第2話

「人間如きだぁ!? 俺は、俺達は、この世界を背負う勇者だっ!!!! 悪の力に負けはしねぇっ!!!!」


 この世界の為にも絶対に負けられない!

 自らの技がディベロスにより押し返されかけたフィルリークもまた、自分の身体に残される聖熱力セイヴァフォースを絞り出し、聖熱天翔破へと注ぎ込む。

 更なる聖熱力セイヴァフォースを注ぎ込まれた聖熱天翔派は白き輝きを増し、ディベロスにより一度は押し返され掛けたその力を逆に押し返す。


「小癪なッ! 我は覇邪王ディベロス也っ!」


 人間如きに負ける訳にはならない。再び自分の技がフィルリークの技に押し返されたディベロスは更に覇邪力を込める、がフィルリークの放った聖熱天翔破を押し返す事が出来ない!

 ディベロスの放つ、破邪王極蓮撃を撃ち破った聖熱天翔破はディベロスを包み込むと更に光を増す。


「グオオオオオオオ!! 聖熱力セイヴァフォース如きで、我を滅ぼせるとッ」


 聖熱天翔破をその身に受けたディベロスは、苦痛のあまり目を見開き両手で頭を抱え、苦痛に耐えられなくなったのか地面に膝を着いた。


「これが、俺達のッ! 魂の一撃だあああああ!!!!」


 フィルリークは、聖熱天翔破の直撃を受け大きなダメージを負ったディベロスを追撃する為、聖剣レーベンヴォールの剣先をディベロスの心臓部に狙いを定め構え、フィルリークは自身に残された聖熱力を機動力に回し、地面より3.5M程の高さから勢いをつけディベロスの心臓目掛け聖剣レーベンヴォールの突きによる攻撃を試みる。

 飛翔の力を増強させる為に使われたフィルリークの聖熱力は、彼が身に着ける鎧の背部から白き光となり溢れ出し、まるで天使の翼の様な形を描いていた。


「我が……、この、破邪王ディベロスがッ、人間如きにッ」


 フィルリークの一撃がディベロスの胸部を貫く!

 胸部に大きな風穴を空けられたディベロスはそのまま地面に倒れ伏せた。

 不屈の闘志や夢幻の覇邪力をもってしても心臓を失ったディベロスが生命を維持する事は出来なかった。

 地面に倒れ伏せたディベロスの瞳からは生気が失われ白き虚空が漂う。

 ディベロスへの一撃を放ち終え、フィルリークが不格好な体勢のまま地面に着地し倒れた所で、ディベロスの身体が真っ白になりサラサラサラと粉状になったディベロスが宙に舞い散った。

 遂に、勇者フィルリークは覇邪王ディベロスを討ち取ったのだ!


「やっ、た、ぜ、みんな」


破邪王ディベロスとの死闘の末、全ての力を使い果たしたフィルリークは地面に仰向けに倒れながら喜びの声を上げる。

フィルリークが身に着けている鎧は美しい白銀色の輝きから、元のミスリルが放つ白緑色の輝きへ戻っていた。聖剣レーヴェンヴォールに聖熱力セイヴァフォースを送り込む事を止めたからである。


「フィル! 大丈夫か!?」


 ギルが、覇邪王ディベロスを討伐した喜びよりも先にフィルリークの身を案じ、声をかける。


「問題ねぇ。ちょっと聖熱力セイヴァフォースを使い果たしちまっただけだ。ギル、マナポーションをミィルとカインに飲ませてくれ」


 フィルリークの頼みを受けたギルは、ゆっくりと立ち上がるとフィルリークの元へ向かい青い液体の入った小瓶、消耗した魔力を回復する為の薬マナポーションを受け取り、ミィルティーナに手渡した。

 ミィルティーナはギルから受け取ったマナポーションを口に含み、魔力を回復させた所で今居る4人に向け、治療術ヒーリングを掛け、覇邪王ディベロスとの戦いで受けた傷を癒す。


「フィル、殿?」


 ミィルティーナの治療術ヒーリングを受け意識を取り戻したカインがゆっくりと起き上がり、周囲の様子を伺う。


「カイン、ディベロスを倒したぜ」


 フィルリークがカインに笑顔を見せ、サムズアップをする。

 意識を取り戻したばかりのカインは、きょとんとした表情のままフィルリークを見据え、


「ほらよ、これ飲んでシャキッとしな!」


 ギルがカインの背中をポン、と叩きながらマナポーションを手渡す。


「かたじけないで御座る」

 カインはギルに対しゆっくりと一礼をすると、受け取ったマナポーションを飲み干した。

「わりぃな、カイン。折角ディベロスを倒したが、この城が崩れちまうかもしれねぇ。勝利の喜びは帰ってからにしようぜ」


 フィルリークの言う通り、周囲の石壁からは何かが軋んでいる様な嫌な音が周囲に響いており、いつ突然崩落しても可笑しくないように思える。

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