風の又三郎/宮沢賢治
カクヨム近代文学館
九月一日
どっどどどどうど どどうど どどう、
青いくるみも
すっぱいかりんもふきとばせ
どっどどどどうど どどうど どどう
谷川の
教室はたった一つでしたが
さわやかな九月一日の朝でした。青ぞらで風がどうと鳴り、日光は運動場いっぱいでした。黒い
「ほう、おら
「ちょうはあかぐり、ちょうはあかぐり。」と高く
「なして泣いでら、うなかもたのが。」嘉助が泣かないこどもの
赤毛の子どもは
すると六年生の
みんなもすっかり元気になってついて行きました。
「
「お天気のいい時教室さ入ってるづど先生にうんと
「叱らえでもおら知らなぃよ。」
「早ぐ出はって
ぜんたいその形からが
「あいつは外国人だな。」「学校さ入るのだな。」みんなはがやがやがやがや云いました。ところが五年生の
「ああ、三年生さ入るのだ。」と
変なこどもはやはりきょろきょろこっちを見るだけきちんと腰掛けています。
そのとき風がどうと
風がまたどうと
「わあうなだ
「やっぱりあいつは風の又三郎だったな。」
「二百十日で来たのだな。」「
「
「ありゃありゃ、又三郎おれの
「そうだ。ありゃ。あそごのガラスもぶっかしたぞ。」
「そだなぃでぁ。あいづぁ休み前に
みんなはしいんとなってしまいました。やっと一郎が「先生お早うございます。」と云いましたのでみんなもついて「先生お早うございます。」と云っただけでした。「みなさん、お早う。どなたも元気ですね。では
すっかりやすみの前の通りだとみんなが思いながら六年生は一人、五年生は七人、四年生は六人、三年生は十二人、組ごとに一
二年生は八人一年生は四人前へならえをしてならんだのです。するとその間あのおかしな子は何かおかしいのかおもしろいのか
前へならえと
みんなはもう一ぺん前へならえをしてすっかり列をつくりましたがじつはあの
「一年から
まもなくみんなははきものを
「わあ、おらの机
「わあ、おらの机さ石かけ入ってるぞ。」
「キッコ、キッコ、うな
「わあい、さの、
「わぁがない。ひとの
そのとき先生が入って来ましたので、みんなもさわぎながらとにかく立ちあがり一郎がいちばんうしろで「
みんなはおじぎをする間はちょっとしんとなりましたがそれからまたがやがやがやがや云いました。
「しずかに、みなさん。しずかにするのです。」先生が云いました。
「
みんなはしんとなりました。先生が云いました。「みなさん長い夏のお休みは
すぐみんなは手をあげました。その高田とよばれた子も
「わかりましたね、ではよし。」と云いましたのでみんなは火の
ところが
「はい。」先生は嘉助を
「高田さん名は何て
「わあ、うまい、そりゃ、やっぱり
「今日はみなさんは
みんなはばたばた
そして先生が一年生のほうから
「では宿題帖はこの
一郎が気を
「
すると三郎はさっきのだぶだぶの白い
「いやどうもご
「じきみんなとお
「
運動場を出るときその子はこっちをふりむいてじっと学校やみんなの方をにらむようにするとまたすたすた白服の大人について歩いて行きました。
「先生、あの人は高田さんのお父さんすか。」一郎が
「そうです。」
「何の用で来たべ。」
「上の野原の入口にモリブデンという
「どごらあだりだべな。」
「私もまだよくわかりませんが、いつもみなさんが馬をつれて行くみちから少し川下へ
「モリブデン何にするべな。」
「それは
「そだら又三郎も掘るべが。」
「又三郎だなぃ、高田三郎だじゃ。」
「又三郎だ又三郎だ。」嘉助が顔をまっ赤にしてがん
「嘉助、うなも
「わぁい。やんたじゃ。今日五年生ど六年生だな。」
嘉助は
風がまた
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