第43話
『オードリー、今日はどこへ行くの?』
『今日は五層洞窟へ行くよ。サイズ指定ありの緑柱石(アクアマリン)の採掘依頼が来たからね』
『へえ〜』
クリスタが両手を頭の後ろにやり、寝転がるようにして宙に浮いている。
天気は快晴。
微風、南風。
絶好の採掘日和だ。
借りた馬車も、精霊魔法で軽快に前へと進んでいる。この分なら予定よりもかなり早く到着するだろう。
御者席に座り、馬車の揺れを感じながら、首にかけた革紐を引いた。
『あ、ぼくのお家』
クリスタが欠けた
『クリスタの家なの?』
『うん。
『そうなの? つながっているのは、精霊の世界でってこと?』
『そうだよ〜』
お気楽な調子でうなずきながら、クリスタが私の前を飛ぶ。
へえ、精霊の世界か……。
一度でいいから行ってみたいな。
「よっと」
片手で手綱を操り、
きらりと輝く、不変の美しさがあった。
すべては
私も人の役に立つ、父さんのような立派な鑑定士になりたい。
『オードリーはいい目になったね! 死んだあとに目玉をもらうのが楽しみだよ』
クリスタが屈託なく笑った。
『可愛いのに怖いよ』
『人間の目玉ってキレイだよね。コレクション見る?』
私の話を聞かず、クリスタが宙から魔法で袋を出現させ、頭をつっこんでごそごそとやり始めた。
『一番キレイなのは俳優だった男の目玉なんだけど――あれ、どこかな……』
『あ、遠慮しておきます』
丁重にお断りをして、袋をしまってもらった。
代わりにコーヒー豆をプレゼントする。目玉を出されてはかなわない。
クリスタは馬の頭に着地し、ぼりぼりとおやりになり始めた。
『オードリーの目がキラキラになって、ぼく、嬉しいよ』
『そっか……今が楽しいからかなぁ?』
『それなら人生をもっと楽しまないとね!』
『そうだね』
目的地まで先は長い。
馬車に揺られるこの時間も、まだ見ぬ魔宝石を思い浮かべれば、楽しいものへとすぐに変わった。
第1章おわり
―――――――――――――――
お読みいただきありがとうございます。
第1章はこれにて終了です!
続きはゆっくりと更新していく予定です。
書籍化の情報も追ってご連絡させていただきます。
ここまで書いて色々と修正したい部分が出てきてしまい、
WEBとは少し違った流れにするつもりです。
それでは引き続きオードリーとクリスタの冒険をお楽しみいただければ幸いです。
今後も本作をよろしくお願い申し上げます^^
作者
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