話が聞こえてくる。
クラスメイト達に私のプレゼント交換の相手が不良高校に通う戦士の男子だと言うと、みんな揃いも揃って微妙な表情になる。
「えっと、、、、、」
と、困惑している様子を示す友人はまだマシな方だ。
「絶対、木から削り出した棍棒(こんぼう)が贈られるよ」
「いやいやいや、鎧でしょ、鎧!なんか音の凄いうるさいやつ」
「戦士と言えば、斧でしょ。ついでに鎖に繋がれた鉄球がついてるやつでしょ」
「刀じゃな!?きっと護身用とかで持ち歩いてるんだよ」
口の悪い友人達は、妄想を膨らませて勝手に盛り上がっている。
他人の気持ちも知らないで、、、、。まぁ、実際、他人だしね、、、、。
そんな気持ちが重くなる日々が続いて、ついに建国祭の日。
私は指定された場所に向かった。
ちなみに、このプレゼント交換の儀式をサボると、強制的に留年になるらしい。とんでもない法律を作ってくれたものだ。
王様に対する、怒りと諦めが混じった感情で私は沸々していた。
グルルルッ!
野獣の雄叫びが響き渡り、四足歩行の野獣が近づいてくる。
野獣の上には戦士風の男子が乗っている。
色々な光で点滅するライトで野獣が飾られている。イルミネーションだろうか。
野獣の到来に私はすっかり気負ってしまった。
野獣から降りてきた金髪で長身の戦士はぶっきらぼうに言った。
「あんたが、俺とのプレゼント交換の相手?」
私は怖くて目を合わすことができない。とりあえず、こくりっと頷く。
「はい、これ。プレゼント」
彼は紙袋を私の前に差し出した。
「あっ、、、ありがとう」
私の声は掠れ掠れだ。私も勇気を振り絞って、持参したプレゼントを相手の前に差し出す。
私が選んだのはスカーフ。
果たして戦士がスカーフなんか使うのだろうか。そんな疑問もあったけど、他に何も思い浮かばなかったので、スカーフにした。赤色のスカーフ。
「俺、何を選んでいいのかわからなくて、、、、。色々と探したんだけど、、、、」
彼の声が聞こえる。もう一度ありがとうを言おうと思って、顔を上げると、既に彼は野獣に乗っていた。
「じゃあ」
彼は素っ気なく言って、野獣と共に走り去ってしまった。私は心臓の鼓動が徐々に落ち着いていく様子を感じながら、彼からもらった紙袋の中を、恐る恐る覗いてみた。
紙袋の中から、可愛いドラゴンの縫いぐるみが表れた。
ドラゴンのあどけない表情に癒される。
彼が、この縫いぐるみを選んでいる様子を思い浮かべると、思わず笑みがこぼれる。
紙袋からドラゴンの縫いぐるみを取り出してみると、首輪のところに手紙らしきものが挟まっていることに気がついた。
手紙を開いてみると、彼の連絡先と、そして短くこう書かれていた。
「良ければ、一緒にパーティーを組んでください」
冷たい風を頬で感じながら、未知の冒険の到来を感じていた。
そして、手紙に向かって、私は呟いた。
「よろしくね、戦士さん」
(了)
アイテム交換 amegahare @amegahare
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます