第10話 王女ルナの恋 ⑨

 ニマは無防備な姿で、眠っていた。

 そんなニマを見ながら、リールイは、なぜだかアメリカ留学時代の恩師であるエベレット教授のことを思い出していた。


 エベレット教授は、大学を卒業してもリールイがアメリカに残れるように、彼の研究室のスタッフとして、迎えいれてくれたのだが、あるときリールイは、教授から鍵を渡された。

 最初、リールイは教授の意図がわからず、ただ単に、住居探しに苦労しているリールイを見かねて、部屋を貸してくれたのだと思った。

 そして教授と一緒に、教授の家で暮らすようなった。

 リールイは教授をとても尊敬していたし、一人っ子のリールイはこんな兄がいたら

どんなに良かっただろうと、いつも思った。

 しかしあるとき、思いもよらなかった愛を教授から告白されたとき、リールイの心は驚きと途惑いで、どうして良いのかわからなくなってしまったのだった。


 結局、リールイは教授の真剣な思いと向き合うことなく、母国へ逃げ帰ったのだが、その結果は、最悪のものだった。

 教授は遺書も残すことなく、自殺したのだ。




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