二章

ザクッ ザクッ ザクッ



灰を掘り起こす音が、辺りに虚しく響き渡る。


昨日は灰が良く降った。


いつもより降り積もった灰は、見知った景色を錫色に染め上げている。



ザクッ ザクッ ザクッ



灰を掘る音が、いつもより鈍い。


膝まで浸かる灰に足が取られて、上手く動く事もままならない。


そういえば、爺ちゃんが『もう冬だな』って言ってたっけ。


冬になると、灰がいつもより降るようになって、外に出るのも難しくなるらしい。


冬は、いつもより人が居なくなる。


灰が良く降って景色が濃くなる日は外に出ては行けないって言われてるけど、冬はそういう日が多くなるから、


きっと、皆我慢出来なくて、外に出てしまうんだろう。


それで帰れなくなって、それっきり。


人が消えて居なくなる日は、いつもより、灰が多く降る。


……また、この村を離れるのだろうか。


爺ちゃんも歳だし、流石に冬の間は留まるだろうけど、冬が明けたら、此処を発つ事になるかもしれない。


やっと、村の皆と馴染めて来たのに。


色んな所を旅するのも好きだけど、出来る事なら、離れたくない。


ずっと、此処で暮らしても良いかなって、最近、ちょっと思うんだ。


だから、どうか、今回の冬は、


何事も無く、終わって欲しい。

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