2-2 水縹のウミガメ

 一方、砂浜に残されたディークは、海に消えていったチェインとダークが戻ってくるのを待っていた。


「大丈夫だと思うけど、暇だなぁ。いつ終わるんだろ?」

 ディークは退屈しのぎに砂で山を作って遊び始めた。周りの砂をかき集めて、縦に積んでいく。

 そして、ディークの腰辺りの大きさの砂山が出来上がった。


 ディークが海の方を見る。あの2匹はまだ帰ってこない。

 仕方ないので、先ほど作った砂山を改造して、砂の城を作ることにした。砂地をある程度掘れば、適度に湿った砂が出てくるので、それを使って山を城の模型に変えていく。


 そうしていると、海から1匹のウミガメがあがってきた。

「んもうー、あれくらいで大騒ぎしなくたって良いじゃんかよー」

 そのウミガメは大きく口を開け、あくびをした。青く輝く甲羅が水滴と日光で輝いていて、身体の所々に青い宝石のような部位があり、悪い動物に目をつけられたら即誘拐されそうな見た目をしていた。


 それはともかく、そのカメは砂城作りに夢中になっているディークを見つけた。

「ん? 何だあれ?」

 ウミガメはディークが作っているものに興味を示したようだ。

 そしてウミガメは気づかれないようにディークの後ろまで歩いてきた。


 ディークはそのカメに気づいてはいたものの、無視して作業に勤しんでいた。

 爪を器用に使って、城の屋根を作り、窓らしき小さな穴を掘り、周囲を砂の城壁を囲ってしまえば、


「できた!」

 わざとらしく歓喜の声をあげた。

「うわぁ、すごーい!」

 ディークの背後にいたカメも声を上げた。

「わわっ、だれ!? キミいつの間にいたの?」

 最初からウミガメの存在に気づいていたディークは、わざと驚いた様子をみせた。

「へへっ、ずっと前からだよ」

 ディークの演技に一切気付いていないウミガメが無邪気に笑う。

 最初から知っていたディークも笑って返していた。


「それよりさ、それって陸の建物なの?」

「そうだよ。お城っていうんだけど、王様とかえらい動物が住んでるんだ」

「お城。王様かぁ……」

 カメは声のトーンを少し落として呟いた。

 その変化に気付いたディークが聞いた。

「どうかした?」

「え? 何が?」

「何か気になることでもあった?」

「うーーん、ないけど……」

 リクガメが言いよどむ。明らかに何かあるが、無理に聞くこともないと判断したディークは話題を変えることにいた。


「そういえば、キミだれ?」

「え? ああ。ボクはプヤイっていう名前のただのカメだよ。特別何かあるわけじゃないんだ」

 プヤイと名乗ったウミガメの含みを持たせた言い方にディークは疑問を感じる。

 どうやらプヤイは色々と言いたくない秘密があるらしい。ディークはプヤイについて聞くのをやめ、自分の話をすることにした。


「そっか。ボクはディーク。一応こう見えてもドラゴンだよ。よろしくね、プヤイ」

 ディークが自己紹介をすると、プヤイは疑わしそうにディークを見つめ始めた。

「ド、ドラゴン? 全然ドラゴンに見えないけど……」

「よく言われるけど、一応ドラゴンだよ」

「えーー?」

 プヤイはディークの後ろに周り、その背中を見た。

「それじゃあ、どうして羽が生えてないの?」

 ディークが顔だけプヤイに向けて返答する。

「それは知らないよ。あと、ドラゴン皆が羽を持ってる訳じゃないんだよ」

「ええ!? そうなの!?」

「うん。岩石龍とか東洋龍とかがそうだね」

「……どんなドラゴンなの?」

「えーっとね……」


 ディークは身体もプヤイに向けて、砂地に腰をおろした。しっぽは後ろに伸ばして身体も支えている。

「岩石龍は、プヤイを1000倍くらい大きくして、甲羅に山を乗せたみたいな見た目をしてるんだ」

「ボクを1000倍……!?」

 プヤイは自分の身体を見ながら驚きの声をあげる。

「……ちょっと想像できないや」

「うーん。あっ、あそこに山が見えるでしょ? あれと同じくらい」

「うわぁ……」


「で、東洋龍っていうのは、ウナギみたいな見た目で、ちょうど海を泳ぐみたいに空を飛ぶんだ」

「……え? 羽がないのに飛んでるの?」

「うん。空気に乗って飛んでるって言ってるけど、不思議だよね」

「ほえぇ〜」

 プヤイは言葉を失っていた。


「でも、ディークってどっちでもないよね? 何のドラゴンなの? お城作りのドラゴン?」

「あーー……」

 ディークは少し悩んだが、教えることにした。


「ボクは火に焼かれても、雷に撃たれても平気なドラゴンなんだ」

「え、ええーっ!? それって無敵ってこと!?」

 ディークの話を聞いたプヤイは心底驚いた様子で叫んだ。

「無敵ってほどじゃないけど、他の動物よりは頑丈かな」

「すごいや……、やっぱりドラゴンなんだ」

 プヤイは関心したように呟く。


「あ、そうだ、ディークっていつもここにいるの?」

「いいや、ボクは世界中を旅して周ってるんだ」

「旅をしてるの!? 世界中を!? 良いなぁ〜……」

 プヤイは羨ましそうにディークを見る。


「そうだ、ボク今暇だし、旅のお話しでも聞かせてあげようか?」

「え!? 良いの!? 聞きたいっ!!」

「ありがと。それじゃ、──

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