🐷プギーの憂鬱

オカン🐷

ドナおじさん

「ママー、向かいの家のドナおじさんが、トラックに乗せられて連れて行かれてまうよ」

 朝ご飯を作っていたママは、フライパンをコンロの上に置くと、慌てて地味なベージュ色した遮光カーテンを閉めた。

「トム、窓に近寄ったらアカン」

「だけど、おじさんが連れて行かれてまう」

「今度は私たちの番やし。いい、大きな声出さんと静かに暮らすんよ」

「こんな生活いつまで続くん? 学校には行かれへんし、引っ越して来たからお友だちもおらんし」

「あと少しの辛抱や」

「あと少しってどのくらい?」

「パパが帰って来るまでよ。さあ、朝ご飯食べてまいなさい」

「ブヒー」

「トム、鼻を鳴らさへんの」

「ママ、僕のベーコンはカリカリに焼いてっていつも言ってるやないか」

「ああ、かんにん。考え事しとったたから、うっかりしてもうて」

「あっ、お兄ちゃん、私のベーコン取ったあ。ママー」

「だから大きな声ださへんの。ほらママのあげるから」

「いいなあ、ピニー、卵までもろて」

 ベーコンは大豆から作られたお肉で本当のところあまり美味しくない。

 だけど成長期の子どもたちはいつもお腹を空かせていた。

「トム、あんたが取ったからやろ。それにピニーって呼ばへんの。キャッシーやろ」

「変な名前」

「さあ、ご飯がすんだらお買い物に行くえ」

「ぼくお留守番しとく」

「何を言うてるの、ママ1人じゃ荷物を持たれへんわよ」

「ピニーは?」

 ママの鋭い視線が飛んだ。

「あっ、キャサリンやった」

「キャッシーはお留守番お願いね」

「ママ、いい子でお留守番しているから、お菓子を買うて来てね」

「いいなあ、ぼくもお留守番がいいな」

「何言うてるの。トム、あんたが一番食べるんやない。ご飯、半分に減らそうかな」

「あっ、僕お買い物行きます」

「じゃあ、支度して」




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