第7話 王女ルナの恋 ⑥

 やっと大尉との呪縛のような面談を終えたリールイは、はやる気持ちを抑えきれず、走るように廊下を進み、やっと“聖なる者”が待つ診療室に辿り着いた。

 そしてドアを開けようとしたその瞬間、中から少し弾んだような声が聞こえてきたのだ。

 恐る恐るドアを開けたリールイが見たものは、少女と楽しそうに談笑する青年の姿だった。

 リールイはしばらく無言で、戸口に立ちつくし、若いふたりを見ていた。 

 青年のあのような明るい笑顔を見たのは、初めてだった。

 リールイは、軽いめまいと共に奇妙な感情に襲われた。

 自分の心に沸き起こる不思議な感情。

 そしてどこからともなく、今はチベットの聖なる寺の主に収まっているパンチェンラマ11世、ノルブの声が聞こえてくるような気がした。


「ただ認めれば、良いのです」

 面会したとき、ノルブがリールイに言った言葉。


「あなたは私の分身、もう一人のパンチェン・ラマを愛していると・・・」





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