第8話 『青年のメロディ』
青年はサックスの練習をしていた
大きな公園の銀杏の下
青年はいつも同じ個所で間違える
難しそうには聞こえない箇所で
そこに何かあるのか
青年の演奏を止めるもの
青年の心を萎えさせるもの
その日は、そこで練習を止め、楽器をしまい帰っていった
僕は青年がつまずいた先のメロディを口ずさんだ
青年と同じ曲を練習し、同じ個所で止まった経験がある
そこは昔の恋人を思い出させるところ
今なら、僕は止まらずに吹ける
青年もそうなる
挫けるな、青年
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