蟷螂

今から私は川に往く

目的なんてものはない

水を汲むわけでも

飲むわけでもない

ただ川に往くだけだ


仲間は往くなと引き留めた

無暗に川へ近づくな

危険な場所だと引き留めた


これは私の意思ではない

ただ私の内にある

黒く渦巻く者の意思

それが私を導いた

川へ往けと導いた


そうして川に着いた時

渦巻く者が暴れ出た

細い体を動かして

私の体を食い破る


遂に飛び出た化け物は

私を見下しほくそ笑む

そうして川へと歩みだす


彼が川へと消えた時

温かな地に背を向けて

私は静かに息絶えた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る