ライオンは強い 14

「亡くなるって何?何が?誰が?」


 人が死ぬことを亡くなると言うことは当然知ってる。


「キムさん、死にたいんだって。明日」


 だけど理解なんてできるはずがない。人が死ぬ事を知らされて、はいそうですかと頷けるわけがないんだ。


「ずっと頑張ってたんだけど、もう限界なんだって。だったらみんなとお別れ会してからがいいってなったんだ」


 アンは何を言ってるんだ。そもそも人の生き死なんて他人が操れるものじゃないのに。


「私がね、明日キムさんを天国に送るのよ」


 アンの空色の瞳がどんよりと曇ってるみたいだ。


「レオンくんには私の力のこと言ってなかったよね。スバルにも口止めしたもの」

「……おばさん達は、痛みをとるって」

「うん。それも私の力のうちの1つだよ」

「魔法使いだって言ってた。で、でもそれって例え話じゃないの?」

「魔法なんて素敵なものじゃないの。でも、人の痛みを取ってあげるのは私の力の1つ。それで、死にかけてたレオンくんに力を注いだのも私の力の1つ。初めて会った日私が手を握ったら元気になった気がしたでしょ。それだよ」


 唖然としたままアンの言葉に耳を傾ける。話の3割も理解はできないけど何度も唾をのんで震える手を押さえた。


「私、人の生命力や治癒力を自由自在に操れるの」


 いつものおちゃらけた態度とはまるで別人の顔をしながら話すから、急にアンが遠い人の様な気がした。

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