アミザージ

ゆき

第1期 出会い

第1話クソみたいな入学式

「はぁ……」

 僕の名前は佐藤克己さとうかつみ。高校受験に失敗し、滑り止めの高校に渋々入学した哀れな高校生だ。

「あぁ…行きたくない…」

「あ~もうそんなこと言わないの!」

「いやだって…」

「だってじゃない!ほら、行くよ!まったく…」

 お母さんにグイっと腕を引っ張られ、玄関を出た。


 初日から足が重たくなってきた。

 どうせ中学の時の友達もいない。

 どんな入学式になるか想像もしたくない。

 周りから親子の楽しい会話が聞こえる。

 僕は一切楽しくない……

「着いた…」

 無駄に長い坂を登り着いたのは、少し古びた学校のようだった。

「クラス表クラス表…あった。うわ…知らない名前ばっかじゃん」

 当然のことだが知ってる名前は一つもなかった。ポツンとある自分の名前を見つけさらにテンションが下がった。


 体育館に入り席に着きしばらくすると、入学式が始まった。

「えーまずは校長先生のお話です」

 教頭と校長が入れ替わり、一礼した。

「皆さん初めまして。私校長の村田と申します。えー早速ですがこの高校には260年の長い歴史が―」


 正直心底どうでもいい。

 一応前だけ向き、話はほぼ聞かなかった。


♢♢♢


 そのあともボーっとしていると「これで入学式のすべてを終わります」と体育館に響いた。

 そうしてクソみたいな入学式は終わった。


 

 家に帰って靴を脱ぎ、自分の部屋で何も考えずにスマホをいじった。

「克己ー!ご飯できたから降りておいでー!」

 一階からお母さんの声がした。

 一段飛ばしで階段を降りてテーブルを見ると、自分の好きなお母さんの特製グラタンが置いてあった。

「せっかくの入学祝いだから、ちょっとお母さん頑張っちゃった」

「…ありがとう」


 どうしても素直に喜べなかった。いつもなら

「うわ!マジで!?ありがと母さん!!」

 なんて言って食卓に座るのに。


「もう…元気出しなさいよ。別に無理に頑張らなくてもいいんだから。自分なりに楽しいこと見つけたりして、高校生活楽しみなさい!」

 ポンっと背中を叩かれて、少し元気が出た。

 すぐに完食して食器を下げ、自分の部屋に戻った。


「自分なりの楽しいこと…」

 声に出して考えてみたが、なにも浮かばない。

「今何時だ?8時か…もういいや。寝よ」

 ベットに倒れこみ、眠りについた。 

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