一章

「…なるほど、分かりました」


リフトを上昇させ、ヘデラのコックピットハッチにアイビーが手をかける。


「じゃ、ご武運を、軍曹殿」


整備士の声に身振りで返しながら、ヘデラのコックピットにアイビーは乗り込む。


ハッチが閉まるのを確認し、動力管と自身の胸にある接続口とを繋ぐ。


続いて、内部にあるトグルスイッチを押して行くと、機械音が徐々に唸りを上げていった。


機体が起動を始めていくと同時に、前方のモニターに出力された文字列を彼女は読み上げる。


「電圧値、正常。動力管への灰の循環を確認、異常なし。タンク内残量、正常。機体とのリンク良好、燃焼率に異常なし。各部駆動を確認。システムオールクリア。ヘデラ、起動します」


眼前の外部モニターに外の映像が映しだされる。


『……ジジ…ァ……きこえるかね、アイビー1等軍曹』


「エバンズ大尉?ええ、聴こえています」


『君に、一つ伝え忘れていた事があったんだが…』


モニターに、一人の少女の写真が映し出された。


かなり遠くから撮ったのか、その映像は粗く、はっきりとは視認出来ない。


「……これは?」


『狂信者の仲間の一人だと推測される少女だ。影の発生が観測された村落の周辺でその姿が目撃されている。……発見次第、身柄を拘束しろ。生死は問わない』

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