第7話
「のぉ、ムリンよ、万が一の時は仲裁を頼むぞ」
小声でムリンにささやいた。
「はにゃはにゃ~ん? はーですさまぁ? りょうかいしたのですぅ☆」
背中からは翼、頭には角を生やし見た目はしっかりと魔族であるが、身長もやや低めで小柄であり可愛いというイメージが浮かぶムリンは、空中で横方向にクルクルと1回転し、にぱっとした笑顔を見せハーデスの頼みに応じる。
魔族であるが可愛いと言う言葉が似合い、どこか天然そうな雰囲気を持つムリンであるが、これでも魔族軍の知将を務め、雷属性を除く攻撃魔法に関しては魔族の中で最強である。
恐らくハーデスは、フィルリークとフィアとの間で万が一の事が起こりそうになった際彼女の魔法により万が一の事態を回避してもらうつもりでムリンに頼んだのであろう。
「「「人間なんかやっちまえーーーー」」」
事情を知らない魔族達は、人間であるフィルリークを完全に敵であると認識しているが為、これらの声援はフィルリークにとっては完全にアウェイとなっている。だが、フィルリークはその様な声を一切気にする事無くこれから始まるフィアとの決闘に備え精神を集中させている。
「はっはっは、さぁ行くぞ!」
フィルリークとフィアが決闘をする場所に辿り着いた瞬間、フィアは『
フィアの手の平から放たれた直径30cm程の大きさを誇る雷の球体がフィルリークを襲う。
「テメェ、卑怯だぞ!」
決闘とは、お互いが挨拶をしてから始める物と思い込んでいるフィルリークが叫びながら、フィアが放った魔法を剣で受け止める。
「何を抜かす? 私は魔族だぞ? 人間の言う卑怯とやらは魔族にとって勝つ為に当たり前の事だ」
「チッ、仲間を巻き添えにしねぇ事は褒めてやるよ!」
奇襲、闇討ち、騙し討ち、その様な事を行う魔族は今まで幾らでも見て来た以上、それらを考慮しないのは自分のミスであると、フィルリークは自分を戒め、身構えた。
ハーデスが説明を終え、フィアが暫しの間押し黙り、
「お父様の言い分は分かりました、ですが私よりも弱い人間の手を借りたくはありません、これだけは譲れません」
「ふむ、フィアの言う事も間違っておらぬ。弱き者にワシ等魔族を救済出来るとも思えぬ。その者とはフィアの気が済むまで戦うと良いぞい」
「感謝します」
フィアが納得した所でハーデスはフィルリークを召喚する為に必要な魔法の詠唱を開始した。
魔法の詠唱を開始したハーデスの周囲に黒色のオーラが展開される。
そのオーラと呼応するかの様に、目の前に刻まれている六芒星魔法陣からも青黒い光が強さを増す。
ハーデス達がいる部屋の中を六芒星魔法が放つ青黒い光が溢れた所で、
「
魔法を完成させたハーデスが高らかに声を上げると魔法陣が放つ光青黒い光は更に凄みを増し、六芒星魔法陣の中心部分におぼろげながらも人影が現れる。
六芒星魔法陣が放つ光は、その人影を待っていたかの様に光の収束を始め、程無くた所で一人の人間が姿を現した。
その人間は、こげ茶色の髪色をしミスリルが示す白緑色の光沢を放つ
決意を元に凛とした表情は内に秘める正義感の現れを感じ取る事が出来る。
女神アルテイシアの力により、覇邪王ディベロスを打ち倒し次の世界へと転移を試みた勇者フィルリークである。
「つっ、ここが次の世界か? おや? あんた達は?」
この世界へと転移したばかりのフィルリークは周囲の様子を伺いながら一人呟き、ハーデスとフィアの存在に気付き、ハーデスの目をじっくりと見据える。
「救世主よ、ようこそ魔王城へ、吾輩は当主のハーデスである」
フィルリークと同じく
「魔王城だと! 貴様! 魔王か!」
自分の目の前に居る存在、それが魔王である事を知ったフィルリークは背中に携えている聖剣レーベンヴォールを両手で持つと目にもとまらぬ速さでハーデスに向け斬りかかる。
「ぬぅ、随分とせっかちな者じゃ。吾輩の話位聞いて欲しいがのぉ」
ハーデスは、華麗に身を翻しフィルリークの斬撃を回避する。
「うるせぇ! そんな手に乗るか!」
ハーデスの言葉を、自分に対し不意打ちをする為の布石と予想したフィルリークは聖剣レーベンヴォールを天高く掲げ、
「聖身到来!」
フィルリークが声高々に叫び、
「ほほう、お主真の力を持っているのか」
ハーデスが関心をしている間に、フィルリークが見に纏っていた白緑色の光沢を放つ鎧は白く美しい輝きを放つ鎧へと変貌し、
