第68話 史上最悪の体育祭 中編







 どうもっす、私、小幡 上総(オバタ カズサ)が前回に引き続き体育祭の出来事を語るっす。


 ついにメインイベントと言っても過言じゃない、伝統ある一番人気の騎馬戦っすけど、その前にどうして体育祭が荒れているのか?

私がその背景を説明するっす。


 騎馬戦っすけど、生徒会としては全面的に反対、委員長会議でも生徒会の反対に殆どの委員会が同調したっす。

もちろん出来る限りで生徒達とヒアリングしてアンケート取ったんすよ?

その結果として、反対多数と言う事実は残ったっす。


 次に教員側とも協議したっすけど、体育祭実行委員会同様、反対多数に関わらず覆らなかったっす。


 多分謎の力が働いたっすね。

結果として会長は、実行委員会の予算削減して宣戦布告したっすね…本当、一部からの抗議がもの凄かったっすけど、会長と書記長はどこ吹く風だったっすね。なんすか、その化け物みたいなメンタルは?


 その後、幾度となく実行委員会と話し合いを重ね、騎馬戦そのものは決行となったっす。

削った実行委員会の予算っすけど、生徒会予算から割り振る代わりに諸々の要求を通したっす。いい落とし処じゃないっすかね?


 …もしかして会長、最初からこれが狙いだったんじゃないっすか?

性格悪いっすね、敵に回した実行委員会が可哀想になったっすよ。


 体育祭に向けた練習試合っすけど、生徒会長率いる赤組に対する復讐心、対抗心なんっすかね?

実行委員会率いる白組、いきり立っていたっすよ…あ、練習試合は負けたっす、全敗っすね。


 連戦連勝の実行委員会率いる白組っすけど、憂さ晴らしになったんすか?

溜飲下がったかわからないっすけど、ご満悦だったっす。本戦もそうなればいいっすね…。


 一方の会長と書記長、負けが込んでたのにも関わらず、めっちゃ悪い顔で大笑いしてたっすね…そうっすね、赤組の動きはよくなってたっす。逃げ足だけは早くなったっす。


 ま、概ね会長の指示通りに動けたっすからね…けど、いくらゴリラの二人でも、屈強な運動部の男子相手に無謀な突撃かましてたっすから、当然負けるっすよ…書記長(187cm)がゴリラで頼もしいのは良いっすけど、わりと高身長な飯富さん(169cm)と私(166cm)で何とか支えても、前後の等身合わないっすからね。まともに動けるだけマシっすね。


 そもそもっすけど、大将だからって会長(168cm)が上乗るのはいいっすよ?


 だけど会長、等身的にあんたは本来馬の方っすからね?とんだじゃじゃ馬っすよ。


 それで体育祭前日っすけど、騎馬戦の赤組参加者を集めて作戦を伝達したっす。


 練習試合はまともに戦うように見せかけて、わざと負けてたらしいっす。

これで白組の油断を誘うのが狙いっすね。


 次に練習試合で使用しなかった作戦っすけど、本戦では会長…前進して囮になるっす。大丈夫なんっすかね?


 赤組のみんなの心配をよそに、会長は作戦を淡々と語ったっす。

何故か突然、ドイツ語講座が始まったっすけど、これは命令伝達で簡単な暗号化を図る意図があるっすね。

赤組のみんなは概ね理解したっす。


 次に陣形っすね。

例えるならW型の布陣、鶴翼の陣っすね。

会長が囮として前面に出ます…おい、あんた大将っすよね?

会長が何か考えているみたいっすけど、基本的に会長が敵戦力を誘引して、頃合いになったら会長は後退、鶴翼が閉じて包囲せん滅っすね。


 また、敵の大将は後方で高みの見物っすから、伏兵を回り込ませて突撃するみたいっす。騎馬戦だけに騎兵隊の出番っすね。


 引き続き会長は敵大将の気を引く為、囮をやるっす…本当、大丈夫なんっすかね?


 会長、明日は快晴だから確実に勝てるって、自信に満ちてたっすよ。


 そんな訳で体育祭当日、作戦開始っす。

これまでの競技でうまく敵戦力を削ったので、白組はそれなりに弱体化していましたっす。練習の時より三騎少ないっすね、白組大将の馬役が変更されてるっすね。


 さ、入場っすよ。


 『風林火山』を入場曲にするなんて粋っすね、武者震いがするっすよ。


 その後、吹奏楽部による『扶桑歌』の演奏で高ぶったっす。これ、誰がリクエストしたんっすか?


 間に入る『抜刀隊』に合わせて、会長と書記長が大声で歌ってたっすね。

なんで完璧に歌えるんっすかね?…いや、リクエストしたのあんたらっすか!?


 強者をリスペクトしながら持ち上げて落とす歌っすから、会長と書記長、悪い顔でノリノリでしたよ、本当に。

白組煽りまくって、スポーツマンシップなんてクソッタレを地で行くみたいっすね。


 それじゃ、私の出番はここまでっすかね?…ビデオの編集、アフレコ、疲れるっすよ。会長と書記長、謹慎明けたらなんかご飯奢ってほしいっすね───。





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