「聖なる者」王女ルナの恋

来夢来人

第1話 プロローグ

 夕闇が迫るポタラ宮の一室で、ひとり瞑想をしていたノルブの頬を、すっと風がなぶるように通り過ぎた。そして悲しみに満ちたひとつの感情が、胸に染み込むようにすっと広がり、ノルブを襲った。 

 そして瞑想の静寂を引き裂いた。  

 ノルブは、その不思議な現象が意味することを、瞬時に理解した。

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