一章

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「急な招集に応じてくれて感謝する」


そう三人に声をかけたのは、ここキニス中央学園の学長でもあり基地司令も務める、ノア・エバンズ大尉。


実戦派、というよりかは、作戦参謀などの理知的な職務が似合いそうな、寡黙な雰囲気を漂わせる、初老の男性だ。


学園、と名乗ってはいるが、その実態は影と戦う兵士を育てる養成施設であり、その為、キニス中央学園では、軍隊階級が採用されている。


「いえ、お変わりないご様子で何よりです、大尉。西部の掃討作戦では、目まぐるしい活躍をされたようで」


西方にある辺境の都市で、影と灰を信仰する教徒の一部が、ここ中央を含めた幾つかの主要都市への侵略を計画しているという話が、噂されていた。


中央の役人達は、軍隊を派遣する事で、その侵略を事前に阻止、制圧しようと考え、ノア・エバンズを作戦指揮官に任命したのだ。


「その話はまた今度にしよう。今日は、君達に指令を与える為、ここに呼び出した」


「指令、ですか…?」


オリビアが不安げに呟く。


「なに、簡単な事だ。先程、ここから三十キロ程離れた地点で、影の発生が観測された。観測された影は二つ。一つは、北方にある小さな村落で、もう一つは、西方で行った掃討作戦の周辺地域で。よって、只今より、アイビー1等軍曹には北方の観測地点、オリビア2等軍曹及びダン3等軍曹には、西方の観測地点での哨戒任務を命じる」

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