「ブレイバー・フィルリーク見参! やーーーーーってやるぜ!」
変身を終えたフィルリークは、聖剣の先をハーデスへと向ける。
「のぉ、フィア? この救世主十二分に強そうじゃが、それでも戦うかのぉ?」
真の力を解放させたフィルリークの実力を計算し、間違い無く娘のフィアでは勝てないと判断したハーデスがフィアに確認を取る。
「あんだと?」
ハーデスに言われ、フィルリークがフィアの存在に気付く。
「お父様? 私を見くびって貰っては困ります。この程度の人間打ち倒せぬなど魔族の恥です」
「2対1か、上等じゃねぇか!」
「救世主殿、吾輩はお主とは戦わぬぞい、お主と戦うのは吾輩の娘、フィアの方じゃ」
「1対1だと? 魔王の癖に随分と正々堂々としてやがる! 一体どういう腹づもりだ?」
2対1と言う有利な条件を放棄した事に対し何か裏があると思ったフィルリークは警戒の色を強める。
「貴様に我が魔王軍の救世主である資格を試すまで」
フィアがフィルリークに対し人指し指を向け告げる。
「そういう事じゃ、この部屋は魔術を試す為の部屋でのぉ、戦闘をする場所では無いのじゃ。すまないが場所を変えさせてもらうぞい」
「上等じゃねぇか! アンタ等の罠に乗ってやるぜ!」
頭に血が上っているのか、目の前の敵を倒す事に意識が集中しているのか、フィルリークはハーデス達が言う
その道中、フィアはすれ違う魔族達に対しこれからフィルリークと決闘する旨を伝えた。
ハーデスは一応止めたが、人間風情に負ける訳が無いと思っているフィアは聞く耳を持たなかった。
フィアよりフィルリークとの決闘を行う旨を伝えられた魔族達は、どうしても外せない仕事を持つ者以外は高い興味を示しその戦いの観戦をする為決闘場へ向かった。
また、彼等は同僚や上司部下にもその話を伝達し、結果フィルリークとフィアが決闘を行う、魔王城の中庭エリア付近には多数のギャラリーが集まっていたのであった。
「「「おおおおお、フィア様ーーーーー」」」
ギャラリーの数は既に100体程に達していた。
彼等は中庭の中央付近で障害物の無い戦闘に適したエリアを空けその周囲を囲う形でフィアの到着を待っていた。
ハーデスは、フィアとフィルリークの決闘の行く末を見守ろうとその群衆の中に身を寄せる、と同時にその群衆の上空付近でのほほんとしながらふよふよと滞空している女魔族の元へ向かい、
「のぉ、ムリンよ、万が一の時は仲裁を頼むぞ」
小声でムリンにささやいた。
「はにゃはにゃ~ん? はーですさまぁ? りょうかいしたのですぅ☆」
背中からは翼、頭には角を生やし見た目はしっかりと魔族であるが、身長もやや低めで小柄であり可愛いというイメージが浮かぶムリンは、空中で横方向にクルクルと1回転し、にぱっとした笑顔を見せハーデスの頼みに応じる。
魔族であるが可愛いと言う言葉が似合い、どこか天然そうな雰囲気を持つムリンであるが、これでも魔族軍の知将を務め、雷属性を除く攻撃魔法に関しては魔族の中で最強である。
恐らくハーデスは、フィルリークとフィアとの間で万が一の事が起こりそうになった際彼女の魔法により万が一の事態を回避してもらうつもりでムリンに頼んだのであろう。
「「「人間なんかやっちまえーーーー」」」
事情を知らない魔族達は、人間であるフィルリークを完全に敵であると認識しているが為、これらの声援はフィルリークにとっては完全にアウェイとなっている。だが、フィルリークはその様な声を一切気にする事無くこれから始まるフィアとの決闘に備え精神を集中させている。
「はっはっは、さぁ行くぞ!」
フィルリークとフィアが決闘をする場所に辿り着いた瞬間、フィアは『
フィアの手の平から放たれた直径30cm程の大きさを誇る雷の球体がフィルリークを襲う。
「テメェ、卑怯だぞ!」
決闘とは、お互いが挨拶をしてから始める物と思い込んでいるフィルリークが叫びながら、フィアが放った魔法を剣で受け止める。
「何を抜かす? 私は魔族だぞ? 人間の言う卑怯とやらは魔族にとって勝つ為に当たり前の事だ」
「チッ、仲間を巻き添えにしねぇ事は褒めてやるよ!」
奇襲、闇討ち、騙し討ち、その様な事を行う魔族は今まで幾らでも見て来た以上、それらを考慮しないのは自分のミスであると、フィルリークは自分を戒め、身構えた。
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