第3話
そこにいたのは今回の転生で同居人として生活しているニシキだった。
「ニシキこそなんでここに?ここは僕たちの思い出の場所なんだよ、人を、探してるんだ。」
「えっ、ユキ、お前、なんで人間の言葉喋れるの…?」
「ニシキがいつもわからないだけで桜達はいつも喋ってたよ!ね、おにいちゃん!」
え?え?サクも?、と混乱するニシキにこの丘、この星の木の側なら僕ら犬の言葉でも人に通じるんだと説明した。
そしてここで僕らの大切な人、シキと再び会う約束をしている事、今度こそ一緒に連れていってもらうためにシキを探しているという事を話した。
ニシキは最初は驚いていた様だったが、話を聞くに連れて何かに納得した様に頷きつつ最後まで話を聞いてくれた。
そして、多分だけど。と前置きをしてある話をしてくれた。
「実は、ここって俺のご先祖様が代々大事にしてきた丘なんだよね。
この2人が星の木?って呼んでる木は卯木っていう木で、白い星型の花が咲くんだ。
2人が見た降ってくる星っていうのもこの木の花のことだと思うよ。
織さんっていうのは俺のひいひいおじいさんの名前なんだけど、昔にすごい大きな借金を抱えてて、その返済を迫られていたんだって。
それで、返済が追いつかなくなって、その時に大事に飼ってた毛艶の良い2匹の犬を担保として奪われそうになったんだって。
織さんはどうしてもそれが嫌で大切にしていたこの木のそばに犬を隠したと信頼できる人にだけ告げて返済の為の仕事に出たんだって。
そして織さんはしっかりと返済を終えてこの街に戻ってきたんだけど、その時にはもう犬はどこか他の街へ隠して貰っててたからみつけられなかったんだって。
その後織さんは寿命で亡くなっちゃったんだけど、死ぬその時までこの木は目印だがら、大切な2人の友達が帰ってくるからって伝えてあったんだって。
だからこうして子孫の俺とかが時々来て整備してるんだ。
なんでこんな面倒なことしなくちゃいけないんだって思ってたけど友人ってお前達のことだったんだねえ。会えて良かったな。」
「織さんはもういないけど、この後も俺と一緒に暮らそうよ、お墓とか、昔住んでた家とか連れていってあげるよ。いいでしょ?」
「ちなみに俺の名前のニシキってシキさんから文字もらってるんだって、顔もちょっと似てるらしいよ。」
へへ、と笑うニシキの話を聞きながら確かにシキはこんな顔だった様な、喋り方は全然違うけど似たような優しい声だった。と思った。
隣でスンスンと鼻を鳴らして涙をこぼす桜の顔を舐めてやり、自分の前足近くへ落ちる水に気がつかないふりをして笑った。
「そっか、シキはもういないんだね。…っ。
でもっシキは僕たちを置いていった訳じゃなかったんだ!教えてくれてありがとう、ニシキ。
桜が良ければさっき話してたお墓?とか言ってみたいんだけどどうかな?桜?」
「…桜もっシキに会いに行きだいっ!
ニシキ!ありがどっ…連れてって…!」
僕らの答えを聞いたニシキは小さく笑って頷いた。
「うん!一緒に行こう、それで、今までのことをたくさん話すといいよ。ご先祖様に聞かせてあげなよ!」
じゃあ帰ろうか、と言って1人と2匹は丘を後にした。
風に揺れる卯木の花達だけがそれを見つめていた。
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