私は猫である─悪役令嬢の飼い猫に転生しました─

仲村 嘉高

第0話:吾輩は猫である?

 



 気が付いたら、猫の姿で草むらに居た。

 ふわふわの毛にムニムニの肉球にテンションが上がったのは一瞬で、なぜ猫に?という混乱がすぐに襲って来た。

 私はちょっとブラックな会社に勤める社会人3年目の25才だった。

 漫画が好きで、最近は悪役令嬢ものの漫画をよく読んでいた。

 所謂いわゆるナーロッパと呼ばれる世界観の、なんちゃって中世。


 フランスが無いのにフランスパンがあったり、ナポリタンとかがサラリと話中に出てくる似非エセファンタジー。

 ベルばら作者が読んだら憤慨しそうな貴族制度でも、創作漫画ファンタジーだからで許容されていた。

 平民が公爵令嬢を勝手に名前呼びして、なんの咎めも無いなんて有り得ないでしょう?


 公爵令嬢が平民女を排除しようとしたからって、処刑されたり国外追放とかある訳が無い。

 だって、その時には公爵令嬢は王子の婚約者で、平民女は単なる浮気相手だ。

 貴族の馬車の前を横切っただけで、平民は無礼打ちされる世界のはずだ。

 いや、だからナーロッパって言葉が出来たのだっけ。


 そして今、私が居るのはどちらなのでしょうね?


 ナーロッパなのか、中世の映画セットの中なのか。

 だって私の目の前に居るのは、金髪碧眼の美少女で、しかも古臭いデザインのワンピースを着ている。


「にゃん!」

 うん。

 鳴き真似しても、普通の猫は寄って行きませんよ、お嬢様。

 年齢は高校生位かな?

 縦巻きロールって、ゴスロリ以外で初めて生で見たよ。



「逃げないでね、逃げないでよ……」

 ジリジリと近付いて来る美少女。

 普通の猫なら逃げてるよ。

 怖いって。

 私が前世人間だから逃げないんだよ~と教えてあげたい。


 前世、そうだ前世。

 最後の記憶は、会社の近くで可愛がっていた猫が、大きな物音に驚いて車道に飛び出した。

 綺麗だったので、多分飼い猫。

 その猫を確保しようと私も飛び出して……で、終わってる。

 いや、運転手が居眠りしてるのが見えたな。

 だからノンブレーキで突っ込んで来たんだ。



 ここが映画セットなら、私は未来へ転生。

 ナーロッパなら、異世界転生。

 さぁ、どっちだ!?




────────────────

今までの自作品を全否定してくれる主人公です(笑)

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