二章

「なにこれ?」


「んー、良く分かんないけど、手荒れた時とかに母さんが塗ってた。多分肌に良いんじゃないかな」


保湿剤みたいなものだろうか。


多分、そんなもの効きやしないんだろうけど、少年の心意気が嬉しくて、私は微笑みながらそれを受け取る。


「ありがと、後で塗ってみる」


「こんだけ集めたら、爺ちゃん喜ぶんじゃない?」


あらゆる動力源を担っている灰は、どんなものより金になる。


都市から大分離れた辺境の村じゃ、行商人に安く買い叩かれるのは目に見えているけど、今日は普段より掻き集めたから、多少は利益も上がる筈。


「んー、だと良いんだけど」


灰が積まれた台車を押し進める。


村までの帰路は建物一つも無く、目の前にはただ、灰色に塗り潰された大地が広がっていた。


この退廃的な風景を見ると、心が落ち着くような、悲しいような、何とも言えない気持ちになる。


「ねぇ、また旅の話聞かせてよ」


「えー、また?もう散々話したじゃん」


爺ちゃんと色々な所を旅していた時の話を、少年は良く好む。


「いいじゃん、村の外の話、大好きなんだ。幾ら聞いたって飽きないよ」


興味を惹きそうな話は粗方してしまったのだが、こうも目を輝かせられては仕方がない。

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