筋プリ‼︎

manatsu

プロローグ

 ステータスオープン。


 名前:カイン

 年齢:5歳

 LV:5

 職業:プリースト

 HP:120

 MP:120

 筋力:120

 体力:50

 俊敏:70

 魔力:70

 知力:80

 ジョブスキル:ヒール・リペア・クリーン

 パッシブスキル:言語理解・鑑定眼


 異世界転生して1ヶ月が経っていた。


〜・〜・〜


 寒さで意識を取り戻すと、ゆっくりと目を開けた。


 「知らない天井さえない」


 そこは建物と建物の間にある細い路地だった。確かに雨風は凌そうだが、いかんせん寒さは防げなかった。この子はきっと凍死したんだろう。そして魂の抜けたこの子の体に、俺の魂が入り込んだんだろう。


 俺は立ち上がると、フラフラと路地を進む。そこにはゴミ置き場が在り、ゴミが山の様に積まれてた。ボロボロに破れた毛布を拾い上げ、心の中で『リペア』と唱える。ボロボロだった毛布は元の暖かそうな毛布へと生まれ変わる。『クリーン』汚れた毛布は作りたての様に綺麗になった。


 『いやいやいやいや、毛布1枚じゃ死んじゃうよ!』毛布1枚じゃ少し暖かくなった程度。同じ様にゴミ置き場に捨ててあった木箱を掴み引き摺りながら、焚き火が出来そうな場所を探してあるく。『ここなら良いだろう』と空き地で木箱を解体して木を組み上げる。『ファイア』組み上げた木に向かって手を翳しながら唱える。…え?『ノー!』ラノベの読み過ぎだ。元々火魔法スキルなんて持って無かった。苦笑いを浮かべながら周囲を見回すと、街の門の前に灯りが見える。『火種を分けて貰えるかな?』木片を1本手に持ち、灯りへと歩いた。


 「済みません!誰か居ますか⁈」


 戸を叩きながら何度も呼びかけると、


 「こんな時間に何の様だ?」


 戸が開き、中から山の様な体格をした髭面のオジサンが顔を出した。


 「寒くて死にそうなんです。焚き火をしたいので、種火を分けて貰えませんか?」


 「種火だって?街中は焚き火を禁止されてるぞ。坊主1人なのか?」


 門番らしき男は身を乗り出し周囲を確かめる。


 「確かにこの寒さじゃ死んでしまいそうだな。よく見りゃ唇も紫じゃないか!坊主に死なれちゃ夢見が悪くなりそうだ。取り敢えず入りな」


 そう言うと門番小屋に入れてくれた。小屋に入ると、体中がぬるま湯に浸かった様な暖かさに包まれた。中はTVで見た海女小屋の様な作りで、中央には囲炉裏の様な物が有り、火が焚かれていた。


 「仕方ないな、ここに入れたのは内緒だぞ。遠慮せずにさっさと火の近くに寄りな。暖かいぞ」


 と、囲炉裏の脇の椅子を勧めてくれた。門番の言葉に甘えて椅子に座り、手を火に翳すとジーンと手に温もりが戻って来る。


 「良い毛布を持ってるじゃないか」


 門番は奥からマグカップを手に戻って来ると、火にかけられたヤカンからマグカップにお湯を注ぎながら、俺に話しかけて来た。


 「温まるから飲みな」


 そう言いながらマグカップを手に持たせてくれた。ヤバい、ホント、持たされたマグカップの温かさだけでも、体の芯まで温まって来る。


 「ありがとうございます。頂きます」


 「何だ、その言葉遣いは。そんななりをしてるけど、良いとこのボンボンか?」


 「いいえ、両親が行商人だったので、言葉遣いは教え込まれました」


 「親御さんはどうした」


 「両親は亡くなりました」


 「この街には?」


 「父の行商仲間に連れて来られ…捨てられました」


 これは嘘では無い。この子の記憶が話させているのだ。


 「それは大変だったな。今夜だけで悪いが、ゆっくり休んでいけ」


 「ありがとうございます。端で寝ても良いですか?」


 「ああ、構わない。ゆっくり寝なさい」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る